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令和ロマンが変えた2つの空気…『M-1グランプリ2024』

ひとつ前の記事が新年の挨拶、もうひとつ前がM-1グランプリ2023のレビューという体たらくですが…

今年もM-1グランプリについては書き留めておきたい。

 

natalie.mu

 

今回の『M-1グランプリ2024』は、2015年に第2期M-1グランプリに始まってから10回目…通算で20回目を迎える記念大会。

歴代王者が勢揃いしたポスターがひときわ目を引きました。

審査員の多くも一新され、これまでのM-1グランプリを機に活躍を広げた歴々の芸人を揃えました。なかでも、オードリー若林が審査員を務めたことには驚かされた。

 

新たな審査員がどんな採点や論評を加えるのか。

漫才と同等に楽しみだった。実際、端々に至言が滲む論評には首肯しつつも、いずれも高得点と言うか、際立った個性を付けさせないようなハイレベル揃いの大会であったとも感じました。

そんな『M-1グランプリ2024』を振り返っていきます。

 

令和ロマン、史上初の連覇

今回はなんと言っても、これに尽きるでしょう。

 

令和ロマン史上初の連覇!

昨年優勝した令和ロマンが、今年も再び出場。またしてもトップバッターを引き当てられるという笑神籤の巡り合わせも何のその。

一気に空気を掴んでいく演技力に、チャンピオンの風格まで漂わせて圧巻だった。

 

いきなりこんな空気を作られてしまって、今大会は逆に大丈夫なんだろうか、と心配しかけたところを救ったのが2番手で登場したヤーレンズ

昨年準優勝の地力に磨きを掛けたテンポのいい掛け合いが、舞台の空気を冷ますことなく整えてくれるようだった。

ファーストラウンド5位。雪辱を誓った挑戦としては悔しい結果だろうけれど、今大会を成立させた一番の功労者は彼らだったと思います。

 

 

バッテリィズ大躍進

昨年の敗者復活戦や関西の賞レースで頭角を現していたバッテリィズ

エースのアホさ加減を活かした漫才に、もう「偉人の名言」というテーマがうってつけでしたね。

エースらしい視点で名言に疑問を呈していく。時にそれが的を射てて納得させられたかと思えば、「細そう過ぎるやろ」に代表される、やっぱりアホとしか形容できないキラーワードが飛び込んでくる構成が最高だった。

あくまでエースを否定せず、分かってもらおうと話を展開する寺家という構図もいい。

 

結果、ファーストラウンドを861点という高得点で1位通過。

この点数は、同じく審査員9人体制だった2015年と比較しても最高得点です。(2015年はジャルジャルの834点が最高)

 

西の新鋭がバッテリィズなら、東の新鋭として期待していたのがエバース

ブラックマヨネーズを彷彿とさせる話の転がし方が巧みで、とても引き込まれた。1点差で最終決戦行きを逃し4位、バッテリィズともども来年以降の活躍が楽しみ。

 

 

ついに実を結んだ真空ジェシカ

4年連続決勝進出となった真空ジェシカ

これは笑い飯に次いで、ハライチと並ぶ記録。(ハライチは2009年、2010年、2015年、2016年…と端境期を挟んでいるため、連続感が薄いとも言えるし、その間もキャリアハイを維持していたという点でより凄い記録とも言える)

 

なかなかM-1グランプリ勝戦の舞台とは波長が合わず、苦しめられてきた感があったが、4年目にして今回はついに噛み合った!

構成が洗練されたのか、審査員の一新によるところが大きいのか、これまでであれば理解されにくかったであろうボケも、次々と決まっていくさまが気持ちよかった。

 

扱う題材やワード選びの時代性、不意に差し込まれる若干の社会風刺という点で、似たような醍醐味を感じたのがジョックロック

屈伸しながら絶叫するツッコミだけを見れば似ても似つかないんですが。たっぷり振っておきながら、つねに予想を超えるツッコミを放り込んでくれるテンポ感が心地よかった。

 

…と言うことで個人的には、真空ジェシカの1本目とジョックロックが、今大会ではひときわ好みだった。

 

裏を返すと最終決戦の真空ジェシカは、自分の好みからは少し外れるかな。

満を持しての最終決戦進出で、真空ジェシカの世界観を、大振りで繰り広げていく大胆不敵さには魅せられましたが。バッテリィズも、もう一声展開がほしい締め方だった。
そう考えると、わずか4分間に「熊猿」登場のスペクタクルを演出した令和ロマンの連覇に異論なしって感じです。

 

 

敗者復活戦を制したマユリカ

マユリカが敗者復活戦で披露した舞子ネタ。

「残尿」やら「ポコチン」やら汚い言葉からの「品どす」という掛け合いが鮮やか。前半の言葉選びが面白い人もいれば、そうじゃない人にとってはそんな人が「品」を語るギャップで落とす。両面抜かりない秀逸なくだりだった。

 

マユリカと言えば昨年の決勝戦、「ずっとキモダチ」というあまりにもなキャッチフレーズを付けられて物議を醸していました。

今年、決勝進出したら、また非道いキャッチフレーズを付けられちゃうのかな、という邪な期待もあったのですが。

敗者復活戦から勝ち上がってきたことで、キャッチフレーズを付けられることなく決勝戦の舞台に立つルートを勝ち取ってきたことが可笑しかった。

 

敗者復活戦と言えば昨年、ド肝を抜いたトム・ブラウン

ラストイヤーとなる今年は、実に6年ぶりとなる決勝進出。この6年のブランクからの返り咲きは過去最長タイ記録で、キングコングタイムマシーン3号と並ぶ。

昨年の悔しさをほうぼうの番組で滲ませていたみちお。今回の決勝戦は、まさにその執念が詰まったトム・ブラウン節全開の漫才で、とにかく圧倒された。

それだけに審査が割れたのが見どころで、「普通の漫才で笑えなくなった人を救済するための漫才」というNON STYLE石田の論評が出色だった。

 

 

念願の初出場も振るわず

同じくラストイヤーにして、決勝初進出のダイタク

劇場評判は高く、なにより初代チャンピオン・中川家以来の兄弟にして初の双子コンビがチャンピオンになる、という記録も見てみたく、期待していました。
双子ならではのシチュエーションを、ヒーローインタビュー仕立てでテンポよく見せていく構成が面白かった。

いっぽうで、安定感すら伝わってくるソツのなさが今大会の空気のなかでは伸び切らないんだろうな、という歯痒さも感じた。

 

もうひとつ、M-1グランプリにおいて記録的だったのがママタルト

大鶴肥満、体重190kg。歴代決勝進出者のなかで最高体重!…だからこそ、そのまま最重量チャンピオンの記録を刻む姿も見てみたかった。

 

記録的だったのは体重だけにあらず。

M-1グランプリ名物のせり上がり登場シーン。その巨体に昇降機が耐えられるのか、懸命に祈りながら上がってくる2人の姿が最高に面白かった。

これ、喋りながら登場してきた2009年の東京ダイナマイトや、武士さながら正座のまま登場した2020年のマヂカルラブリーにも引けを取らない、過去最速のツカミだったんじゃないでしょうか。

 

個人的にはその事実に目を引かれて、肝心の漫才冒頭に乗り遅れてしまったと言うか、せっかくの躍動する大鶴肥満を全幅には楽しみきれなかったのが悔やまれる。

順位的にも最下位に沈んでしまいましたが、暗くならず平の掛け合いも軽妙で、トータルで今大会に欠かせない活躍だった。

 

 

20回記念大会、ついに果たされた連覇

ここまで10組を振り返るなかで、事ある毎に「これは記録だ」とか「前例がない」とか書き添えてきました。

M-1グランプリを見るうえで、昔からこういった記録やジンクスが刻まれる瞬間が大好きでした。

やれ関東勢の初優勝だとか('04アンタッチャブル)、初めての満票優勝だとか('06チュートリアル)、敗者復活からの異例の優勝だとか('07サンドウィッチマン)。

 

そんななかにあって、長らく実現しなかったのが「連覇」だった。

フットボールアワーNON STYLEパンクブーブーがその命題に挑み、いずれも再び最終決戦へと歩みを進めながらもあと一歩のところで連覇の栄冠を逃していた。

連覇を成し遂げるか否かは、第1期M-1グランプリの終盤戦を盛り上げる一助になっていました。

 

第2期M-1グランプリに入り、チャンピオンになるともう挑戦しなくていいんだ…という言わば「上がり」のようなニュアンスが強くなる。実際に再び挑戦するチャンピオンはいなくなった。
連覇の光景は、果たされぬまま終わってしまったのだと思っていた。

 

令和ロマンが昨年、優勝を決めた興奮のただ中に叫んだ「来年も出ます」という宣言が、その空気を一変した。

 

ついにM-1グランプリ連覇が実現するかもしれない。

令和ロマンが変えたのは、トップバッターという不利な番手を覆した決勝戦の空気だけでなく、近年続いていたチャンピオンは勇退するものという空気そのものだった。

そのためには昨年の時点で宣言してしまったことがつくづく鮮やかでした。

連覇できるか否か、今大会はそこに焦点が当たっていた時点で、ひとつ勝負ありだったのかもしれません。

そして、20回記念大会という節目に、ついに連覇が果たされた。

 

他方で、令和ロマンの漫才というのは徹底的にM-1グランプリにアジャストした、一種のハックだという冷めた見方あもります。

実際、その側面は否めない。

だからこそ、ここからある種のゲームチェンジが起こるのかもしれない、と捉えたい。

 

20回目のM-1グランプリ

特に終了宣言もなかったので、このまま来年も開催されるのでしょう。

第1期M-1グランプリが10年で区切りをつけたことを思うと、連続11年目の開催というのは初めての境地でもあります。

令和ロマンの連覇を経て、今後どんな変化が生まれていくのか。まだまだ見応えは尽きない。

 

 




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