おはようございます。今日はディオンヌ・ワーウィックの「小さな願い」。愛する人のことを思って、日常の何気ないタイミングで少し祈る、という歌で、バート・バカラックとハル・デヴィッドの作品です。
Dionne Warwick I Say A Little Prayer 1967 Original Million Seller
The moment I wake up
Before I put on my makeup
I say a little prayer for you
While combing my hair now
And wonder what dress to wear now
I say a little prayer for you
Forever, forever, you'll stay in my heart
And I will love you
Forever, and ever, we never will part
Oh, how I'll love you
Together, together, that's how it must be
To live without you
Would only mean heartbreak for me
I run for the bus, dear
While riding I think of us, dear
I say a little prayer for you
At work, I just take time
And all through my coffee break-time
I say a little prayer for you
Forever, forever, you'll stay in my heart
And I will love you
Forever, and ever, we never will part
Oh, how I'll love you
Together, together, that's how it must be
To live without you
Would only mean heartbreak for me
I say a little prayer for you
I say a little prayer for you
Forever, forever, you'll stay in my heart
And I will love you
Forever, and ever, we never will part
Oh, how I'll love you
Together, together, that's how it must be
To live without you
Would only mean heartbreak for me
My darling, believe me
For me there is no one but you
Please love me, too
I'm in love with you
Answer my prayer
Say you love me, too
Why don't you answer my prayer, yeah
You know, every day I say a little prayer
I said I say, I say a little prayer
Why don't you just answer my prayer
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”朝目覚めたとき お化粧する前に
あなたのためにそっと祈るの
髪をとかしながら
どのドレスを着ようかと考えている時も
あなたのために小さく祈るの
*いつまでも いつまでも
あなたが私の心にいますように
そしてずっと愛し続けます、と
いつまでも 決して離れない 愛し続けるの
一緒に 一緒に そうじゃなくちゃダメ
あなたなしで生きるなんて
この胸が張り裂けてしまうだけ
バスに向かって走っているときも
バスの中で二人のことを考えている時も
あなたのために小さく祈るの
仕事の手を止めて
コーヒー・ブレイクする時もずっと
あなたのためにそっと祈るの
*繰り返し
愛しい人 私を信じて
私にはあなたしかいないの
私のことも愛して 愛しているから
この祈りにこたえて
そして、愛してるって言って
どうしてこたえてくれないの
毎日あなたのために祈っているのよ” (拙訳)
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ディオンヌ・ワーウィックは、バカラックがドリフターズに「メキシカン・ディヴォース」という曲を書いてレコーディングした時に、そのバックアップ・シンガーの一人として彼に初めて出会っています。
彼女と妹のディーディー、おばのシシー・ヒューストン(ホイットニーのお母さん)、いとこのマーナ・スミスの4人だったそうですが、それぞれ実力は甲乙つけがたかったそうですが、ディオンヌには特別な気品と優雅さがあって、スターになれる存在だとバカラックは思ったそうです。
その後、ディオンヌのほうから一緒にデモを作りたいと連絡をして、彼らは一緒に仕事をするようになります。
そして最初のシングルが「ドント・メイク・ミー・オーヴァー」です。
8分の12拍子から8分の6拍子に移ったり、1オクターヴと6度の音域があるこの曲を彼女は何の苦もなく歌ったそうです。また彼女は音楽大学で音楽教育とピアノを学んでいて譜面にも強く、そういうシンガーは当時はめずらしく、バカラックにとってとてもやりやすかったようです。
「ディオンヌは高い音も低い音も歌えた。力強く、朗々と歌うこともできれば、そっと、優しく歌うこともできた。音楽的な関係が深化していくにつれて、わたしは彼女のポテンシャルを知り、より多くの挑戦や冒険が可能になることに気づいた。彼女の声は、ボトルの中の船が持つ繊細さ神秘性をすべて兼ね備えたものだった。」 (「バート・バカラック自伝 ザ・ルック・オブ・ラヴ」)
彼女はバカラックの曲をメインにリリースを続けこの「小さな願い」は19枚目のシングルにして、初のミリオンセラー(全米4位)になりました。
そして、その翌年この曲をカバーしてヒットさせたのがアレサ・フランクリンです。
アレサがバカラックが書いたディオンヌの曲をカバーするのはこれが2回目で、以前に「Walk on By」という曲をやっています。
Aretha Franklin- Walk On By (Dionne Warwick)
昨日のブログで書きましたが、この頃のアレサはコロンビア・レコードに在籍していた、いわゆる彼女の”覚醒前”なので歌もバランスよくコンサバティブにまとめられている印象があります。ディオンヌのオリジナルに準じた仕上がりだとも言っていいでしょう。
しかし、今回の「小さな願い」はアトランティック・レコード移籍後の”覚醒した”アレサです。完全に自分のスタイル全開でやっているんですよね。
アレサとディオンヌとの大きな違いは、まず、アレサがコーラスとの掛け合いで構成していることでしょう。コーラスを担当しているのは女性コーラス隊、スウィート・インスピレーションズ。
実は彼女たちは、バカラックが書いたドリフターズの曲のコーラスをやっていたバックアップ・シンガーの集まりでディオンヌもかつて在籍していた。この頃には当然ディオンヌも、そして妹のディーディーもやめてしまっていましたが、シシー・ヒューストンとマーナ・スミスは残っていました。
ディオンヌのかつての同僚たちが、アレサのヴァージョンで大きくフィーチャーされているわけですから、ディオンヌの胸の内も穏やかではなかったかもしれません。
さて、アレサとスウィート・インスピレーションの掛け合いから感じるのはやっぱり”ゴスペル感”ですよね。
アレサは牧師の父親とゴスペルシンガーの母親の間に生まれ、幼いころからゴスペルを歌い続けることで鍛えられたシンガーです。その強みが効果的に演出されているんですね。
しかも、”Prayer”という神への”お祈り”を指す言葉を、男女間の”願い事”として使っているのが面白みでもあるので、アレサは意図的にゴスペル感を出したのでしょう。
それに対してディオンヌのヴァージョンは、あくまでもラヴ・ソングとして完結している感じがします。
髪をとかしながら、とかコーヒーを飲みながら、しているんですから、”祈り”というより”願い”に近いですよね。手を合わせたりしているわけじゃないですし。
日本語のタイトルも「小さな祈り」じゃなく「小さな願い」としたのは正解だと僕は思います。ただ、日本語だと”念じている”が一番近い気もしますが(苦笑。
最後にディオンヌがアドリブ的に歌うフレーズ
"Why don't you answer my prayer? You know, every day I say a little prayer"
(どうして私の祈りにこたえてくれないの 毎日あなたのために祈っているのよ)
も女性の切ない心情が出ています。
しかし、アレサはこのくだりはカットしていて、それも二人のヴァージョンの違いを鮮明にするポイントだと思います。いろいろ僕なりに考えた結果、ディオンヌが”切なく願っている”のに対して、アレサは”けっこう強く祈っている”気がするんですよね。。。
そう考えると、ディオンヌは「小さな願い」でも、アレサのヴァージョンは「小さな祈り」かなあ、なんて思います。あくまでも僕の私見ですが、、。
ともかくポップ・ミュージック史上でも双璧と呼べる女性シンガーが同じ曲を同じ時期にヒットさせ、それを聴き比べできるのは貴重なことだと思います。
ただし、いろいろな音楽誌で史上最高のシンガーのランキングで1位にランクされることが多く、最低でもベスト3には入っているアレサに比べて、ディオンヌの評価はずいぶん低いようです。
アレサのようにゴスペル、R&B、ブルースと黒人音楽のルーツがはっきり見えるわけでもなく、圧倒的なパワーがあるわけでもないので仕方がないこととは思いますが、バカラック作品のようなとてもハードルの高い曲を難なくさらっと、しかも気品を持って歌える彼女の技能というのは実に稀有なものです。
実際、彼女のようなスタイルのシンガーは他に誰も思い浮かびません。ソウル系ではなく、かえって、シナトラやナット・キング・コールの上手さに近いようにも僕には思えます。
<追記>
2022年3月4日にアップされた『American Songwriter』というwebサイトで、ディオンヌが「小さな願い」の歌詞についてこう語っています。
「『小さな願い』は本当に歌う価値のある曲でした。この曲が書かれたのは、ベトナム戦争の時期でした。ハル・デヴィッドは、あの戦争に送り出された若者たちのことを本当に真剣に歌にしていたのだと思います。そして、私はこう言わなければなりません—あれは無意味な戦争でした。まさに子ども同然の18歳、19歳、20歳の若者たちが、あんな馬鹿げた戦争で戦っていたのです。この歌は、彼らのことがどれほど恋しいか、どれほど愛しているか、どれほど彼らの無事を祈っているか、そして一刻も早く帰ってきてほしいと願っているかを伝える一つの方法だったのです。」
ハル・デヴィッド本人のコメントは見つけることはできませんでしたが、恋人が戦地にいるというという設定であらためてこの曲を聴き直すとまた印象が変わり、深く感じるものがあるように思います。
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