おはようございます。今日はロバータ・フラックの「愛は面影の中に(The First Time Ever I Saw Your Face)」です。
The first time, ever I saw your face
I thought the sun rose in your eyes
And the moon and the stars
Were the gifts you gave
To the dark, and the endless skies
And the first time, ever I kissed your mouth
I felt the earth move in my hand
Like the trembling heart
Of a captive bird
That was there, at my command
My love
And the first time, ever I lay with you
I felt your heart so close to mine
And I knew our joy
Would fill the earth
And last, 'til the end of time
My love
The first time, ever I saw
Your face,,,
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初めてあなたの顔を見たとき
あなたの瞳に太陽が昇ったと思った
そして月や星たちは
暗く、果てしない空へ
あなたがくれた贈り物だった
初めてあなたの唇に触れたとき
この手の中で地球が揺れるのを感じた
まるで囚われた小鳥の震える鼓動のように
そこにあった 私の思うままに
愛しい人
初めてあなたと横たわったとき
あなたの心がこんなにも近くにあると感じた
そして私は知った
私たちの喜びはこの大地を満たし
人生の終わりまで続くのだと
愛しい人
初めてあなたの顔を見たとき、、 (拙訳)
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ロバータ・フラックは今月の2月24日に亡くなってしまいましたが、彼女が一躍有名になるきっかけになったのがこの曲でした。
オリジナルは1957年にスコットランド出身のフォーク・シンガー、イワン・マッコールが後に彼の三番目の妻となる歌手ペギー・シーガーのために書いたフォーク・ソングでした。この当時、二人は不倫関係(イワンが既婚者)でしたが、彼女は関係を続けることを望まずイギリスを離れていて、ギクシャクした状況だったそうです。そのため、彼女はこの曲を電話で初めて聴いたと言われています。最初にレコーディングしたのは1961年、ボビー・ドブソンという女性シンガーだったようですが、ペギーも1962年にレコード化されています。
ちなみに、イワン・マッコールの「Dirty Old Town」という曲はポーグスにカバーされていて、彼の娘さんはポーグスの「ニューヨークの夢」を歌っていたカーティス・マッコールなんですね。
その後、キングストン・トリオ、ピーター、ポール&マリー、ブラザース・フォー、ゴードン・ライトフッドなど数々のフォーク・アーティストが取り上げる”人気のあるフォーク・ソング”になっていきました。
キングストン・トリオ(1962)
ペギー・シーガーの歌は、譜割り、メロディもロバータのヴァージョンとけっこう違っていて、キングストン・トリオのヴァージョンは少し近くなっています。
ちなみにロバータが慣れ親しんだのは、1963年リリースの黒人ゴスペル・フォーク・デュオのジョー&エディのヴァージョンだったそうです。
ペギー、キングストン・トリオ、ジョー&エディと順番に聴いていくと、ロバータのヴァージョンにどんどん近くなっていっているのがわかります。
彼女の音楽的基盤は幼少期から習ったクラシックと、彼女がピアノを弾いていたバプテスト教会で触れていたゴスペルでした。マヘリア・ジャクソンやサム・クックといった伝説的なアーティストのパフォーマンスにも影響を受けていたいました。
もともと白人のフォークソングだった「愛は面影の中に」は黒人のゴスペルの解釈が加わったことで、スタンダードになったともとらえることができるのかもしれません。
このブログでは1000曲を超えるポップ・ミュージックを取り上げてきましたが、つくづく思うのは、ポップ・ミュージックとは白人と黒人の音楽が混ざり合い化学反応を起こして生まれたものなんだな、ということです。
さて、ここからロバータ・フラックの話になります。彼女は1968年頃はワシントンD.C.の高校で音楽教師をやっていました。彼女はグリークラブの生徒たちにこの「愛は面影の中に」を教え、それと同時にナイトクラブで定期的にこの曲を演奏していました。
その後、彼女はアトランティック・レコードと契約し、1969年2月にデビューアルバム『First Take』のためにこの曲を録音しました。アルバムの全8曲はわずか10時間で録音されたそうです。
「録音の2日前、フラックはデトロイトでの初めての遠征からワシントンD.C.に戻ると、自分の猫が車に轢かれて亡くなっていた。その悲しみが、彼女の歌声に強く反映され、その結果、フラック版は哀愁を帯びた深い感情が込められたものとなった」(eurweb.com. March 3, 2020)
アルバムのプロデューサーのジョエル・ドーンからはテンポを速くして商業的にヒットさせるべきだと提案されたそうですが、彼女は”ヒットしなくても構わない”とこれを拒否したそうです。結果はジョエルの方が正しくこの曲は発売されてから3年間まったく話題にもならなかったのです。
しかし、思わぬ展開が待っていました。
クリント・イーストウッドが自身の監督デビュー作『恐怖のメロディ(Play Misty For Me)』の劇中でこの曲を使用したいとオファーしてきたのです。彼は運転中に偶然この曲を耳にしたそうです。
オファーされたフラックはテンポをあげて録音しなおしたいとイーストウッドに申し出たそうです。ジョエル・ドーンの意見が頭に残っていたのでしょう。しかし、イーストウッドはこのテンポのままがいいと言ったそうです。
イーストウッドはジャズ通として知られていますが、「恐怖のメロディ」では監督だけじゃなくジャズのDJ役を演じていることもあって、映画で使用される音楽のチョイスにはずいぶんこだわっていたようです。
この映画のおかげでこの曲は注目され、レコード会社はアルバムより1分短く編集したシングル・ヴァージョンを1972年にリリースすると全米6週1位、年間チャートでも1位、グラミー賞では「最優秀レコード賞」と「最優秀楽曲賞」を獲得するという破格の大ヒットになり、ロバータは一躍スターの座に躍り出ることになりました。
最後は、2023年に87歳になったペギー・シーガーがこの曲を新たに録音していますのでそちらを。
「イワンは、この曲のメロディーを激しく恋に落ちた人の鼓動を真似て作曲しました。かつてこの歌を歌うとき、私はまるで空を舞う鳥のような気持ちでした。でも今は、この歌にしっかりと根を下ろしているように感じます。それがとても幸せなんです」(CLASH 28 / 03 /2023)

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