反差別主義なのは当たり前のことだと思っていたので、特に明言したことなかったのですが、私は、すべて人は個人として尊重され、法の下に平等で、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において差別されないのが当然だと考えていますし、政治はこの憲法の精神を社会において実現するためにあると信じています。
この態度に関して、「なぜ」と問われるのはとても残念です。ほかに選択肢なんてあるのでしょうか。「なぜ」と問う人は、ご自分が差別される社会に生きていることを受け入れておられるのでしょうから、私はその方々にまず言いたいです。あなた方にも人権はあります。この社会において幸福を追求し、生命をまっとうする権利があります。人の足をひっぱってる暇があったら、自分の幸福を追求してください。
もう少し、実感に即して言うと、こういうことになります。
差別的な社会で、差別的な待遇に甘んじ、自分なんてこんなもんだろという構えで生きていると、当然のことながら他人を差別するようになります。差別は暴力を呼びますので、最終的にはあなたが隣人の身心財産その他を傷つけることになります。命にかかわることが起こるでしょう。そのずっと手前に、他人をその「人種、信条、性別、社会的身分または門地により」ひとくくりにして、心ない言葉を浴びせ、嫌な思いをさせる、傷つけるという段階があります。先入観から勝手なこと、真偽不明のことをぺらぺらと言ってしまうとか。偏見から事実誤認を重ねて平気でデマをまいてしまうとか。ご自分のそうした間違いが相手の反応により明らかになったとき、あなたはその訴えを無視するかもしれません。また、「考えすぎ」とか「冗談だよ」とか言って自分の暴力を相手の責任にすり替えるかもしれません。ご自分の経験に即して考えてみてほしいのですけど、そうしたことの積み重ねで、人間ってふっと、「あ、もう、だめだ」というときがくるんですよ。ぷつっと何かが切れてしまう。その最後の一手があなたの、自動的になされた、本質的にはどうでもいい、猥雑な、それ自体は取るに足りない、論拠もなければ論理性もない「べろべろばー」的なものだったとしても、そういったことに日々遭わされている方からすれば「溺れているときに打たれた最後の一手」になります。ある人が「もうだめだ」と斃れてしまった。最後の一手をくわえたのは、あなただった。それは刑事事件にはならないかもしれないけれど、罪は罪です。ご自分で認めなくても、残念ながら、もう取り返しがつきません。その道は罪人の道です。
そんなわけで、私は、だれにも加害者になってほしくないから、差別に反対しています。津久井やまゆり園の事件から 9 年です。あれは偏見から始まった差別意識が政治を通じて承認され、最終的に暴力行為へと至ってしまった酷い事件でした。犯人は優生思想にとらわれて「憎悪のピラミッド」をのぼりつめてしまったのです。
先日の参院選では、外国籍の方々に対する「こわい」という先入観が強化され、その先入観にもとづいて法整備をすべきだというスピーチが公道をかけめぐりました。こうなってくると「こわい」のは海外から見える方々ではなく、日本人の偏見であり、差別意識であり、それを強化する日本の政治です。
たとえば、技能実習生受け入れの問題で実際にこわいのは受け入れる側、日本人の暴力です。
差別は好悪や思いやりの問題ではなく、ある法が A には適用されるが B には適用されないという構造の問題です。同一の労働をしているときに、A と B で待遇が違ったら、それは差別的待遇だということになります。こうした、現実にある差別的な状況をひとつひとつ改善していくのが政治の仕事で、市民にはその改善を促す権利と義務があります。
国籍や経済状態で差別することが黙認されている状況では、日本人が外国籍の方に暴力をふるう問題は起こり続けるでしょうし、これが公的に解決できなければ将来に大きな禍根を残すでしょう。十年後、今よりさらに経済力と発言力の落ちた日本社会に働きにきてくれる人はいるでしょうか。たった今、日本で同胞がひどい待遇に遭っているという方が、どういう視線を今後日本に向けていくでしょうか。
日本には包括的な差別禁止法もなく、人権を守るための独立機関もありません。人権について学ぶ機会は個人の努力に委ねられています。人権後進国です。そんな中で、否応なく、「人種、信条、性別、社会的身分または門地」のばらばらな個人同士が集まって暮らしています。「こわい」のは人じゃなく、その状況です。
自分にはその命を生かす権利があり、幸福を追求する権利がある。そして、それは隣人も同じだ、という前提に立たない限りは、幸福を目指すこともできません。「みんな」と呼びかけるのは性に合わないのですが、ここはどうしても「みんな」と言わなければ意味がありません。私は、みんなと一緒に幸福を目指したいのです。
