おはようございます。今日はジェイムス・テイラーの「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves)」です。
There's something in the way she moves
Or looks my way or calls my name
That seems to leave this troubled world behind
And if I'm feeling down and blue
Or troubled by some foolish game
She always seems to make me change my mind
And I feel fine anytime she's around me now
She's around me now almost all the time
And if I'm well, you can tell she's been with me now
She's been with me now quite a long, long time
and I feel fine
Every now and then the things
I lean on lose their meaning
And I find myself careening
In the places where I should not let me go, no
She has the power to go where no one else can find me
And to silently remind me
Of the happiness and good times that I know
Just got to know them, it isn't what she's got to say
Or how she thinks or where she's been
To me the words are nice the way they sound
I like to hear them best that way
It doesn't matter what they mean
She says them mostly just to calm me down
And I feel fine anytime she's around me now
She's around me now almost all the time
And if I'm well, you can tell she's been with me now
She's been with me now quite a long, long time, yes,
and I feel fine
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何かがあるんだ、彼女の仕草や
僕を見る視線や僕の名前の呼び方には
この悩ましい世界を忘れさせてくれるようなものが
もし僕がくたびれたり落ち込んだり
くだらないことに悩まされても
彼女はいつだって僕の気持ちを変えてくれるんだ
彼女がそばにいるときは
いつだっていい気分さ
今では彼女はほとんどいつも僕のそばにいる
僕の調子がいいときは、
彼女がそばにいてくれたからだと君にもわかるだろう
彼女はずっと長く僕のそばにいてくれている
だから僕は気分がいいんだ
時々、頼りにしていたものが
意味を失ってしまうことがある
そして僕は言ってはいけない場所へ
ふらふらと突っ込んでいってしまうんだ
彼女だけは他の誰もが見つけられない
僕のいる場所に行ける力を持っている
そして静かに思い出させてくれる
僕が知る幸せや、素敵な時間を
ただわかるようになっただけさ
彼女が何を言うのか、何を考えているか
どこに行っていたのかなんて関係ない
僕には彼女の言葉は
その響きが心地いいんだ
そんな風に聞くのが一番好きなんだ
意味なんてどうでもいい、
彼女はたいてい僕を落ち着かせるために話すんだ
彼女がそばにいるときは
いつだっていい気分さ
今では彼女はほとんどいつも僕のそばにいる
僕の調子がいいときは、
彼女がそばにいてくれたからだと君にもわかるだろう
彼女はずっと長く僕のそばにいてくれている
だから僕は気分がいいんだ (拙訳)
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この曲は、ビートルズが設立したアップル・レコードから1968年にリリースされたジェイムス・テイラーのデビュー・アルバム『ジェイムス・テイラー(James Taylor)』に収録されていました。そのヴァージョンがこちらです。
ボストン出身でノースカロライナ州で育ったジェイムスは学生時代に出会ったギタリストのダニー・コーチマーと一緒に音楽活動を始め、ニューヨークで”フライング・マシーン”と言うバンドを結成しました。しかし、元々精神的な問題を抱えていた彼は薬物にハマっていき、シリアスな中毒症状を起こすまでになり、バンドは空中分解してしまいました。
ソロ・アーティストとして再起を図ろうとした彼はロンドンにわたり、コーチマーの口利きでアップル・レコードのA&R責任者だったピーター・アッシャーにデモを渡しますが、その中に入っていた曲の一つがこの曲でした。アッシャーはポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンにデモを聴かせ、その後オーディションとして実際に彼らの前でこの曲を演奏し、彼らが非常に気に入ったため見事契約を獲得しアルバムを制作することになったそうです。
そして彼は1968年7月から10月にかけて、ビートルズが”ホワイト・アルバム”を制作していたのと同時期に同じトライデント・スタジオでレコーディングをしています。
「スタジオではよく行き来していたよ」とテイラーは振り返る。「彼らが出ていくときに僕が入る感じでね。早めに行って、コントロールルームで彼らの録音や再生を聴いていたこともよくあった」 (The Guardian Mon 17 Feb 2020)
そして、「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves)」が逆にビートルズに”影響”を与えることになります。
”ホワイト・アルバム”制作時にジョージ・ハリスンが書いた曲の出だしのフレーズにこの曲が使われたんです。
それがジョージ・ハリスンの最高傑作との呼び声の高い「サムシング(Something)」です。
ジョージは「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves)」をとても気に入っていたんでしょうね。
Wikipediaによるとデイヴ・トンプソンという人の書いた「Heart of Darkness」という本の中でジェイムスはこう語っているそうです。
「ジョージが意図的にやったとは一瞬たりとも僕は思わなかった。彼が意図的にパクったとは思ってないし、あらゆる音楽は他の音楽から借りたものだ。だから完全に受け流したよ」
またジェイムスは「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves)」のエンディングの「I Feel Fine」はビートルズの同名の曲からとったと認めています。
あらゆる音楽は他の音楽から借りたも(all music is borrowed from other music)という言葉を、彼のような偉大なアーティストの口から聞くと僕はうれしくなります。僕はこれはとても大事なことだと思っているからです。
もちろん、しょせんみんなパクリだから、なんて音楽を卑下するようなことを言いたいわけではありません。
ジョージの「サムシング」は”Something In The Way She Moves”という出だしじゃなかったらこれほどの名曲になっていないように思いますし、「サムシング」の方がかえって「彼女の言葉のやさしい響き」よりもそのフレーズを印象的に使っているとさえ思えます。とても味わい深く意義深い”借用”だなあと感心してしまうんです。
そこで大事なのは、クリエイターとしての”志の高さ”と他のアーティストや作品への”リスペクト”なんだと思います。
ごくたまに、この曲はオレが作ったんだから、オレのものだし、どうしようがオレの勝手だろ、みたいな発言をするアーティストを目にすると、僕はがっかりしてしまいます。そして、自分の作品は他の作品がなければ絶対に生まれなかったということを忘れてほしくないな、と思うんですよね。あらゆる音楽は他の音楽から借りたものなんだ、という言葉は、決して卑下するのではなくて、志とリスペクトを持ちながら肝に銘じるべきことなんじゃないかと。あっすみません、話が脱線してしまいました。。。
さて、ロンドンでデビューを果たしたジェイムスですが再びドラッグに手を出し、1年後にはアップルレコードとの契約を解かれてしまいます。リハビリ施設に入った後、彼はロサンゼルスのローレル・キャニオンに移り住み、活動を再開して1970年にリリースしたアルバム『スウィート・ベイビー・ジェイムス』が大ヒットになり、一躍時の人となるわけです。
そして、1976年に「グレイテスト・ヒッツ」をリリース時にアップルレコード時代の「彼女の言葉のやさしい響き(Something in the Way She Moves)」が権利の問題で使用できなかったため、新たに録音しなおしたのが一番最初に聞いていただいたヴァージョンで、今ではそちらの方が広く定着しています。
最後に『スウィート・ベイビー・ジェイムス』が大ヒットした1970年の暮れに彼がイギリスのBBCでこの曲を演奏している動画がありますので、そちらをぜひ。

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