先日書店に行ったら、ジェニー・オデル氏の『何もしない』が文庫で再版されて平積みになっていました。私はハードカバー版を以前に読みましたが、正直に申し上げて、とっつきやすいタイプの本ではありません。それでもこうやって文庫化されるということは、それだけ多くの読者を得ており、またアテンション・エコノミー(注意経済)の弊害と不毛さがより多くの人々に理解され始めたということなのかもしれません。
qianchong.hatenablog.com
qianchong.hatenablog.com
この本や、カル・ニューポート氏の『デジタル・ミニマリスト: 本当に大切なことに集中する』(これも文庫化されました)を読んだあたりから、私はつとめて自分の時間を取り戻す努力をするようになりました。スマートフォンやパソコンと、そこに表示される「こちらの注意を引き、時間を奪っていくもの」からできるだけ距離をとり、あるいはそこから「降りる」ことを心がけてきたのです。
具体的には、SNSをやめ、ニュースサイトを見ないようにし、それらのアプリのアイコンを画面から削除し、アプリからの通知を切り、なるべく紙媒体のコンテンツを優先するようにする……などなどです。特にリンクが張り巡らされ、すぐに検索ができてしまう電子デバイスから遠ざかることは、すでにしてじゅうぶんに中毒になっている自分からすれば、かなりきついことでした。というか、いまでもまだ脱しきれていないと思います。
それでもここのところようやく、始終電子デバイスの画面に向かわなくても落ち着いていられるようになってきました。もう私は年齢も年齢ですし、かつてのように人に先んじてなにか新しいことにコミットしなければとキリキリ神経をとがらせる必要はないのです。FOMO(fear of missing out:取り残されることへの恐れ)に苛まされる必要もない。そういうのは疲れちゃうし、楽しくもないし。
私はデジタルネイティブ世代ではないけれど、しかし逆にデジタルデバイスがまったくない時代からひとつひとつそうしたデバイスとソフトウェアの恩恵にあずかりつつ、かつ心躍らせつつ、「こんなことまでできるようになった!」を何度も感じながらここまでやってきた世代です。ある意味、デジタルネイティブよりもさらにパソコンやスマートフォンやインターネットへの「帰依度(?)」みたいなものは強いのです。
そんな自分ですから、おそらくこのさき仕事から完全に引退したとしても、そうしたものたちとまったく縁が途切れてしまうことはないでしょう。これからも深いおつきあいを続けていくことは間違いありません。でもそこにはきわめて強い抑制を効かせておく必要があります。自分の残り時間をこれ以上アテンション・エコノミーに絡め取られてしまわないように*1。
……などと言いながら、この「はてなブログ」をパソコンで書いていること自体が矛盾してますけど。でもまあこれは頭の健康のための基礎トレなので、自分で自分を許すことにしています。書いたらさっさとパソコンを閉じて、紙の本の読書に戻ります。
