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伊勢物語 五十九段

五十九

 むかしのこと。

 男は都のことをどう思ったのだろうか、東山(ひむがしやま)に住もうと思い入(い)って、

  住みわびぬ今はかぎりと山里に身をかくすべき宿求めてん

(暮らしていけない

 もうこれでおしまいだ

 山里に身を隠せるすみかを探したい

 と詠んだ。

 そうこうするうちに、病気がひどくなり、今にも死に入(い)ってしまいそうになったから、顔に水をかけるなどしたら、息を吹き返し、

  わがうへに露ぞおくなる天の河門(と)わたる舟の櫂(かい)のしづくか

(私の顔に露が降りたそうだ

 天の河の河門をわたる舟の櫂の雫だろうか

 と言って、息を吹き返した。

 この男のことを「今にも死にそう」と思って心配して「おもてに水そそきなど」した人は誰なのでしょう。男に仕えていた人なのでしょうけど、この人がいなければ男はどうしようもないわけだから、主語くらい書いてください、と近代語圏から自分は思います。「わがうへに」の歌はこの人に聞かせたんじゃないの?

 この、仕えている人が寝ている男の顔に水をかけたら、当の本人は「私の顔に露が降りているそうだよ。これはきっと、天の川の川門(=川の狭くなったところ)を渡る舟の櫂からこぼれた雫だね」などと言えるわけだから、「死に入りたりければ」なんて言ってたわりに元気じゃん? と思います。初読では。

 冒頭の「むかし、男、京をいかが思ひけむ、東山にすまむと思ひ入りて」からは、九段の冒頭「その男、身をえうなき物に思ひなして、京にはあらじ、あづまの方に住むべき国求めにとて行きけり」を連想できます。九段のころ、男は「オレは京に無用」と言って、友だちと連れだって東国に住む場所を探し歩き、行く先々で女性にちょっかいをだし、最終的には「陸奥の国」にたどりつき、ろくでもないことを言っていた。

 あの行程と比較するに、この五十九段の男、行くのは東山止まりで、大分元気がありません。男も年を取ったようです。東山は、賀茂川の東。京の都は二つの川に挟まれていますが、その東側の方、賀茂川周辺の丘陵地が東山です。『源氏物語』で言うと、主人公の愛人、夕顔が埋葬されるのが東山。景勝地ではありますが、仏寺が点在する以外、人家は希で、修行したり、静養したりする場所です。『更級日記』では、菅原孝標一家が一時期東山に住んでいたと書かれています。菅原孝標の任官のあてがはずれた後の話で、「さるべきゆゑありて、東山なる所へうつろふ」と始まると、「大変だったろうな」と思います。そこには「念仏する僧の暁にぬかづく音のたふとく聞こゆれば、戸をおしあけたれば、ほのぼのと明けゆく山ぎは、こぐらき梢ども霧(き)りわたりて……」とあり、東山の雰囲気を想像できます。

 九段では物理的に、空間的に京の都から出ていった男、この五十九段では精神的に出ていくと言ったらいいのか、川の向こうの信仰の世界に越境します。遠さの質が変わりました。そして、なにがどうしたかわからないけど、「ものいたく病みて」、死にかけたような状態になる。そんなわけで、「思ひ入(い)(=思い込む)」「死に入(い)(=死にそうな状態になる)」の「入る」の繰り返しは「山に入(い)る」と係っていそうなので、訳でもそのままにしました。

 こういう風に、似たような図式の話を時折挟んで、男に流れる時間を表現する『伊勢物語』です。

 「わがうへに露ぞおくなる天の河門わたる舟の櫂のしづくか」は『古今和歌集』に詠み人知らずで収められています。七夕の歌。「わがうへに露ぞおくなる」の「なる」は伝聞の「なり」で、直訳すると「私の衣に露が降りているそうだ」となります。素直な歌ですよね。だれかに「服に露がついているよ」と言われて「これは天の川を渡る舟の櫂のしずくかな」と応じている。『伊勢物語』ではこれを、死にかけた男の顔に降りかかった場面に置き換えています。死にかけていたから「露が降りている」ではなく「降りているそうだ」と伝聞になっていても、おかしくないわけですね。そばで仕えている人との間に何かやりとりがあったかもしれません。

 息を吹き返すという言葉が二回出てくるのは原文通り。「いき出でて……いき出でたりける」と繰り返しています。この繰り返し、よく見るんですけど、現代語に置き換えづらい。

 五十九段、おしまい。

冷たいのを飲んだりあったかいのを飲んだり

 突然ですが、おからをスープやお鍋にそのまま入れてもおいしいという話を聞きました。おから、ポテサラ風にする以外に食べたいものもなく、体によいとわかってはいてもなかなか日常に導入できなかった。キムチ鍋にそのままどさっと入れてもいいのなら大分夢がもてます。おから鍋、食べてみようっと。

🌟 ちぇりお〜 🌝 




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