今朝の東京新聞書評欄で、ボブ・ブラック著『労働廃絶論』という本が紹介されていました。

これはおもしろそう! とさっそくネットで検索してみたら、この本の翻訳と解説を担当されているホモ・ネーモ氏こと久保一真氏が、ご自身のnoteで全文を無料公開中とのこと。なんという気前の良さ*1。それでお言葉に甘えてダウンロードさせていただき、読みました。
とても読みやすい翻訳でしたし、書評の評者・栗原康氏をして「本文よりも長い、気合パンパンの解説」と書かしめたその解説文が、これまた分かりやすかったです。1980年代に書かれたというこの本を現代から眺めた際に生じる若干の違和感や、ブラック氏がやや極端に走りすぎている部分については冷静に留保を置きながらも、労働の廃絶という、そのまま聞けばうっかり単なるトンデモ論に思ってしまうようなこの主張に、確かな輪郭を与えてくれます。
思えば、かつて5年もかかって大学を卒業したときに私は「とにかく働きたくない(特に会社組織で)」という一心で就活もせず(というか就活という概念すらよく分かっていなかった)、九州の田舎で「農的な暮らし」を希求したのでした。けっきょくそれは実現できずに、東京に戻ってきましたけど……。それから数十年、「真っ黒」に近い職場もあれば、この本でも主張されている「遊び」に近い職場もありましたが、とにかく何度も転職や休職や失職を繰り返しつつ、還暦と呼ばれる年齢にいたった私は、いままた「就職しないで生きるには」*2に否応なく直面させられています。
私はこうやって無料公開版を拝見しましたが、書籍版のほうは、これも先日手に入れた、ほとんど地下出版物みたいな『寝そべり主義者宣言・日本語版』(中国の『躺平主义者宣言』を翻訳したもの)と同じような装幀です。そういえばどちらもあの『共産党宣言』を模したマニフェストなんですよね。最後が「万国の◯◯者よ……」で締めくくられるのも同じです。
労働の廃絶にせよ、寝そべり主義にせよ、私などはつい、かつてどこかで見てきた、そして憧れてきたようなカウンターカルチャー的な思路の系譜を連想してしまいます。でもこれはまちがいなく、現代の資本主義が抱える大きな矛盾、もっと言ってしまえば病理こそを背景にしたものです(だいたい当時は、ベーシックインカムの議論などには行き着いていませんでした)。その意味では、これも最近読んだ、ヤニス・バルファキス氏の『テクノ封建制』にも通じる内容だと思いました。
そしてまたホモ・ネーモ氏の解説で引用されている参考文献の数々が、どれも興味をそそります*3。そのなかにはいくつか既読の本もありましたが、いずれも古本屋さんに売ってしまって手元にありません。それらも含めて、またまた読みたい本が積み上がってしまいそうです。
