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「耳をうずめて」キリンジ

 おはようございます。今日はキリンジの「耳をうずめて」です。


Mimiwouzumete (2018 Remaster)

 1999年に発売された彼らのセカンド・アルバム『47'45''』に収められていた楽曲です。

  1996年に堀込高樹と泰行の兄弟で結成され、1997年5月にインディーズ・デビューしています。以前にこのブログで書きましたが、僕がレコード会社に在籍していた1997年の初め頃彼らのデモ・テープを聴いて、ものすごく良かったことをおぼえています。(テープはあるディレクターに送られて来たもので、興味を持たなかった彼が会社の新人発掘部門にテープを渡し、それから僕が聴いたので、時間は結構経ってしまったため、僕はアプローチしたくて動いたのですが、時すでに遅しでした、、)。「堀込兄弟」というアーティスト名でモノクロのレトロなアー写が二枚入っていました。曲はインディーズのデビュー作「風を撃て」、あと「野良の虹」が入っていたと記憶しています。

 時期的には、ファッショナブルな渋谷系ブームが終わりかけていてころです。彼らには渋谷系のアーティストの洗練された音楽とも共通項はありながら、もう少し自由でレイドバックしていて、洗練されたメロディーやサウンドにあえて”古い”日本語を駆使した歌詞を合わせる手法がとても新鮮でした。

 

 堀込兄弟はそれぞれが曲を書きますが、兄の高樹氏のほうが緻密に確信犯的に作り込む傾向が強く、弟の泰行氏の方はもう少し感覚的でラフな感じがします。

 この「耳をうずめて」は高樹氏の作品。

 この時期の曲作りについて彼はこう語っています。

橋本治さんの本とか阿久悠さんの詞はわりと勉強するような気持ちで読んだり聴いたりしてたけどね、ちゃんと聴いた日本語の歌って歌謡曲を除けば、シュガーベイブはっぴいえんどくらいだったから」

 

「『恋の花詞集』(橋本治)は、まだ歌詞の書き方ってものがよくわかんなかった頃に、一種のハウ・トゥ本みたいな感じで読んでたんだ。たとえば「早春賦」みたいな古い流行歌が、どういう時代背景や作者の想いを込めて作られたのか・・・みたいなことを紐解いているのね。だからハウ・トゥといっても詞の書き方が直接的に書かれている本じゃないんだけど」     (「自棄っぱちオプティミスト」)

   1980年代から90年代の日本のポップスを刷り込まれるようにして育ってしまったソングライターたちは、無意識にそういった曲の文体を土台にしながら、それを自分流に脚色するようなスタイルを作ることが普通ですが、彼の場合は刷り込みが薄かったのか、あえて意図的に拒否したのかわかりませんが、一から文体を作ったわけですね。

 デビュー曲「風を撃て」を書いた泰行氏のほうも、図書館に行って辞書を操ったりしながら時間をかけて歌詞を書いた、と当時を振り返って語っていますから、二人とも流行の日本のポップスの常套句を念入りに避けながら、古い言葉を新鮮に使おうとしていたのかもしれません。

 ちなみに、今の日本で若い子たちが聴くアニソンやボカロの曲は、古い日本語を過剰なまでに使うのが特徴なので、キリンジはその先駆けじゃないか、などとも一瞬思ったのですが、決定的に違うのは、アニソンやボカロの曲はひたすらリズムと語呂、そして漢字としての”ルックス”を重視して使っているように思えますが、キリンジはその言葉が持つ仄かな情感(センチメンタルなだけじゃなく、いろんな種類の)、侘び寂びのようなものにこだわっているような気がして、アプローチ自体はまったく違っているようにも思います。

 この「耳をうずめて」も、作者が意図していることははっきりとはわかりません。

 しかし、主人公の内省が、知らないうちに聴き手の内省と共鳴してゆくような感覚があります。

 ハッキリとわかりやすく伝えなくても、聴き手の心に何か共振させることができるというのも、音楽の妙味だなあなどと思ったりします。

 そして、

  ”僕は音楽に愛されてる、そう思うのか?”

   というフレーズがやはり肝でしょう。そんな投げかけをした歌詞は長い日本のポップスの歴史にはなかったでしょう。

 不遜なフレーズのようにも思えますが、音楽の偉大さとそれの対峙する自分の卑小さを十分に認識しないと出てこない言葉でもあるように僕は思います。

 そして歌の中の使い方によって、いくらでも誤解されそうなフレーズでもあります。上っ面でしか届かない可能性も大きい。

 そこを、主人公が鬱で冷ややかな気持ちで、自問するという設定にしたことで、このフレーズが、冗談でも皮肉でも真剣な苦悩でもない感触の言葉になっています。心に残ります。

 僕はアーティストじゃありませんが、30年以上音楽業界の片隅で生きて来ているので、このフレーズが突然浮かんでくることがあります。

 まあ、音楽に愛されるってことはないでしょうが、音楽の神様に怒られそうな行いはしないでおこう、というのはこの道に進んだ時からずっと思っていることではあります(苦笑。

 最後にこの曲のライヴ・ヴァージョンを。僕は、なんか昔のキャロル・キングを聴いているような感覚になりました。

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