おはようございます。8月も終わりですが、気温だけ見ると、あと一ヶ月くらいは余裕で夏が続きそうな勢いですね。ここはもう開き直って心地よい夏の歌を聴こう、ということで今日はクリストファー・クロスの「セイリング」です。
Well, it's not far down to paradise
At least it's not for me
And if the wind is right, you can sail away
And find tranquility
Oh, the canvas can do miracles
Just you wait and see
Believe me
It's not far to never never land
No reason to pretend
And if the wind is right, you can find the joy
Of innocence again
Oh, the canvas can do miracles
Just you wait and see
Believe me
Sailing
Takes me away to
where I've always heard it could be
Just a dream and the wind to carry me
Soon, I will be free
Fantasy
It gets the best of me
When I'm sailing
All caught up in the reverie
Every word is a symphony
Won't you believe me?
Sailing
Takes me away to
where I've always heard it could be
Just a dream and the wind to carry me
And soon, I will be free
Well, it's not far back to sanity
At least it's not for me
And if the wind is right, you can sail away
And find serenity
Oh, the canvas can do miracles
Just you wait and see
Really, believe me
Sailing
Takes me away to
where I've always heard it could be
A dream and the wind to carry me
And soon, I will be free
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楽園は、そんなに遠くない
少なくとも僕にはね
いい風が吹けば、船を出して
やすらぎを見つけに行けるんだ
ああ、帆布は奇跡を起こすのさ
君も待っていればわかる
僕を信じてほしい
ネバー・ネバー・ランドも遠くはない
偽る必要なんてない
風さえよければ、また見つけられるさ
無垢な喜びを
帆布は、奇跡を起こすのさ
待っていれば分かるよ
僕を信じてほしい
セイリング
僕を連れて行ってくれる
いつも話に聞いてきた場所へ
ただ夢と風に運ばれて
もうすぐ僕は自由になる
幻想
それが僕を打ち負かす
航海していると
空想に全て奪われる
一言一言が、交響曲なんだ
信じてくれないか?
セイリング
僕を連れて行ってくれる
いつも話には聞いてきた場所へ
ただ夢と風に運ばれて
やがて僕は自由になる
正気に戻るのも、そう遠くない
少なくとも僕にはね
風さえよければ、船を出して
静けさを見つけられる
キャンバスは奇跡を起こすのさ
待っていればわかる
本当さ、信じてほしい
セイリング
僕を連れて行ってくれる
いつも話には聞いていた場所へ
夢と風に運ばれて
やがて僕は自由になる (拙訳)
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クリストファー・クロスのデビューは驚くほど鮮やかなものでした。新人ながらグラミー賞の主要4部門である、アルバム・オブ・ザ・イヤー、レコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤー、最優秀新人賞を完全制覇したんですよね。これは2020年にビリー・アイリッシュが成し遂げるまでは、彼一人のみという偉業でした。
そして、レコード・オブ・ザ・イヤーとソング・オブ・ザ・イヤーを獲得し、全米1位にもなり彼の代表曲になったのがこの「セイリング」です。
また、この曲は21世紀に入って再評価されています。
2000年代半ば以降、アメリカでは”ヨット・ロック(Yacht Rock)”というジャンルが話題になりました。1980年前後にTOTOやボズ・スキャッグス、ボビー・コールドウェルなどの「AOR」が流行しましたが、「AOR」は和製ジャンルで、アメリカではジャンル名は特になかったんです。で、21世紀になってそういった音楽を面白がって再評価するときに、音楽から喚起される当時のイメージ、例えばプライベート・ヨットで快適に過ごすバブリーな南カリフォルニアの富裕層のライフスタイルをイメージして、それを揶揄する気持ちもこめてネーミングされたのがヨット・ロックでした。
あるネット記事ではヨット・ロックの「名曲ベスト10」で1位になるほど、ヨットロックの象徴と呼べる存在になったのがこの「セイリング」だったんです(”ヨット”と”セイリング”という明快な接点もあったからでしょうけど)
今あらためて聴き直してみると、メロディ自体はとても大ヒット曲とは思えないほど”単調”です。でも、不思議と全然そんなことを感じさせない、聴き手も航海している気分になる見事な仕上がりで、これは間違いなくマスターピースだなと僕は思いました。
この曲を書いたときのことを彼はこう語っています。
「これは神秘的な作品のひとつなんだ。台所のテーブルでただギターをいじっていただけなのに、信じられないかもしれないけれど、基本的な曲の構造を弾いてしまったんだ」(Rick Beato YouTube Channel)
ヴァース(Aメロ)とコーラス(サビ)はあっという間にできたようです。ただ、それだけでは単調で、ブリッジ(展開部)がほしいと彼は考えました。
その時ギターはDのオープンチューニング(弦を何もおさえずにジャラーンと鳴らすとDコードになるというチューニング)になっていたそうで、これは彼が敬愛するジョニ・ミッチェルの影響だったようです。ただ、オープンチューニングだと、転調などのアイディアを考えるのが難しかったようで、思いつくのにそこから2年近くかかったと彼は語っています。
この曲の場合ブリッジとは2分42秒あたりからのピアノの間奏部分を指します。
ブリッジの重要さを確認するために、「セイリング」のデモも近年公表されていますのでそちらも聴いてみましょう。
全然違いますね。聴き比べるてみると、ピアノの間奏がものすごく効果的なのだとわかります。この曲はアレンジがまた絶妙なんですね。決して派手ではないですけど。クリストファー・クロスと共同でアレンジを担当、ストリングスのスコアを書きピアノも演奏したマイケル・オマーティアンの功績は大きいと思います。グラミー賞で「セイリング」はレコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤーに加えて、最優秀ヴォーカル入りインストゥルメンタル編曲賞も受賞していますが、個人的にはこの曲を評価する場合、この賞こそが最も相応しいもののように思えます。
また、歌詞について彼は、テキサスに住んでいた高校時代に年上の友人が船で海に連れ出してくれたことがインスピレーションになっていると語っていて、それが10代の頃自分の試練や苦労から逃れさせてくれたそうです。
また、クリストファー・クロスの公式HPではこの曲のインスピレーションについてこう書かれています。
「曲はボートでの航海という流れるような比喩を用いていますが、その本当の意図は、芸術が持つ変革の力を表現することにあります。歌詞の「The canvas can do miracles」は、画家のキャンバスを指しています。」
Sailing=「航海」ですから歌詞にcanvasって出てきたら「帆」のことだと誰だって思いますよね。それを絵のほうのキャンバスだなんて、今さら、、(苦笑)。僕がネットで見た和訳も全部「帆」になっていました。でも、キャンバスは元々、船の帆布からきているそうですし、彼もきっと、まずは航海する船の帆から、絵のキャンバスへとイメージが移行したんじゃないかと思うので、和訳は帆のままでもいいんじゃないかとも思います。(僕の和訳は一応最後のパートだけ”キャンバス”にしました。なんかスタンスがセコい、、、w)
曲作りというのはでも全部を理路整然と説明や意味づけできるようなものではなく、無意識の力が大きく働くものでしょうから、本人としても今思えば、みたいなこともあるでしょう。また有名な曲になればなるほど、いろんな人から同じ質問ばかりされたり、時にはトンチンカンな解釈をされて作者もうんざりすることも多いと思います。
「セイリング」もいつの間にかバブリーな1980年代のヨット・ロックの象徴にされて、そんな”お気楽な”とらえかたに彼は反発したかったのかもしれません。もともとは自分の10代のセンシティヴな心情を反映させた内省的な歌だったわけですからね。もちろんこれだって僕の勝手な解釈なんですけどね、、
さて、最後にこの曲のカバーの中でも僕が好きな、2023年リリースのベニー・シングスを。

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