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2025 年 3 月は慌ただしかった

 正確に言うと、2 月に 2 月のスケール(日数が少ない)では受けとめきれないことがあって、その余波で 3 月が後手後手になった、という感じでしょうか。3 月、見た映画はこちら。

 大ヒット上映中の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』、せめてもう一回見たいなと思っていたところに、未公開映像が公開されました。それをきっかけに二回目を見ることができて、大満足です。当日は突然の雪。低気圧。「寝ちゃったらどうしよう」と映画館のふかふかシートに身を埋めました。それで「これじゃ、寝ちゃってもしょうがないな」と覚悟(?)したところに『九龍城砦』が始まり、そのとたん、体調改善、ぐんぐん元気になり、無事、最後までどきどきはらはらと過ごしました。

雪が植物にふきつけているところを撮った写真

そのころ、東京に降っていた雪

 あの、痛ましい死にみまわれた女性の子の姿が印象的です。見ている間ずっと「この子ここでどうするんだろう」「今、このとき、あの子、どうしているんだろう」「これからあの子、どうなるんだろう」と気になっていました。そういう風に思わせる仕組みは映画の側にあると思います。私がかつて小さな女の子だったからというだけではなく、子ども達への視点は作劇の水準で繊細に組み込まれていました。龍捲風が立ち去る人として人々を見ていることが、外からやってくる陳洛軍を間にはさんで、子ども達のこれからにつながっていました。凧が重要な役割を演じるあの世界で、凧と風はつねに子ども達とともにありました。

 と、このようにぼ〜っと『九龍城砦』のことを思い出していたら、3 月 22 日、朝日新聞谷垣健治のインタビューが掲載されました。その中で、香港映画をこれからどう継承していくかと聞かれて「『継承』とか全然考えてないです」と答えていたのが印象に残りました。この、上や外から見ていない、中にいて動き続けている人の強さ。

継承というのは滅びゆく伝統芸能に使われる言葉じゃないですか。映画ってもっと野蛮なメディアなので、守るよりは突破していく方が強い。

(2025 年 3 月 22 日朝日新聞土曜版インタビューより)

 読書はこんな感じでした。

  • 湯沢質幸『日本人は漢文をどう読んだか 直読から訓読へ』
  • 『蝸牛俳句文庫4 前田普羅』岡田日郎編著
  • 『ドラマ・文学・K-POPがもっとわかる 今さら聞けない現代韓国の超基本』朝日新聞出版編著
  • 杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』*1
  • 鈴木結生『ゲーテはすべてを言った』
  • 若竹七海『まぐさ桶の犬』
  • 王谷晶『他人屋のゆうれい』

 『ドラマ・文学・K-POPがもっとわかる 今さら聞けない現代韓国の超基本』は想像したより読み応えがあって、読み出したら止まりませんでした。これを読んでから『元カレは天才詐欺師〜38師機動隊〜』を見たので、あ、そうか、そうかそうかということがありました。

 若竹七海の新作は葉村晶シリーズ最新版。

books.bunshun.jp

 まじめで腕はいいが、いつもちょうどいいところにちょうどいい感じでいてしまうため、悪い奴に利用されてしまう葉村晶が帰ってきました。

 このシリーズ、大好きなので非常に楽しみにしていたのですが、今回は葉村晶の不運さが輪を掛けていて、かつ、更年期突入プラス歯痛とほんと大変な目に遭います。大変すぎる。まわりの人々の図々しさも輪を掛けていて、どいつもこいつもほんとうんざり。

 葉村晶が会う人会う人になめられて、押しつけられて、利用されて、ほんとにしんどかったです。

 そんな私の心にすーっと入り込んだのが王谷晶の新作『他人屋のゆうれい』でした。

publications.asahi.com

 派遣のテレオペとして働く主人公は、急死した伯父の家の片付けと引き継ぎを押しつけられます。伯父は変わり者で、ほとんど親戚づきあいをせず、主人公にとっては謎の人物。その伯父が残した部屋と、不思議な荷物と、日記、人間関係、そして幽霊。主人公は風邪をひいたり、向かいで書店を経営する男をいけすかないと思ったり、どたばたしながら伯父の残したものと生きていくのでした。

 かなり好きでした。

 主人公の受け入れ方も、ケリの付け方も、そして最後の一言も。

 このところ、映画を見返していて、自分自身を不安に思ったことが二回ありました。一回目は『インサイド・マン』で主人公の刑事と潜伏していた強盗のリーダーが銀行ですれ違う場面。二人がすれ違うとき、ぶつかるのですが、これがかなり痛い感じに、大きな衝撃をもってぶつかるのです。見ていてひやっとするくらい。でもぶつかられた刑事は「あ、失敬」て感じで特に怒るでもなく、相手が無言で立ち去るので、気にするほどでもなくちょっとそっちを見るのです。特に怒りや苛立ちもなく、また、「なんだろ、あの人」と気にするというほどでもなく、ほんとに単に生理的な反応として、相手をちょっと見る。特に何にも考えていない。そういう場面です。私は「この人、これで怒らないんだ」と意外に思ってしまったのです。二回目は『不思議の国の数学者』で、主人公の脱北者が逃走しようとする場面。駅の券売機の前で、自分は逃げていいのかと主人公が逡巡する場面があります。周囲の人は彼が券売機の前でじっとしているので、心配そうに見ています。「アジョシ(おじさん)、買わないんですか?」と後ろから若い人が話しかけます。ここでも私は、周囲の人が怒り出さないことを意外に思いました。

 私、トキシック擦れしちゃってるんだと思います。

 とんでもない暴言や暴行、いじめ、信じられないような執拗さで行われる圧倒的な加害、そんなものに神経が摩耗していて、ごくふつうの、人と人のやりとりにおいてすら、いつ相手が怒り出すかとびくびくしている。そういう状態に自分があるんだなあと、映画を見ていて気づいてしまい、気をつけないと、と考えているところです。

 そういう、有害なものが日常に入り込んでいて、当たり前にあるという感覚に葉村晶の世界も侵食されてる気がする。新作は文章がよくて、葉村晶がいい人だから最後まで読めたけど、なんかどうも「有害擦れ」みたいなものを感じました。

 王谷晶の新作はともすればそうなってしまいそうな作家が、いったん、しっかりとかがみ込んで、構えを立て直している感じがして、ともに生き抜いていく諸々のものへの愛を感じました。

 それでは最後に、私の三大好物(べろべろしたもの篇)を公開しておわります。

ゆばのおさしみ

にこごり(写真はあなごのにこごり)

牡蠣(写真は蒸し焼きした牡蠣)

🌸 おしまい 🌸

*1:4/6 追記。「なんかほかにも読んだ気がするんだけど、忘れちゃったな」と思ってました。すごく凝ったしかけのある本で、気づいたときはびっくりしたし「なんでこんなことを」と思いました。とにかくびっくりしたのでびっくりしたい人にはネタバレに遭う前におすすめ。




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