おはようございます。今日はロバータ・フラック と ダニー・ハザウエイの「私の気持ち(THE CLOSER I GET TO YOU)」です。
The closer I get to you
The more you make me see
By giving me all you've got
Your love has captured me
Over and over again
I try to tell myself that we
Could never be more than friends
And all the while, inside, I knew it was real
The way you make me feel
Lying here next to you
Time just seems to fly
Needing you more and more
Let's give love a try
Oh, oh, sweeter and sweeter love grows
And heaven's there for those
Who fool the tricks of time
With the hearts in love they find
True love
In a special way
The closer I get to you
The more you make me see
By giving me all you've got
Your love has captured me
Over and over again
I try to tell myself that we
Could never be more than friends
And all the while, inside, I knew it was real
The way you make me feel
The closer I get to you
The more you make me see
By giving you all I got
Your love has captured me
The closer I get to you
A feeling comes over me
Pulling closer, sweet as the gravity
The closer I get to you
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あなたに近づくほど
あなたはもっと気づかせてくれる
あなたが持っているすべてを与えてくれることで
あなたの愛が私をとらえてしまった
何度も何度も
自分に言い聞かせてきた
「僕たちは友達以上にはなれない」と
でも心の奥では本当の愛だとわかっていた
あなたがそう感じさせてくれた
あなたの隣に横たわっていると
時間が飛んでいってしまうよう
あなたがもっともっと必要になる
この愛に賭けてみる
ああ、愛は甘く甘く育っていく
そして天国は
時のいたずらをすり抜け
愛する心を見つけた者に開かれる
真実の愛を
特別な形で
あなたに近づくほど
あなたは私に気づかせてくれる
あなたが持っているすべてを与えてくれることで
あなたの愛が私をとらえてしまった
何度も何度も
自分に言い聞かせた
「私たちは友達以上にはなれない」と
でも心の奥では本当に愛だとわかっていた
あなたがそう感じさせてくれた
あなたに近づくほど
あなたは私に気づかせてくれる
私のすべてをあなたに捧げることで
あなたの愛が私をとらえてしまった
あなたに近づくほど
直感が私に押し寄せる
もっと引き寄せられて
重力のように甘く
あなたに近づくほどに (拙訳)
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この曲はロバータ・フラックの六枚目のアルバム『愛の世界(Blue Lights in the Basement)』からのシングルとして全米2位、R&Bチャート2位の大ヒットになっています。
曲を書いたのはジェームス・エムトゥーメとレジー・ルーカス。のちに「ジューシー・フルーツ」で知られる”エムトゥーメ”を結成しますが、この当時、彼らはロバータ・フラックのバンド・メンバーでした。
エムトゥーメはこのように語っています。
「もしチャンスをくれるなら、僕は彼女にヒット曲をもたらせると言ったんだ。もちろん、その通りにして見せたけどね。ある日、僕たちはアルバム『愛の世界(Blue Lights in the Basement)』のトラック制作をしていて、僕は飽きいた。僕たちは夕食の休憩になったけど、僕はバンドに「残ってくれ」と言ったんだ。僕はピアノに座り、「blee dee dee dee do dee, blee dee dee dee do dee dee」とメロディを弾き、レジーにビートセクションを入れてもらい、ベースプレイヤーに弾いてもらいました。僕はただ聴くためにカセットに録音したかっただけなんだ。僕たちが聴いていると、ロバータが入ってきて、「エムトゥーメ、それ何?」と言ってきた。僕は「『The Closer I Get to You』だよ」と答えた。彼女は「大好きだわ。録音してもいい?」と言ったんだ。彼女はそれを録音して僕に聴かせたので、僕は「クールだね。でも、どうしたら素晴らしくなると思う?君とダニーがまたやることだよ。君とダニー・ハサウェイだ」と言ったんだ。」(redbullmusicacademy.com/2014/05)
ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイはハワード大学時代からの友人で、1972年に「ロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ」というデュオ・アルバムをリリースし、全米3位の大ヒットになっていました。
その後、ロバータは「やさしく歌って(Killing Me Softly with His Song)」や「愛のためいき(Feel Like Makin' Love)」などの大ヒットを飛ばし、順調にキャリアを積み重ねていましたが、対照的にダニーは鬱病に苦しめられ、1973年から1974年にかけて数回入院し、最終的に妄想型統合失調症と診断され、アーティスト活動もままならない状態でした。
エムトゥーメの提案を受けて(ロバータのマネージャーの提案だったという説もありますが)ロバータはダニーに連絡をとります。彼女はこう語っています。
「私はダニーを愛していました。ダニーが大好きなんです。ダニーは音楽の天才です、私はその言葉を頻繁に軽々しく使うことはありません。ドニーは長年さまざまな苦しみを抱えていたけど、彼がピアノの前に座って、私のために、あるいは私と一緒に歌うときには、まるで何の問題もないかのようでした──彼は歌い、演奏し、そして驚くほど美しい音楽を創り出したのです。
私のバンドのメンバーのジェームス・エムトゥーメとレジー・ルーカスは「The Closer I Get To You」をデュエットとして書いたわけではありませんでした。私は深刻な鬱病に苦しんでいたダニーを助けるために、この曲をデュエットとして書き直してほしいと思ったんです。
レコーディングのために彼はシカゴからニューヨークへ来ることができなかったけれど、シカゴで彼のパートを録ってくれて、それを後から私のボーカルとミックスしました。自分の録音を聴くとき、それは今でも私にとって最も美しく、そして最も痛みを伴う曲のひとつです。」 (SONGWRITER UNIVERSE August 10, 2020)
ダニーもロバートの気持ちに応えようとしたのでしょう、飛行機に乗れるような状態ではなかったので、自分で住んでいるシカゴで録音してそれを彼女に送ったんですね。
この曲の成功を受けて、ロバータとダニーはデュエット・アルバムの制作に入り、2曲のデュエットをレコーディングします。1曲がスティーヴィー・ワンダーが作曲に加わった「You Are My Heaven」。もう1曲がエムトゥーメとレジー・ルーカスが書いた「Back Together Again」でした。
エムトゥーメはこう回想しています。
「次の曲の「Back Together Again」 のレコーディングをしているときにダニーがマイクの前で突然目を押さえた。神経の病気に苦しんでいて、もう歌えなくなってしまったんだ。あれは土曜の夜で、私は「月曜にまた会って、仕上げよう」と言い、彼も「そうだな」と答えた。ところが朝の5時頃に電話が鳴って、泣き声が聞こえた。「誰?」と聞くと、「ロバータよ。ダニーが死んだの」と。あの夜、彼は命を絶ってしまったんだ。私はこれまで多くの曲を書いてきたけれど、あの曲は他のどれとも違う、特別な場所を占めている」(redbullmusicacademy.com/2014/05)
ダニーはホテルの窓から転落して亡くなりました。
アルバムのプロデューサーのエリック・マーキュリーによると、彼の病状はあまりにも重く、彼は”ひとつの声で僕らに話しかけたかと思えば、別の声で自分に答えるような状態だった”そうで、彼の意識がはっきりしている瞬間を見つけて録れるものだけ録音したそうです。
こちらが「Back Together Again」
このエピソードを知ると本当に辛くなってしまいまし、そう言われてみれば本調子のダニーならもっと積極的に歌ったかもしれないとも思います。ただ、そういう情報なしに曲に耳を傾けるだけでしたら、彼がそれほどの苦しみに中で歌ったものだとは正直思えません。音楽をやっている時間だけはその苦しみから逃れることができたのだったらいいけれど、などとも思います。本人にとってはそれほど簡単なことではなかったのかもしれませんが。
ただ、これだけは言いたいのですが、ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイのデュエットというのは、音楽史上、数多く生み出されてきた他のデュエットとはどこか違う特別な空気感がありますよね。それはお互いにしかわかりえない信頼関係から生まれるものなのかもしれないと僕は思っています。
最後に、「私の気持ち(THE CLOSER I GET TO YOU)」のカバーを二つご紹介して終わります。共にロバータがデビューを後押しした1980年代のR&Bの顔と言ってもいい二人のシンガー、ルーサー・ヴァンドロス、ピーボ・ブライソン。
ルーサーは2003年のアルバム「Dance With My Father」に収録されていたビヨンセとのデュエット。男女パートが入れ替わっているのも聴きどころです。
ピーボの方はボブ・ジェームス、リーリトナー、ネイザン・イースト、ハービー・メイソンというスーパー・プレイヤーたちによるバンドFourplayの1995年のアルバム「Elixir」に収録されていたもので、パティ・オースティンとのデュエット。両方とも素晴らしいクオリティです。ただ、ロバータ&ダニーとの”空気感”や”波動”の違いのようなものは感じられるとは思います。
