40年ぶりの再会。眩しかった彼女と浅間山へ――清冽にしてせつない珠玉の4篇。泉鏡花賞・芸術選奨文科大臣賞をW受賞した話題作 (amazonより)
南木佳士の短編小説集。
感傷的な表題作に心奪われ単行本と文庫本を買ってしまった。
Kindleが出ていたら文庫は要らなかったが…。
表題作「草すべり」はずっと前に読んでいた。
3年前に読んだ。
翌年に読んだら印象が大きく変わった。
読むほどに味わい深い。
高校の同級生だった女性から手紙が届き、四十年ぶりに再会して登った浅間山での一日。青春の輝きに満ちていた彼女だったが…。人生の復路に始めた山歩きだからこそ知るかけがえのないものとは。過ぎゆく時のいとおしさが稜線を渡る風とともに身の内を吹きぬける山歩き短篇集。

ああ、そうだったと覚えていたのは沙絵ちゃんが下山のとき体調が悪くなるということ。
読者は小説に描かれている舞台に実際に行き、ひとつふたつ年齢を重ねると作品の印象がガラっと変わる。
ラストシーンは高峰高原ホテルのカフェ。
僕ら夫婦も一週間前に行き、トイレを借りたところだ。
想像する。
66歳の僕が、衰えつつも、山登りが出来る体調を保持している(?)、このことそのものが、
数年後に振りかえると…とてつもない奇跡とも思えるかもしれない。
「草すべり」
主人公の二人は五十五歳。
同じくらいの年齢の諸子に奨めようか、と思ってやめた。
皆がそれほど山好きではないだろうし。
4つの短編が収められている。
まだ全作は読んでないなと「穂高山」を読み始めてしばらくして、前に読んでいたことに気がついた。
あとの2作、「バカ尾根」と「旧盆」を読んだ。
どれも沁みる小説だった。
追記
先日、愛読しているブログ「一日の王」でこの小説が取り上げられていた。
ブログ氏が選んだ“山の名著”を紹介する趣向のひとつだった。
どの作品にも印象的な文章が続く。
南木佳士の文章は、岩に染み入る水滴のように、じわじわと心にも染み込んでくる。
こんな体験は、既存の「山の名著」では絶対に味わえないものだ。
僕も同じ思いだ。
「岩に染みいる水滴のように」染みいるのだ。