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2025年に衝撃を受けた映画

 こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。5年くらい前に苦しんだ五十肩が再発してしまったようなので医者に行きました。今回は腕が上がらないほどではなく、肩よりも首に問題がありそうだとの診断でした。とりあえず筋肉をほぐす薬と痛み止めを処方されました。この薬がけっこう効いて、だいぶラクになりました。

 さて、年をまたぎましたが2025年の回顧の続き。今回は2025年に衝撃を受けた映画など。
 ただし昨年劇場公開された作品ではなく、あくまで私が昨年観た作品なのでご了承ください。私はもう10年以上、映画館に足を運んでません。常時加入してるWOWOWか、ときどき加入するネットフリックスなどの動画配信を利用して、もっぱら家で観ています。

『月』(日本映画)
 衝撃度の高さでいえばこれしかありません。約10年前に起きた、重度障害者施設での大量殺人事件をモデルにした小説『月』を映画化したもので、原作もあくまでフィクションですし、映画は現実と原作を踏まえた上で、事件や犯人像にさらに独自の解釈をほどこしているようです。
 これは気力の充実したときでないと観られないです。私も最初観たときは、あまりの陰鬱さに途中でやめてしまったくらいです。でもどうしても気になったので、後日再チャレンジして最後まで観ました。
 コミュニケーションを取るのも難しい重度の障害者に対して社会は、そしてわれわれ個人は、どう向き合えばいいのか。きれいごとでは済まない現実を突きつけられます。この映画に出演してる障害者は役者ではなく本当の障害者です。彼らの姿を最初目にしたときにはゾワッとしてしまいました。そう感じてしまう自分がいるという事実も正直に認めなければいけません。
 監督と制作陣が、事件そのものをホラーのように描くだけでなく、障害者のきれいごとでない現実と向き合う覚悟を示したからこそ、障害者の出演を、家族のみなさんも認めてくれたのでしょう。
 犯人像も実際とは変えてあるはずです。映画では、彼は誰よりも障害者のことを思いやっていたし、耳の不自由な彼女と同棲までしてる設定です。なのにその彼が次第にゆがんだ優生思想みたいなものに取り憑かれていき、凶行に及ぶ経緯は、常識的な倫理では理解不能です。でもこれに類したことは現実に起きたわけです。原作者も監督も理解はできてないでしょうし、誰にも理解はできないでしょう。われわれにできるのは、現実から目を背けないということくらいなのかもしれず、どうしても無力さを感じてしまいます。宮沢りえさんとオダギリジョーさんが演じる夫婦が、最後まで事件と関わろうとする姿に一縷の希望を見出すのみです。

『お坊さまと鉄砲』(ブータン映画)
 ブータンは王様が自ら、国を民主化するから選挙をやりなさいと命じて民主化が実現したんですね。選挙が行われると聞いたお坊さんが、弟子に銃を見つけてこいと命じる冒頭からして不穏な雰囲気ですが、この映画はコメディです。たぶん監督の演出意図で、役者たちにはコメディ演技をさせてません。みんなマジメに芝居をしていることで、逆に自然な笑いが生まれてます。ラストはすべてが丸くおさまり、みんなが幸福になります。何だか奇跡のようなエンディングですが、全然わざとらしくないんです。これがブータン流なのか。

『型破りな教室』(メキシコ映画)
 貧困層が暮らし、ギャングが幅をきかすメキシコの町。そこの小学校に赴任してきた教師が通常のカリキュラムを無視したまさに型破りな授業をしたことで、やる気を失っていたこどもたちが学ぶ意欲を取り戻したという実話ベースの物語。
 この先生が教えるのは科学と哲学です。正しい思考力を養う上で、この二つを学ぶことが非常に重要なんですよね。これらを教えず妙な思想を吹き込む教育は最低です。
 希望に向かって歩き始めたこどもたちですが、才能を見出されて進学の道が開けた子がいる一方で、貧困家庭にとらわれて進学をあきらめる子もいるし、命を落とす子も出てきます。現実がきびしいからこそ、教育の理想は高くあらねばならない。とても誠実な映画です。

『動脈列島』(日本映画)
 ネットフリックスのリメイク版『新幹線大爆破』は、近頃珍しくなったパニックムービーの秀作でした。私がこどもだった頃は、『タワーリングインフェルノ』とかパニック映画がテレビでしょっちゅう放送されてました。
 それにあわせてWOWOWで放送されたのが、オリジナル版の『新幹線大爆破』と同じ年(1975年)に公開されたもうひとつの新幹線爆破映画『動脈列島』。こちらはパニックムービーではなく社会派ミステリです。同年の公開なので、どちらかが企画をマネしたというわけじゃなく、たまたま同じ新幹線テーマで企画が同時進行していただけでしょう。
 開通を急いだこともあり、新幹線は当初、騒音や振動の対策がおざなりなままでした。沿線住民は騒音振動に悩まされ、健康被害も続出、各地で訴訟が起こされていたという事実を私はこの映画を観るまで知りませんでした。
 健康被害に苦しむ沿線住民たちを治療してきた若き医師が、新幹線の騒音対策を求め、爆破予告をします。その医師(犯人)を演じるのが近藤正臣さん。犯人を追うエリート捜査官が田宮二郎。この二人の丁々発止の駆け引きが見どころです。
 田宮演じるエリート刑事が、アメリカで学んできたプロファイリングを駆使して、姿なき犯人を追い詰めていくのに驚きました。おそらくまだこの当時、プロファイリングなんてものを知ってる日本人はほとんどいなかったはずです。日本映画で最初にプロファイリングを使った作品かもしれません。
[ 2026/01/18 20:50 ] 未分類 | TB(-) | CM(-)



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