おはようございます。今日はルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界(What a Wonderful World)」です。
I see trees of green, red roses too
I see them bloom for me and you
And I think to myself
What a wonderful world
I see skies of blue and clouds of white
The bright blessed days, the dark sacred nights
And I think to myself
What a wonderful world
The colors of the rainbow
So pretty in the sky
Are also on the faces
Of people going by
I see friends shaking hands, saying, "How do you do?"
They're really saying, "I love you"
I hear babies cry, I watch them grow
They'll learn much more
Than I'll ever know
And I think to myself
What a wonderful world
Yes, I think to myself
What a wonderful world
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緑の木々が見える、赤いバラも
花を咲かせている 僕や君のために
そして僕は心の中で思うんだ
なんて素晴らしい世界だろうって
青い空と白い雲が見える
明るく祝福された日々、暗く神聖な夜
そして僕は心の中で思うんだ
なんて素晴らしい世界だろうって
虹の色が
きれいに空に浮かび
通り過ぎる人々の顔にも映っている
友達同士が握手して、「元気?」と挨拶を交わしている
でも本当はこう言っているのさ「愛している」と
赤ん坊の泣き声が聞こえる
僕は彼らの成長を見守る
彼らはたくさん学ぶだろう
僕が知り得るよりもずっと
そして心の中で思うんだ
なんて素晴らしい世界だろうって
そうさ、心の中で思うんだ
なんて素晴らしい世界だろうって (拙訳)
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ルイ・アームストロングはトランペッターにして歌手。ジャズ史上最高のアーティストの一人であるだけでなく、アメリカのポピュラー音楽史に偉大な足跡を残したレジェンドです。彼の生まれ故郷であるニューオリンズの国際空港は”ルイ・アームストロング国際空港”と名前を変えていて、アメリカの国際空港に人名がつくのはジョン・F・ケネディに次いで二人目だということで、それくらいの偉人なんですね。
日本では2年前(2022)のNHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で彼の曲が大きく注目されましたね。
「On The Sunny Side Of The Street(明るい表通りで)」
「カムカムエヴリバディ」では当時の日本の文化や世相をある程度リアルに描いていたはずですから、彼はアメリカのジャズの魅力を日本人に伝えたアーティストの中でも象徴的な存在だったんですね。アメリカに限らず日本でも人気があったわけです。歌声も含めて、キャラの魅力もすごくあったのでしょう。
ルイ・アームストロングの面白いところは、大衆音楽の主流がジャズからポップ、ロックへと移っていった1960年代に、自身の最大級のヒットソングを出しているということですね。 彼はその頃すでに60代だったのにです。
その一つが「ハロー・ドーリー!」。1964年のこの当時、ビートルズがアメリカでとんでもないレベルのセンセーションを巻き起こしていて、2月1日に「抱きしめたい」が全米1位になって7週間その座を守って以降、「シー・ラヴズ・ユー」が2週、「キャント・バイ・ミー・ラヴ」が5週、合計14週間連続でビートルズの曲が1位になっていたんですね。そして、その記録にストップをかけたのが、大人気ミュージカルの曲だった彼の「ハロー・ドーリー!」だったんです。
飛ぶ鳥を落とす勢いのイギリスの若いミュージシャンの快進撃を止めたのが、当時63歳のアメリカ音楽のレジェンドだったというのが面白いですね。
そしてもう一つの代表曲、そして現在では彼のトレードマークになっているのが「この素晴らしき世界」です。
この曲の誕生には、当時のアメリカ社会の状況が大きく影響していました。当時は公民権運動やベトナム戦争といった社会問題をめぐって、激しく、時に暴力的な闘争によって、国家が分断されていっていたんですね。
そんな中でプロデューサーのボブ・シールは、今この国にはアームストロングにしか届けられない癒しのメッセージが必要だと感じてソングライターのジョージ・デイヴィッド・ワイスに曲を作るようリクエストしました。
シールはこう語っています。「私たちは、この不滅のミュージシャンでありパフォーマーであるルイ・アームストロングに、彼にしかできない方法で伝えてほしかったのです。世界は本当に素晴らしいなんだと。たくさんの愛とそれを分かち合うことで、お互い、日々それを可能にできるんだって」(Louis Armstrong House Musium August 29, 2017)
ジョージ・デイヴィッド・ワイスはアレンジャー、作曲家でもありますが、ジャズ・スタンダード「バードランドの子守唄(Lullaby of Birdland)」の歌詞も手掛けていて、エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない(Can't Help Falling In Love)」もプロデューサー、ヒューゴ&ルイージとの共作になっていますがベースの歌詞とメロディはどうやら彼が作っているようです。
「この素晴らしき世界」もボブ・シールと彼の共作となっていますが、ベースとなる歌詞と曲は彼が作り、ボブが修正を加え他のではないかと僕は考えています。
そして、この歌詞を読んだアームストロングは、この曲を歌うことを即決したそうです。
「『この素晴らしき世界』の中には、ニューヨークのコロナ地区にある自分の住むエリアを思い出させるものがたくさんあるんだ。ルシールと僕は結婚して以来ずっと、その同じ通りに住んでる。そして、みんな自分たちの家をきちんと整えて暮らしていて、まるで大きな家族みたいなんだ。僕はその通りで三世代を見守ってきた。子どもたちや孫たちが成長して、またサッチモおじさんとルシールおばさんに会いに帰ってくるんだよ。だから僕はこう歌えるんだ。『赤ん坊の泣き声が聞こえる/僕は彼ら成長を見守る/彼らはたくさん学ぶだろう。僕が知り得るよりもずっと』ってね」(Louis Armstrong House Musium August 29, 2017)
しかし、この曲は「ハロー・ドーリー!」とは対照的に発売当時アメリカでは全く売れなかったんです。
それには理由がありました。
アームストロングはABCレコードと契約したばかりで、社長のラリー・ニュートンは「ハロー・ドーリー!」みたいなノリのいい曲を望んでいて、「この素晴らしき世界」のようなスローな曲はダメだと考えたようなんです。しかも、彼はアームストロングのレコーディング現場まで行って、録音自体やめさせようとしたそうです。しかし、ボブ・シールたちが彼をスタジオから締め出して、録音を強行したんですね。
それを根に持ったラリーはレコーディングしても曲を発売せずほったらかしにしていたと言われています。しかし、ABCレコードと提携しているイギリスのEMIがイギリスで発売することにします。するとイギリスでNO.1ヒットになったんです。それでも頑ななラリーはアメリカでリリースしてもいっさいプロモーションはせず、アメリカでは1000枚しか売れなかったと言われています。
このエピソードから思い出すのは、このブログでも以前に書きましたが、「ムーン・リバー」を”the fucking song”と呼んでボツにしようとしたパラマウント映画の制作トップのマーティ・ラッキンと、「虹の彼方に」を” the damn song”と評して映画「オズの魔法使い」で歌うシーンをカットしようとした当時のMGMのトップ、ルイス・B・メイヤーです。
これほどの超名曲でも、ちっともいいと思わなかった人間はいるわけですね〜(苦笑。しかも、みんなエンタメ会社のお偉いさん(苦笑。こういうせめぎ合いは業界の常ではありますし、ビジネスですから売る側の意見は大事です。ただ、えてして、売る側の意見というのは今の時点で流行っているものを基準にしてしまうことが圧倒的に多いんです。音楽業界を見渡せば大量の二番煎じ、三番煎じで主な売り上げが構成されているのも確かです。しかし、二番煎じ、三番煎じでは未来は作れないんですよね。今の時代になくても、出す意味があるもの、次の二番煎じを生み出せそうな”新茶”を勇気を出して世に出すアクションはいつの世でも必要だと僕は思います。
「この素晴らしき世界」「ムーン・リバー」「虹の彼方に」といった名曲がこの世に発表されずに終わった可能性があったという事実には驚かされますし、上司に歯向かって押し切ったクリエイター、”現場の人たち”の勇気に感謝の念さえ感じます。
ですので、音楽やエンタメの制作現場に従事するみなさん、今制作しているものに確かな手応えを感じているなら、たとえ上が反対しても戦ってみてください!
つい、話が脱線してしまいましたが、この曲がアメリカで再評価されるきっかけになったのが、1987年の映画『グッドモーニング・ベトナム』で使われたことでした。監督のバリー・レヴィンソンの選曲だったそうですが、この曲はアメリカでまったく売れなかった頃も、ベトナム戦争の兵士たちからは人気だったそうです。
こちらが映画のシーン。
この映画のおかげでこの曲は全米32位まで上がりました。発売から20年経って初めてチャートに入ったんですね。
最後にルイ・アームストロングの言葉をご紹介します。
” 君たち若い人たちの中には、私にこう言ってくる人もいるんだ。
「ねえ、おじさん、“素晴らしい世界”なんてどういう意味なんだい?世界中で戦争が起きてるじゃないか。それが素晴らしいっていうの?それに、飢餓や環境汚染だってあるじゃないか?それだって素晴らしいとは言えないよね」って。
まあ、ちょっとだけこのおじさんの話を聞いてみてくれよ。
私にはこう見えるんだ、悪いのは世界そのものじゃなくて、私たちが世界に対してやっていることなんだって。私が言いたいのは、ただこういうことさ。見てごらん、この世界がどれだけ素晴らしいものになり得るか、私たちがチャンスを与えさえすればね。
愛なんだ、愛。それが秘訣さ。たくさんの人がもっとお互い愛し合えば、もっとたくさんの問題が解決するだろう。そうしたら、この世界はワクワクした楽しいものなるだろう。それがこのおいぼれが言い続けていることなんだよ"
– ルイ・アームストロング
これは1970年に『ルイ・アームストロング・アンド・ヒズ・フレンズ』というアルバムでこの曲が再録された際に、曲の冒頭で彼が語った言葉なんです。それを最後にお聴きください。それではみなさん、良いお年を。

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