「小さな演劇的家族」――。
今夜のカーテンコールの前、さとっさんが芳雄さんの額から銀の紙吹雪を取ってあげたあのワンシーンを思い返すと、敵役である公爵の台詞ではあるけれど、この言葉がぴったりくるなぁと感じるのです。
6/20に初日を迎えてからあっというまの1か月半。同じチーム・エレファントのキャストで、偶然ですが初日と同じ列で観劇することができました(同じ上手側。なんでなのww)。CrazyにBurning downしまくった大盛り上がりの千秋楽の感想をメモしておきたいと思います。
- プロローグ〜我らゴリッゴリのボヘミアンズ
- 今日も最高いい感じ! 初日からぐっと締まったテンポ
- 新章突入、ハッピー炸裂あやよし劇場
- 「生(き)」の感情を板に乗せる〜Crazy Rolling
- そして帝劇の神様が、芳雄さんのことを離さなかった
- エピローグ〜それでも彼らは舞台に立ち続ける
初日の感想です▼
プロローグ〜我らゴリッゴリのボヘミアンズ

今日17時に退社してよかったかといえば、全然よくなかったですね、うん!(元気よく言うな)
クロークでお手紙を預けて入場し、深い紫の絨毯を踏みしめ、アンニュイなあの音楽を聴きながらキャスボ撮影の列に並ぶのも今日が最後。
プレショー終わりに上手から芳雄クリスチャンが現れて、いつものようにゆっくりと、劇場を見渡しながら「MOURIN LOUGE」の看板の前を横切っていきます。下手の立ち位置にたどり着くまで拍手が鳴り止まなかったのは、私が入った回の中では、7/4夜の芳雄さん復帰公演のときだけでした。
ここ数回注目してきて、今夜、自分の中で答えが得られたことがあります。それは、意を決したクリスチャンが両手で幕を上げ始める瞬間、「スッ」というブレスの音が微かに聞こえる、つまりおそらくですが、台詞はないのにマイクがオンになっている、ということ。やはりクリスチャン「が」幕を上げるということが重要なのかもしれません。今夜は心なしか、幕を上げる前、劇場に思いを馳せている時間が長かったように感じました。
そこからはもう、歓声の洪水でした。初日や貸切公演もすごかったけれど、今夜が間違いなく一番でした。心置きなくヒューヒュー言えるって、いいなぁ(←毎公演言っていた人)。Lady M'sのシルエットから大盛り上がりで、これから3時間、ゴリッゴリのボヘミアンズといっしょに目撃するんだ、というワクワクで胸がいっぱいになりました。
今日も最高いい感じ! 初日からぐっと締まったテンポ
この記事でどうしても特筆しておきたいことがあります。それは、初日に比べてものすごくテンポが締まったということです。初日の感想は一言でいうなら「こってり特濃!」だったのですが、今夜は心地よいスピード感と迫力に満ちていて、Welcome to the Moulin Rouge!の橋本ジドラーの「ろくでなし!ひとでなし!」に始まる台詞がすでにキレッキレ。「できるCAN CAN CAN!」以降は、のちにカテコで拍手の早取りに引っ張られてしまったというようなことを語っていましたが(ごめんなさい🙏)、観客としては快活なテンポを楽しめました*1。
そして、こってり隊長のあーやサティーンも、先月末くらいからSparkling Diamondのグルーヴ感が本来の持ち味通りになり、今夜も体を動かしたくてうずうずするくらい気持ちよくてブラボーでした👏
新章突入、ハッピー炸裂あやよし劇場
Your Song
新章突入!と思ったのは実は直前の8/4の回なのですが、Your Songとその前のお芝居がすごく変化している気がします。以前から、このシーンのあーやサティーンはかなりコミカル路線でしたが、ここ最近はシャンパンのグラスを渡しながらどついたり、とにかく圧が強い!それに対して芳雄クリスチャンも負けじと声を張り、「いっぱい練習した!!」の大声よ…(このときの手振り、今年の途中でやらなくなっちゃいましたね🥺)。客席からクスクス笑いも漏れるくらいのムードから一転、朴訥な語り口でYour Songが始まります。先月末あたりで登場した「♪生まれる前から知っていた」のいないいないばぁ風の登場は、今やカウチ上の匍匐前進つきになっていて、これはもしかして歌詞に合わせて産道をイメージしているのか!?と謎の深読みをしてしまうくらいでした(多分違う)
ELM
そしてもはや2人の自由なセッションタイムとも言えるELM。個人的に愛してやまない芳雄クリスチャンのダンスブレイク、目をすがめた表情で踊るのを久しぶりに観ました。本当にさぁ、サティーンから「♪やめて全部お見通し、安い企みもう聞きたくない」と拒絶されたクリスチャンが編み出したソリューションがバチクソかっこよく踊るっていうの、ほんとうに何なの?
ミラーリング2回目「♪愛は信じないの」は、あーやサティーンがサイドテーブルの上に身を乗り出して両手ハートを掲げた上に片手ずつ投げキッス、まさに「真似できるもんならやってみなさいよ」だったのですが、それを完璧に返す芳雄クリスチャンに思わずあーやから笑いがこぼれて、その後も「♪歌えないさこんなラブソング😘ンマンマ」「♪その歌〜が〜😘ンマンマ」でキスの応酬。なんだこれwwwwww
2人が寄せ合った額の間に汗がポタポタと落ちて、星空の輝きと響き合います。もしかしたらハッピーエンドがあるかもしれない、そんな夢まで見てしまいそうな1幕ラストでした。
「生(き)」の感情を板に乗せる〜Crazy Rolling
物語の終盤に向けて、猜疑心、執着心、絶望、怒りなど真っ黒な感情に飲み込まれていくクリスチャン。私は初日、昨年よりも「独りよがり」と「幼稚さ」が強調されているように受け取ったのですが、今夜になるともう、混じりっけのない「生(き)」の感情がそこにあるように思えました。独擅場であるCrazy Rollingでは1小節ごと人格が入れ替わるかのようで、「♪君はその手で」をすがるように歌ったあとに「♪運命をもてあそぶの」で悪魔に取り憑かれたかのような声を絞り出し、「♪死んでも構わない」の最後の2小節は、2拍ずつ声質を変えながらのクレッシェンド。
その前の「♪ついに君は暴かれた」で嘲笑しながら両手を広げていたのですが、これは、この日のShut Up〜前の出会いのシーン「びっくりした?🤗」で手を広げていたのと対になっているようでゾッとしました。
そして帝劇の神様が、芳雄さんのことを離さなかった
銀の紙吹雪が降りしきる中、芳雄クリスチャンの腕の中で、あーやサティーンがほんのりと微笑みながら息絶えます*3。
私は以前から、芳雄クリスチャンが、サティーンの死に顔から紙吹雪を取ってあげる仕草が大好きでした。ほぼ毎回行われているこの愛情表現を期待するあまり、「紙吹雪がいい感じにサティーンのほっぺたに落ちてくれないかな」という邪念すら抱いていたかもしれません。でも、
帝劇の神様は、やっぱり芳雄さんのことが好きすぎたようです。
紙吹雪の素材は、いわゆる銀テと同じ。今まで、首筋や髪の毛に1枚や2枚くっついてしまうことは何度もあったけれど、そんな場所に1枚ずつ貼りつくなんてこと、ある????
サティーンの昇天の前後でカンパニーのみんながクリスチャンに触れるから、そこで誰かがさりげなくとってくれたりしないだろうか、もしくは本人が、この日Truth Beauty Freedom Loveで自分のスカーフを直したように、ELMのミラーリング前に袖まくりを直したように対処してくれないだろうか、と半ば祈るような気持ちで見守っていたのですが…。
CWMの歌唱をできるだけ味わうために、2階にいた私は、ここにきてオペラグラスを置きました*4。その結果、曲が始まってすぐ、床に落ちる照明がじわっとあたたかな色に染まることに、今夜初めて気づくことができました。さっきまで、憤怒のがなり声で歌っていたとは思えない透き通るような美声が広い空間を満たして、響きだけは間違いなく、ミュージカルとして最後の0番での歌唱にふさわしいものだったと思います。
さとしジドラーが電源を落としに行く前に、あらあら〜とばかりに芳雄クリスチャンのおでこから銀色のそれを取り除いてくれたとき、客席からは大きな笑いがこぼれて、それは間違いなくみんながほっとした瞬間でした。このワンシーンがあったからきっと芳雄さんも私たちも救われたし、チーム・エレファント、そしてこのカンパニー全体の“家族”のようなありように、私は胸がいっぱいになったのです。
エピローグ〜それでも彼らは舞台に立ち続ける
総立ちの観客が爆裂手拍子でカテコを盛り上げ、Hey Yaの変則クラップでは迷いのない「ウンパパウンパ・パンパンパン!👏」が小気味よく響き渡ります。大阪公演も楽しみだけれど、カンパニーとふた夏を共にした帝劇ボヘミアンズならではのこの揃いっぷりは、今夜が最後になるのだなぁとしみじみ。
カーテンコールでの芳雄さんの挨拶では、キャッツみたいに小屋を建ててずっとムーランやればいいのにねという話や、体調不良で休演した際にWキャスト制度に感謝した話(そしてカンパニーと甲斐翔真くんへの謝辞)などが印象的でした。帝劇はなくなってしまうけれど「それでも僕らは舞台に立ち続けますから」。節目にはあまりこだわらず、明るく話してくれる芳雄さん。そして、広島原爆の日も踏まえて、本作で描かれる愛と死への思いを語ったあーやの言葉もとても心に響きました。「亡くなってしまった人も、クリスチャンが書き残した音楽にサティーンが生きているように、周りの景色や、みんなの瞳の中に生き続ける」。あーやの死生観に基づく語りを、私はとても愛しています。
最後は、芳雄さんの掛け声「ありがとう帝劇!せーの!」→カンパニー全員で「みんなで!」→観客全員で「CAN CAN!」でお別れ。去り際に、芳雄さんは大きくのけぞってからセンターであーやをがっしりハグしたのち、肩を抱き合って手を振りながら元気にはけてゆきました。

名残を惜しむあまり最後の最後でグッズを買い足して、何度もロビーを振り返りながら、帝劇の真っ赤な世界を後にしました。
去年も夢中だったつもりだけれど、今年はその比ではなく、まださみしくて名残惜しい気持ちでいっぱいです。
舞台の上にしかない「真実」を拾い集め、悔いのない夏を過ごすことができましたが、気づけば明日から暦の上では、秋。
梅芸に向けて切り替えつつ、キャストごとの切り口での記事も含めて、本作の好きなところをまだまだ書き残していきたいと思います。
そして明日はチーム・ウィンドミルが千秋楽を迎えます。ぶちかましてください!!!!!
*1:WTTMR終わりの例の拍手は、もうショーストップなんてものじゃなく、芳雄クリスチャンはガッツポーズでぴょんぴょんしても止まない拍手に、最後はちょっと突っ込むようなニュアンス込みで「なんってすごいんだ」。
*2:なおピッチソングのオリンピック日替わり競技、今夜は体操でした。きれいなY字のフィニッシュポーズを決めて律儀に歩みを止める芳雄クリスチャン…
*3:2人のサティーンの違いの1つだけど、あーやは最後にもう一度だけ口づけようと身をもたげている気がする。最後まで愛情深くてそれがまた泣けるのです
*4:私は去年ラグタイムの東京楽で、芳雄コールハウスが芝居しながら着るロングコートの襟が裏返ってしまっていたがために、Make Them Hear Youに没入しきれなかった反省があります…