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宝塚歌劇団花組「悪魔城ドラキュラ」感想〜ヴァンパイア伝説✕フランス革命の面白さ(2025年8月16日昼・東京宝塚劇場)

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ご縁をいただいて初日(8月16日)にお邪魔して参りました!ありがとうございます!!

今年は春〜夏にかけて怒涛の現場通いをしていたのですが、その締めくくりとして二都物語を彷彿させる演目と出会うことになりました。思いがけない偶然にブーストがかかって、テンション高く楽しむことができました!

ヅカオタじゃないから文脈(花組の系譜など)も分かってないし、ゲーマーじゃないから原作ゲームのことも分かってないけどそれでもすっごく楽しかったよ〜!という、素直すぎる感想を残しておきたいと思います。あと、フランス革命に文字数を割いたので今回は潔くお芝居のみについて書きます(でもレビューも素晴らしかったので、最後にちょっとだけ言及)。

なお、花組さんについては、2021年、2022年に観劇しております(関連記事参照)。一方、ゲームについてはからっきしで、マリカーを逆走するタイプです。

 

 

キャラクター編

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このリズム感のあるレイアウト、主人公の名前は実はアナグラムだった!ということを示唆していたのでした。伏線としておしゃれすぎる👏

 

信念と諦観〜2次元的な夢が詰まった主人公・アルカード

トップスターの永久輝せあさん!かっこよかったです…!

宿命を背負った主人公ならではの、信念と諦観を秘めた温度の“低い”お芝居に惹かれました。「クール」がデフォルトっていうのがいいのです…!歌も素敵だけど、特にセリフの声が好きでした。それが今日日(きょうび)なかなか出会わない、ちょっぴり古風な台詞回しなのでキュンとします。「名乗るほどの男ではない」「待たせたな」「母の名にかけて」などなど。あとウィッグが天才ですね…!絶妙に無造作で絶妙にコントロールされた毛流れ。そして物心ついたときから剣を振るっていたのだろうと思わせる華麗な殺陣。私は原作未履修ですが、2次元の夢が具現化して動いてる、と思いました。あとね可愛い場面もあったんです、これについては輝月ゆうまさんのドラキュラ伯爵とともに、後述。

 

キュートすぎる武闘派ヒロイン・マリア

主人公の温度の“低さ”に対して、ヒロインの熱量が高めというのも、また鉄板な組み合わせ。星空美咲ちゃんの武闘派ヒロイン、とってもキュートでした!殺陣の途中のポーズがひとつひとつキレイ。ショート丈ボトムとニーハイソックスの組み合わせは脚を横に分断するラインが多いデザインなのに、それでもなお伝わってくる脚の長さ…!幼少期のアルカードとの出会いを再現する一人芝居(ちょい早口)もめちゃ可愛かったですし、昔からある“あざと女子”のクリシェ「来ちゃった」、美咲ちゃんの手にかかれば、みずみずしさ可憐さとても新鮮に聞こえます。

 

闇落ちするのも仕方ないよね〜リヒター&アネット

聖乃あすかさん演じるリヒターは、序盤で闇落ちしてしまいます…!びっくりしたのですが、だからこそ?用意されていた鞭でのバトルがフェティッシュで見応えありました。銀橋に出てきてアルカードと戦うところは迫力満点で、後ろの席で観ていたけれど身をすくめそうになりました*1。そんなリヒターが闇落ちしてまで守ろうとしたのが美羽愛ちゃん演じるアネット。いや、可愛すぎんか?めちゃくちゃ可愛くない??リヒターの選択にも説得力が増すというものです(一発でお顔を覚えたのでショーでもガン見していました)。最終的にハピエンでよかった〜😭

 

サキュバス様という“ヘキ”

そして無性にオタク心をくすぐられたのが、サキュバスとマグヌスです…!もともと高飛車なヴィランが大好きなのもあるけど、原作を知らないのに「めちゃくちゃゲームだ!!」って沸きました。特にサキュバス様の挑発的な微笑みヘルシーな美脚がたまらない!で、幕間に公演デザートをつつきながら「かっこいい娘役さんだったなぁ上級生さんかな〜?」とウキウキでお名前をチェックしてたら目玉が飛び出そうになりました。侑輝大弥さん。どこからどう見ても男役さんのお名前です。うわあ太ももガン見してましたごめんなさい!!(この不思議な背徳感、なんなんでしょう)。そんなわけで侑輝大弥さんのサキュバス&希波らいとさんのマグヌス、とっても素敵でした(2人の幕引きも切ない…)。相関図を見てみると、マグ→サキュにしか矢印が出てないんですか…!?ねぇ!?そうなの!?ねぇ!?

 

ストーリー&演出編

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公演デザートおいしかった🦇

 

フランス革命の妙〜光って落ちるギロチンの刃よ

さて一番書きたかったのがここです…!早口になりますよ!

時代背景は1782〜1794年7月頃

ほぼ予習をしていなかった私、日比谷に向かう地下鉄でようやく公式サイト&動画をチェックしまして、「えっ?フランス革命なの!?」となりました。いやもう、ほぼほぼ二都物語(当たり判定デカめ)。幕が開いてみると、フランス革命付け焼き刃オタク、大歓喜でした。「二都物語」の出来事と史実をつきあわせた記事を書くためにフランス革命を0から勉強したのですが、終わった後で思いがけないご褒美をもらった気分です。

まず、いきなり二都物語の2幕の冒頭が始まりましたよね(始まってないよ)。まず民衆の群舞の背景に三色旗があるので(やっぱり二都物語ですね)、バスティーユ襲撃(1789年)のあたりは飛ばして、1792年の「8月10日事件」→共和国宣言あたりから始まっていますね*2。彼らはパリの民衆であるサン・キュロットで、みんなのリーダーとして描かれるロベスピエール国民公会の議員。パリ・コミューン国民公会ジャコバン派(の中の、モンターニュ派を後押しする構図でしょうか。メインの時期はジャコバン派の独裁が始まった1793年頃だと考えてよさそうです。

パリと比べて農村が平和だったり修道院が機能していたり、という描写はフィクションなのかなと思ったのですが*3、本を読み直してみるとそうでもなかったです。一部の農村部では“変わらず”教会を中心に暮らしが営まれていたようなので、十分ありえる描写かなと思いました。

 

レペゼン革命、ロベスピエール

本作のロベスピエールは彼の清廉潔白さにフォーカスし、自分の訴える“正しさ”を民衆が理解できなかったことが悲劇、という印象でした。彼のセリフにあった、民衆が支持している「生ぬるい政党」というのはおそらくジロンド派(寛容派)のことです。ただし、史実ではジロンド派は1793年5月31日に民衆(サン・キュロット)の圧力を受けて国民公会を追放されています(その後、10月30日に処刑)。つまり、逆ですよね。恐怖政治が行き詰まる頃までには、穏健な主張をする人々はすでに国民公会に生き残っていませんでした(比喩じゃなくて半分くらいはリアルに)。

また、彼が民衆に吊し上げられてギロチンに追いやられたという展開は、恐怖政治の果てに起こったテルミドールのクーデター(反動)(1794年7月)をアレンジしたものです。発端は国民公会ですがパリの民衆の支持を失っていたのは本当で、護送されるときにはかなりヤジを浴びています。パリの死刑執行人シャルル=アンリ・サンソンの日記によれば、護送車にしがみついて「さあ極悪人め、すべての妻とすべての母親の呪いと一緒に地獄に落ちてしまえ」と罵った女がいて(文献1 P.360)、パリの一市民であったセレスタン・ギタールは野望にかられた極悪人よ、これがお前の傲慢の行きつくところだ」と日記に書き残しています(文献2 P.560)。現代の私たちが「ロベスピエールは恐怖政治の首謀者であり極悪人である」と捉えることには注意が必要ですが(本当はそうとは言えないから)、当時の市民たちのリアクションにはこのようなものがあり、その後には彼をスケープゴートとしてさまざまな反動が起こっています。

「恐怖の支配」のレッテルが貼られて激しく非難され、ロベスピエールはおあつらえ向きのスケープゴートとなったのである。

ピーター・マクフィー著, 永見瑞木,安藤裕介訳『フランス革命死 自由か死か』白水社,2022,P.358

 

悪魔城ドラキュラ」のストーリーに戻りますが、こうやって考えるとロベスピエールって、つくづく、フランス革命のアイコンなのですよね。ルイ16世マリー・アントワネットをのぞくと(本作には登場せず)、みんなが当たり前に知っていて動かしやすいキャラクターって、あとはナポレオンの登場を待たなければなりません。まさにレペゼン革命。その意味で、彼をうまく抽出してストーリーに位置づけたのがうまいなぁと思いました。悪魔神官に操られているという時点で史実との関連は(いい意味で)どうでもよくなるのですが、それでも「母を亡くし、父に捨てられた」という設定は史実通りであることが心憎いです。理想に燃える若き政治家を演じた羽立光来さん、苦悩や葛藤の表現も素敵でした。死後の世界にアルカードが迷い込んだとき、(辛い亡くなり方をしたけど*4)おだやかな表情で語りかけてくれたのが救いでしたよね…。

※観劇後に、雪組公演「ひかりふる路〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜」(2017)のことを知りました。タイトルと雪組のイメージから勝手に和物だと思い込んでいました。最後に望海さんが切腹するのかなって…(でもワイホで切腹はせんやろ、と思って調べたらわかった次第)。これを呟くや否や有識者3名から鑑賞を勧められました。見てみよう!

※ちなみにロベスピエールは「二都物語」(1780〜1793年12月頃が舞台)には原作・ミュージカルともに名前すら出てきません。しかし、カートンやダーニーが苛烈な運命に巻き込まれた1793年末というのは恐怖政治の真っ只中で、つまりロベスピエールたちの影響下にあるのです。ロペビ、二都には出てこないけど、めちゃくちゃ“居た”と思ってます。

 

ギロチンと出会い直すということ

それにしても、「1789(※私が観たのは東宝版,2025)」では模型のみ登場させてエンディングの演劇的効果を高め、「二都物語」では高度に抽象化されたセットとSEで想像させるという形で登場していたアレ…そう、ギロチン。今述べたとおり、1789でも二都でも刃が落ちるなんて具体的なモーションは登場しなかったのですが、宝塚歌劇ともなると、電飾を光らせながら落ちるんですよね。しかもそれをきっかけにドラキュラ復活。ギロチンの登場はあんなに鬱だったはずなのに、今回はエンタメの味付けに唸らされたのでした。

 

ヴァンパイア伝説とフランス革命〜魅力的すぎる“悪魔合体

ブラム・ストーカーによる小説『吸血鬼ドラキュラ』の舞台はヴィクトリア朝のイギリスであり、伯爵が城を構えるのはトランシルバニア地方でした(現在のルーマニア)。二都物語と同時期に上演されていたダンス・オブ・ヴァンパイア(これもたくさん観た!)はある適度この設定が踏襲されていてトランシルバニアの村が出てきます。これに対し「悪魔城ドラキュラ」は、ヴァンパイア伝説を時代も地域もぶっ飛ばしてフランス革命にくっつける大胆なアレンジが大きな特徴なのだと思います。本当にまさかフランス革命だとは思わなかったので、とてもワクワクさせられました!

 

父との対峙〜オイディプス王スターウォーズ

もうひとつ興味深かったのは、主人公が父を斃(たお)すこと。古くはオイディプス王から描かれてきたモチーフです。私が特に好きなのは「スターウォーズ」における、ルーク・スカイウォーカーとダースベイダー卿の物語。本作におけるアルカードとドラキュラ伯爵の関係は、これらを彷彿させるものでした。

アルカードの造形としては、母への思慕が強く描かれており、自室の壁に母の肖像を大きく描いてそれを眺めて暮らすあたり、とてもいじらしいのですが、本当はその愛情は父であるドラキュラ伯爵にも抱いていたんだなと思います。そして伯爵もまた、息子を深く愛していました。クライマックスでは、伯爵の冷徹さが溶けて温もりとなり、アルカードを包み込みます。永久輝さんと輝月ゆうまさんのお芝居を見ていると、アルカードは、本当はお父さんもお母さんも大好きだったんだ…と思えて切ないのです(お父さんやお母さんに寄り添うときに、アルカードはすっごく可愛いから…)。

オイディプス王スターウォーズ(もちろんオイディプス王との関連が指摘されている)を引き合いに出しましたが、和解の末に死別する本作の顛末は、スターウォーズに近いかなと思います。悲劇的ではありますが、憎しみと誤解に終止符が打たれて、アルカードは前を向いて生きられるようになるのです。

 

アルカードの受ける扱い〜見た目を褒めそやし、出自で差別する人間

人間とヴァンパイアの血を引くアルカードが、物語で担ったのはどんな役割でしょうか。それは、ひたむきに生きる姿を通じて、人間の愚かしさを逆照射することだったのだと思います。わかりやすいのが修道院のシーンです。シスターたちは、彼の美貌に惹かれて一方的に愛しておきながら、出自を知ると手のひらを返して排除しようとします。アルカードはこんなふうに何度も排斥されてきたんだなと察せられる悲しいシーンでした。でもこれは、現実の社会で起きていること。ルッキズムもそうだし、ミックスルーツの人への都合の良い態度もそうですよね。こうした問題提起をお芝居という小箱に入れてチラッと見せる手腕もうまいなぁと思いました。

 

まとめ:ひとさじの“別れの予感”〜余白のあるエンディング

物語の結末で、アルカードとマリアは、異なる時間に生きる者同士として、人生をともに歩む決断をしました。しかしその瞬間から、カウントダウンは始まっています。幸せそうに2人が笑い合うほど、運命づけられた別れの寂しさに胸がぎゅっとなるのです。不思議ですよね、人間どうしで連れ合ったとしても、それぞれの寿命によりいつか“死に別れる”のは同じなのに。どうしてこんなに切ないんだろう…。2人が示した愛情の表し方も、おでことおでこをそっと寄せ合うだけ、という抑制的なものでした。熱いキスを交わすような男女の愛もロマンチックだけれど、観客が2人の歩む道に思いを馳せるうえでは、この余白こそが素晴らしいのだと思います。

 

 

2週間くらい寝かせているうちに、TLでは原作ゲームのファンの方々の楽しそうな感想もたくさんお見かけしました(キャラクター造形や音楽などについて)。改めて私は何も知らないで観に行ったんだなぁ〜と思うわけですが、素敵な作品に出会えて嬉しかったです!

 

おまけ:「愛,Love Revue!」の感想(超ダイジェスト版)

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  • この「愛」のフォント⬆️を見た時点で、悩みごととか色々どうでもよくなった
  • 世の中の景色全部これになったらいいのにな
  • ピンク色に包まれた“ひとみさ”の多幸感
  • 美咲ちゃんの『大好き꒰՞> · <𓈒𓈒՞꒱』の表情が可愛すぎる
  • バッドパワー何ですかあれはもう一度観たいのですが????

 

今回、エンタメの輝きを両手いっぱいに受け取って、しばらく観劇の予定がない寂しさも埋めてもらえそうです。よい締めくくりとなりました!

あとは秋以降のチケ取りに精を出しつつ、春〜夏の観劇を振り返ったり、二都物語の書き終わってないテーマを書いたり、フランス革命に関する読書を続ける予定です…(なんで???)

 

参考文献
  1. モニク・ルバイイ 編, 田中正人 他 訳:ギロチンの祭典 死刑執行人から見たフランス革命. (ユニテ,1989)
  2. セレスタン・ギタール著,レイモン・オベール編,河盛好蔵訳:フランス革命下の一市民の日記.(中公文庫,1986)
  3.  ピーター・マクフィー著, 永見瑞木,安藤裕介訳:フランス革命史 自由か死か.(白水社,2022)←大著なので読み切れていませんが、今回新たに読みました。1792〜1795付近の記述だけ…

(ほか、前の記事を書いたときのも色々)

 

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🌸宝塚(花組)感想

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🇫🇷🇬🇧二都物語(いっぱい書いたので、フランス革命の話だけ置いておきます)

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*1:脱線するけど、ゲームが家になかったので友達の家でセーラームーンのゲームをやらせてもらっていたんだけど(スーファミ)、私は技術がないからいつもセーラーヴィナスを選んでYボタン連打してました。鞭ってリーチが長いから。でも殺陣を目の当たりにして本当は難しいに決まってると思いました。

*2:三色旗の制定年は定かではないようなんですが

*3:cf,大恐怖、ヴァンデの反乱、非キリスト教化運動など

*4:失脚後に銃弾を受けており(銃撃か自殺未遂かは不明)、ギロチンにかけられるときは顔面に大怪我した状態で苦しんで亡くなっています。ちな、失脚から処刑までは1日。




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