あるとき、NHK FMから流れてきた曲に聞き覚えがあった。
この歌詞、このメロ、懐かしい。
この町に慣れようと 泣き笑いおぼえて
変わらぬ暮らしに 季節を見つけた
これ何だっけ?
番組ホームページ調べたら…ふきのとう『南風の頃』だった。
そうか。
すっかり記憶から消えていたが、かつて僕はこの歌が好きで、歌詞を全て覚えたくらいに聞き込んでいたのだ。
なのにこの数十年思い出すことはなかった。
聴覚の記憶が一瞬に呼び起こされた。
十代の健康な身体感覚、受験不合格の失意、朝刊配達の夜明けの町、ラジオの深夜放送、朝刊の紙面で知った大学合格、その朝の母の泣き笑い、旅立ち、金沢で始まった新しい暮らし、最初の冬の雪景色…。
ラジオ放送は「歌謡スクランブル」の “純情ラブソング” 特集だった。
「南風の頃」がリリースされたのは1975年とある。
高校2年の年、最初はラジオで流れて来たのを聴いたのだと思う。
レコードは買った記憶がない。
当時、FM放送でアルバム全曲を流したりしていたからそれをカセットテープに録音したのだろう。
エアチェックというやつ。
FMラジオの雑誌があって、いつ、どんなアルバムが流れるのかが載っていた。
南風吹いたら 流れ雲流れて本棚の写真帳 色あせたまま
陽だまりのかげろうに あなたを想いつつ縁側でひとりぼっち ひなたぼっこ
ふきのとうのファンだったわけでもない。
いま思うとファンだったのかな。
当時は軟弱フォークと自分では気恥ずかしく思っていたが明らかに好きだったのだ。(笑)
最初のヒットは「白い冬」だった。
この「南風の頃」は第二弾(?)でおそらく春、早春のころを歌ったものだ。
卒業、旅立ち、新しい暮らし。
早春の風景や感情をうたった歌は時にエモーショナルだ。
amazonミュージックでサーチしたら「南風の頃」は『ふたり乗りの電車』というアルバムに収められていた。
このアルバムを聴いて驚いた。
どの歌も記憶にあった。
歌いだしは知らなくても、サビ記憶に刻まれたいた。
想像するに…アルバム『二人乗りの電車』をエアチェックしたカセットは大学の寮に持っていった。
大学時代も聞き続けたのだ。
そのカセット 今は残っていない。
持っていたという記憶もないのだが。
2025年の今も耳にする「なごり雪」や「22歳の別れ」「心もよう」「襟裳岬」
「神田川」「あの素晴らしい愛をもう一度」みたいなスタンダードよりも、
その短い時代に、個人の記憶に密着した曲がより愛おしく感じるのは何故だろう?
今の時代はアルバムとして全曲フルで聴くことはほとんどない。
でも、ある時代、LPが擦り切れるくらい聴いたアルバムは、折に触れ記憶の沼の底から浮かび上がってくる。
その歌手の代表アルバムでなくても忘れがたい。
たとえば僕の場合…この『ふたり乗りの電車』(ふきのとう 1975年)
『フェアウェイ』(オフコース 1978年)、『10ナンバーズ・からっと』(サザンオールスターズ 1979年)、
『帰去来』(さだまさし 1976年)、同じく『風見鶏』(1977年)、『愛していると言ってくれ』(中島みゆき 1978年)
『氷の世界』(井上陽水 1973年)*これはヒット作
『バイバイグッバイサラバイ』(斎藤哲夫 1973年)、『ゲームは終わり』(五つの赤い風船 1972年)
まだまだ続く。(笑)
これって、そのまま僕の1970年代じゃないか。
センチで、臆病で、自意識の強い、恥ずかしい青春。
そんな暗い過去もなかば肯定して思い出にできるくらいの年齢になったのだ。
そういえば去年こんな投稿もしてた。
