こんにちは、ビニールタッキーです。

A24映画「テレビの中に入りたい」が2025年9月26日についに公開されましたね。
奇妙で少しチープな90年代の深夜番組にのめり込んだ二人の青春物語、メランコリックなインディーズロックが中心のサントラ、トランスジェンダーでノンバイナリーのジェーン・シェーンブルン監督が自身の経験を元に描いた物語、主演のジャスティス・スミス、ジャック・ヘブンがクィア当事者であること、全てが惹かれる要素で見る前から「今年ベスト級」と思うくらい楽しみな映画でした。実際に見てみると面白くてアーティスティックで素晴らしい映画であるのは当然として、心の奥深くに棘の様なものがずっと刺さったまま取れなくなってしまい、見た後しばらく遠くを見て考え込んでしまう様な映画でした。このような極めてインディーズ的でアート的でパーソナルでありながら刺さる要素の映画を作ってくれて本当にありがとう…という気持ちになりました。
そしてそんな映画を日本公開してくれたハピネットさん本当にありがとう…と深く感謝しました。したんですが…一言言わせて下さい。日本公開まで長かった!
「テレビの中に入りたい」

2024/05/03 北米公開 → 2025/09/26 日本公開
なんと北米公開から1年4ヶ月後の公開。海外の映画ファンやクィア当事者の絶賛の声や、マーティン・スコセッシも絶賛ということですぐに日本に来るだろうと思っていたのですが…A24は日本のハピネットファントム・スタジオと独占契約しているのでいつか必ず公開されるという安心感はあるんですが、一方で公開タイミングが読めなすぎてヤキモキすることがしばしばあります。特に本作は1年以上待たされたということもあり「まさか公開見送りするんじゃなかろうか…」という懸念さえ感じました。
これ以外にも公開が遅い/早いに関わらず日本公開のタイミングについて色々と感じたA24映画がいくつかありますのでご紹介します。
「愛はステロイド」

2024/03/08 北米公開 → 2025/08/29 日本公開
90年代のアルバカーキを舞台にレズビアンの恋愛と血みどろのスリラーを組み合わせた作品です。制作発表の時点で「絶対素晴らしい映画だ!」と期待パンパンの状態だったのですが本国の公開後待てど暮らせど中々日本公開されず最終的に1年5ヶ月後の公開でした。しかも最初に日本公開決定の報が出されたのが大手シネコンでの予告編や配布物だったのでド田舎のA24ファンとしては「何かが発表されたらしいがわからん」という状態で泣かされたのも忘れられない思い出です。
「MaXXXine マキシーン」

2024/07/05 北米公開 → 2025/06/06 日本公開
「X エックス」「Pearl パール」に次ぐ3部作の完結編。こちらも評判が高く、スコセッシがベタ褒めという話も聞こえてくるのに中々公開されなかった!(もしかしてスコセッシが褒めると日本公開が遅くなる…?)結局1年1ヶ月後の公開でした。結構待ちましたよ!
「顔を捨てた男」

2024/09/20 北米公開 → 2025/07/11 日本公開
セバスチャン・スタンが特徴的な顔を捨てて第二の人生を歩む男を演じた意欲作です。同じくセバスタが若き日のドナルド・トランプを演じた「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」が北米では同時期に公開されたということもあり、この2作を並列で語る映画評などをよく見かけました。しかし日本では北米より10ヶ月後の公開となりました。ちなみに「アプレンティス」は北米より3ヶ月後の公開でした。なぜ。ただ、こちらはかなり早い方だったと思います。感謝です!
「シビル・ウォー アメリカ最後の日」

2024/04/14 北米公開 → 2024/10/04 日本公開
こちらは「公開タイミングが見事!」という例です。アメリカでは数ヶ月後に大統領選を控えた4月に公開されたということもあり大ヒットしました。しかもインディーズのA24には珍しく大予算の戦争映画であり、IMAX上映にも力を入れるという意欲作でした。一方日本ではアメリカ大統領選直前の10月に公開するという狙い済ましたタイミングと、アメリカに倣ってIMAX上映を敢行したという英断も相まって初登場1位という快挙を成し遂げました。このヒットにA24がコメントを寄せたり、劇中の「お前はどの種類のアメリカ人だ?」がミーム化したりとちょっとした社会現象となりました。(まさかピクシブ百科事典にページが作られるほど話題になるとは思ってませんでしたが)
この他にも「関心領域」(5ヶ月後)、「ベイビーガール」(3ヶ月後)、「異端者の家」(5ヶ月後)、さらにアリ・アスター監督作「エディントンへようこそ」も本国より5ヶ月後の今年12月公開予定と注目作をかなり早く公開してくれています。一部の特殊な例を除けばハピネットさんはがんばってくれている!という印象が強いです。だからこそ公開が遅くなった時に「なんか問題あるのかな」「日本公開に際して難しいところがあるのかな」と杞憂してしまうのです。
ここまでに挙げたのは公開された(または公開予定が発表された)の映画ですが、それ以外にもまだまだ日本公開未定のA24映画があります。ここからは「あのA24映画の日本公開を楽しみに待ってます!」という映画をいくつか挙げていきたいと思います。A24は映画制作だけでなく映画配給も行なっている映画会社のため、制作映画と配給映画は分ける必要があるのですが、この記事では簡潔にするためにまとめてA24映画と呼ばせてもらいます。ここら辺の事情については2023年にサイゾーさんで語らせてもらいましたのでぜひご参照ください。
また、個人的に楽しみなA24映画、ということで全てを網羅している訳ではないことをご了承ください。こんなA24映画が控えている、というリストの一つとして参照してくださってもいいですし、皆さんも気になる映画があったら「楽しみ!」と声を上げてほしいと思います。きっと届くはず!
「Y2K」
2024/12/06 北米公開 → ???
「ブリグズビー・ベア」「サタデーモーニング・オールスターヒッツ!」などでもお馴染み、僕が愛してやまない元SNLのコメディアンであるカイル・ムーニーの監督作です。実はY2K問題(2000年問題)というのは2000年になった瞬間に機械が暴走する問題だったのだ!というまあ何ともチープで可愛らしいホラーコメディなんですが日本公開未定。「白雪姫」のレイチェル・ゼグラーや「イット」のジェイデン・マーテル、「デッドプール2」のジュリアン・デニソンなど若手のホープが出演している賑やかな映画なんですが、残念ながらRotten Tomatoesの数値があまり芳しくないため仕方ないかな…と思っています。(バカバカしすぎたか?)しかし数値はどうあれ独占契約なんだから公開してね!と切に願っています。
「Opus」
2025/03/14 北米公開 → ???
「The Bear(一流シェフのファミリーレストラン)」「ボトムス ~最底で最強?な私たち」などで人気の高いアヨ・エデビリ主演のスリラー映画。30年前に失踪した伝説のポップスター(演:ジョン・マルコビッチ)のパーティーに招待されたジャーナリストが体験する恐ろしい一夜…という映画。ファッション誌GQ出身という異色の経歴のマーク・アントニー・グリーンの長編デビュー作ということで気になるんですが日本公開未定。自分の周りの映画好きはみんなアヨさんが大好きなので無条件で見に行くと思うのですが…待ってます!
「Death of a Unicorn」
2025/03/28 北米公開 → ???
今をときめくジェナ・オルテガとみんな大好きポール・ラッド主演のホラーコメディサタイア(皮肉劇)です。「ユニコーンの子供を轢き殺してしまったことから巻き起こる金持ちたちの大騒動」というあらすじだけで興味を惹かれまくりますが日本公開未定。昨今アメリカで流行っている「逆転のトライアングル」や「ホワイト・ロータス」や「ナイブズ・アウト」に連なる「Eat the Rich」(金持ちをやっつけろ!)映画の系譜の一つだと聞いているため、とても楽しみです。
「Warfare」
2025/04/11 北米公開 → ???
「シビル・ウォー アメリカ最後の日」でアレックス・ガーランド監督が軍事スーパーバイサーとして組んだ退役軍人のレイ・メンドーサ氏と共同で脚本を執筆した映画です。イラク戦争に参加したメンドーサ氏の実体験を元に、ネイビーシールズの1小隊の戦いを描く戦争スリラー映画とのことですが日本公開未定。(ただしあるメディアで既に公開予定が出ているという話も…?)キャストはウィル・ポールター、キット・コナー、ノア・センティネオ、ジョセフ・クイン、チャールズ・メルトンなど若手の人気俳優揃い踏みで「このキャストのままで青春群像劇を作ってくれよ!」と叫びたくなります。まさにそういうキラキラした若者たちを主人公にすることで戦争に若者が投入されることの悲哀などを描いているのだと予想しています。
「The Legend of Ochi」
2025/04/18 北米公開 → ???
オチと呼ばれる不思議な生き物を拾った少女が親元まで連れて行くという、A24には珍しいファンタジー冒険譚です。主人公は「システム・クラッシャー」「この茫漠たる荒野で」で注目されたヘレナ・ツェンゲル。他にもフィン・ウォルフハード、エミリー・ワトソン、ウィレム・デフォーなど実力派が出演していますが日本公開未定。監督・脚本はMV出身のアイザイア・サクソンということでかなり意欲作という感じで気になる映画です。
「Bring Her Back」
2025/05/30 北米公開 → ???
こちらは正確に言うとA24"配給"映画です。オーストラリアの双子YouTuberのフィリッポウ兄弟が手掛けたホラー映画「Talk To Me/トーク・トゥ・ミー」、その精神的続編とも言える作品がこの「Bring Her Back」です。実写版「ストリートファイター」の監督仕事を断って傾注した作品ということで注目していますが日本公開未定。予告編を見ると前作同様に「怖いけど悲しみの方が深い」という雰囲気を感じますし、何よりもサリー・ホーキンスのホラー演技が楽しみです。
「Materialists」
2025/06/13 北米公開 → ???
「パスト ライブス/再会」で評価を受けたセリーヌ・ソン監督が再び手がける三角関係の物語。結婚仲介人で独身のダコタ・ジョンソン、お金持ちでイケメンな今カレのペドロ・パスカル、普通の人だけど今も気になる元カレのクリス・エヴァンス、と超一級のキャストです。あえてスーパーヒーロー映画のイメージのある3人を呼び寄せて少し懐かしいような恋愛映画をやる、というところがミソだと感じています。しかし日本公開未定。前作「パスト ライブス」は「もうキスしちゃえよ!」と叫びたくなるような恋愛のもどかしさが最高でしたが今回はどうなのか気になりすぎます。
「Sorry, Baby」
2025/06/27 北米公開 → ???
インディーズの登竜門であるサンダンス映画祭で脚本賞を受賞し、配給権獲得争いでA24がゲットしたA24配給映画です。過去の性的暴行のトラウマを抱えた主人公が親友や新しい彼氏との生活で自分自身を取り戻して行く物語です。主演・監督・脚本のエヴァ・ヴィクターの長編デビュー作で、親友役のナオミ・アッキーや彼氏役のルーカス・ヘッジスもいいですね。(ルーカス・ヘッジスが出ている映画は大体いい映画です)今のところ日本公開未定ですが、サンダンス映画祭という強いネームバリューがあるのでそのうち公開されると信じています。
ここから先はまだ海外でも公開されていないA24作品で気になるものをご紹介します。どれも注目度の高い作品ですのですぐにでも日本公開が決まるでしょう!そうですよね!?
「The Smashing Machine」
2025/10/03 北米公開 → ???
個人的に大注目作です。まさかロック様ことドウェイン・ジョンソンがA24の主演に!しかも日本の総合格闘技イベント「PRIDE」で活躍した総合格闘家マーク・ケアーの半生を描く伝記映画で、経産省の支援を受けて日本ロケも実施したという気合の入り様。さらに妻役がエミリー・ブラントなのでディズニーの「ジャングル・クルーズ」のコンビがリユニオンという面白さもあります。監督は「アンカット・ダイヤモンド」のサフディ兄弟の弟の方であり、役者としても「オッペンハイマー」などに出演しているベニー・サフディです。日本でも知名度の高い人物の映画であり、ロック様人気もあやかって大々的に公開されることを祈っています。おそらく賞レースに絡んできそうなので来年3月付近に公開されるのでは…とにらんでいます。
「If I Had Legs I'd Kick You」
2025/10/10 北米公開 → ???
こちらもA24配給映画。個人的に大好きなコメディエンヌ、ローズ・バーン主演のサイコロジカルスリラーコメディ。難病の子供のワンオペ育児を任された女性が精神が不安定になりついに限界を迎える物語です。私が読んだ海外評では「まるでサフディ兄弟が撮った女性の物語」「ハリウッドがローズ・バーンをずっと過小評価してきたことを暴く映画」と言われていてとても気になっています。感動的な話を見て涙を流して心が洗われるという映画体験もありますが、めちゃくちゃ不安定な人が不安定なまま暴走していく様子を見て「こういう風になってしまうのは自分一人ではないんだな」と心の平穏を得るという映画体験もあると思うんです。A24は特にそういう映画が多い様な気がしますがこちらもそういう一本だと期待しています。
「Eternity」
2025/11/14 北米公開 → ???
死後の世界で永遠に暮らす相手を選んで、と言われたラリー(マイルズ・テイラー)は同じく亡くなった妻のジョーン(エリザベス・オルセン)を選ぶが、そこにジョーンのかつての夫で結婚してすぐに戦死してしまったカーク(カラム・ターナー)が現れて…というファンタジーラブコメディ。少し変わったシチュエーションの三角関係の物語ですが、「ワンダビジョン」で見せたエリザベス・オルセンのコメディエンヌっぷりがさらに見られそうですし、マイルズとカラムの男二人の関係も気になりますね…。監督はゲイとレズビアンの高校生の友情を描いた「恋人はアンバー」のデヴィッド・フレインということなので注目です。
「Marty Supreme」
2025/12/25 北米公開 → ???
こちらはサフディ兄弟の兄の方ジョシュ・サフディの監督作。20世紀中盤に活躍した実在のアメリカ人卓球選手マーティ・リーズマンを元にした野心的な卓球選手をティモシー・シャラメガ演じています。こちらも日本ロケを行なっているということです。ジョシュとベニーそれぞれが実在の人物をモチーフにした映画を撮っている(しかも日本ロケもしている)という事実も面白いんですが、こちらも賞レースを視野に入れた様な堂々とした作品で注目しています。北米ではクリスマス公開ですが日本ではどうなるんでしょうか。
以上となります。
繰り返しになりますがA24映画がハピネットさんの独占配給となって映画ファンの一人として本当に安心しています。公開されるかどうかわからない、どんな宣伝になるかわからないという不安は払拭され、A24と作品のブランドイメージを大切にして丁寧に宣伝されていることをひしひしと感じています。さらに海外の尖ったインディーズ映画をそれなりの規模で全国公開してくれていることにも感謝しています。この記事を書くきっかけとなった「テレビの中に入りたい」についても「こんな野心的で先進的でパーソナルだけど心に深く突き刺さる映画を丁寧に日本公開してくれてありがとう…」と感じました。
ということでまだまだ楽しみなA24映画が今後もいっぱい控えているんです!「色々大変でしょうが日本公開よろしくお願いします!」という気持ちをこめてこの記事を書きました。日本映画界は国内の映画が当たりまくってウハウハと聞きますが、それとは別に海外の独創的なクリエイターによる多様な視点のインディーズ映画も盛り上がってほしい、という強い願いを込めて締めさせて頂きます。
それでは最後に一言。A24、最高〜!(よくある映画CM風)