こんにちは、ビニールタッキーです。

私のTwitterやこのブログの読者の方ならご存知だと思うのですが、私はアメリカの老舗コメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」(通称:SNL)が大好きです。なにせ50年続いている長寿番組のため全てを網羅しているわけではないですが、確か2018年(シーズン44)とかその辺りからYouTubeでアーカイブを見始め、日本でもHuluで日本語字幕付きで見れると知ってからドハマりしました。少し前の記事ですが紹介記事を書きましたのでご参考までに。
そんなSNLですがこの記事を書いている現在(2025年9月)は来月10月に控えているシーズン51の準備で大忙しの時期です。そんな中で人事再編成、つまり番組を卒業する人たちと新規加入する人たちのニュースが相次ぎました。まあこれは毎度おなじみのことなんですが、今回は色々と気になる部分があるのです。というかはっきり言いますが「こんな人事異動でシーズン51は大丈夫そ?」という気持ちになってしまうのです。順を追って説明しましょう。
1. 脚本家セレステ・イムが卒業
スケッチの脚本を書くライターを約5年間勤めたセレステ・イムが卒業。セレステはトランスジェンダーでノンバイナリー(プロナウンスはThey/Them)。コロナ禍の2020年に弱冠23歳でライターに抜擢されてSNLで史上初のトランスジェンダーのライターとなりました。2023年には脚本スーパーバイザーにも昇格した才人です。アジア系(韓国系カナダ人)でクィアということもあって同じくアジア系でオープンリーゲイのボーウェン・ヤンと組むことが多かったようです。セレステが手がけたスケッチで高く評価されているのは「It Gets Better」。
2011年に発足した実在のLGBTQ若年層支援プロジェクト「It Gets Better」によって心を救われた子供たちが10年後に本当に人生がよりよくなった(It Gets Better)のかをインタビューするというスケッチです。セレステ自身も子供の頃にこのプロジェクトで救われたということで愛情とギャグとイグアナ(!)が詰まったスケッチです。ホストのダン・レヴィを含めスケッチに登場するコメディアン全員がオープンリーなクィアであるのもいいですね。ちなみにIt Gets Betterプロジェクトはこのスケッチを大変気に入り、チャリティ商品としてイグアナのピンバッチを作ったそうです。
まさにリベラルなSNLのコメディを象徴するようなライターでしたが残念ながら卒業。卒業を伝えるInstagramの投稿では番組に感謝しつつめちゃくちゃ仕事が大変だったし、いい人もいたけどいじわるな人もいた、等々の内容を何度もbutという単語を使って述べているのが可笑しくて笑ってしまいます。そしてトランスジェンダーの連帯のためにコメディライター業は続けていくと語ってくれています。幸あれ!
2.デヴォン・ウォーカーが卒業
2022年のシーズン48で新人枠で加入し、シーズン50でメインコメディアンに昇格したばかりのデヴォン・ウォーカーが3年目にして卒業。アフリカ系男性のレギュラーメンバーとしては大ベテランのキーナン・トンプソン、マイケル・チェ、そしてデヴォンの3人という感じでしたが、3シーズン通して彼の登場回数は少なめ…悪くはなかったと思うのですが正直頭角を表せずに卒業というイメージです。例えば先輩のクリス・レッドは「イキってるけど実は気弱なアフリカ系男子」のキャラが得意でしたしその前のジェイ・ファローはアフリカ系俳優やミュージシャンのモノマネが抜群で人気者だった印象です。新人が独自のキャラを出せないまま去ることは「SNLあるある」ですが残念。
彼のスケッチで個人的に好きな「Baptist Church」を貼っておきます。デヴォンとマイケル・B・ジョーダン演じる牧師コンビが神の教えと教会への寄付(≒牧師の個人費用)の呼びかけをオルガンに合わせて歌いまくる最高のスケッチです。やはりこういう人種特有のジョークを取り入れたスケッチが見れるのはいいですよね。
3.マイケル・ロングフェローが卒業
デヴォン・ウォーカーと同じくシーズン48で加入したマイケル・ロングフェローも卒業。端正な顔立ちでキツいジョークを言うスタイルでWeekend Updateのゲスト枠で頭角を表しました。一部ファンの間ではWeekend Updateの次期アンカー候補では?とも囁かれていましたが残念。こちらに貼ったのは「シドニー・スウィーニーの家族はMAGAなのでは?」という疑惑報道から自身の保守的な家族について語るマイケル・ロングフェロー。加入してすぐの登板で堂々とコメディを披露し、アンカーのコリン・ジョストにもずけずけ突っかかる様に「おもしれー男」と感じた思い出があります。
しかし彼も卒業。シーズン48で入った新人枠は去年モリー・カーニーが卒業し、今年はデヴォンとマイケルが卒業して4人中3人がいなくなったことになります。残るはマルチェロ・フェルナンデス1人ですが、彼はラテン系の出自を活かして「ステレオタイプ的な陽気なラテン系の伊達男」キャラが大ヒットしたためしばらくは安泰かと思います。しかし新人枠がこんなに去ってしまうのは少し異常事態だと感じてしまいます。
4.エミル・ワキムが卒業
個人的にはこれが一番衝撃でした。2024年のシーズン50の新人枠で加入したエミル・ワキムがたった1年で卒業。レバノン系移民でクリスチャンという「アラブ系だけどムスリムではない」出自を活かしたギャグが最高で、Weekend Updateでその話芸を見たときは(少しスベってる箇所もあったけど)大いに笑いました。「周りの人が僕の見た目を見てから僕がクリスチャンだとわかると明らかにホッとする様子が伝わる。今も感じてるよ。例えるなら僕はアニメのリュックを背負ってる黒人男性だ」
そんな陽気な感じのエミルですがこのトークの後半では2024年の大統領選挙に紐づけてイスラエル軍のピンクウォッシュやガザ侵攻を止めないイスラエルを支援し続けるアメリカを皮肉るギャグをかましています。「自分の村が爆撃されている時に「私の奥深くにいる私は誰だろう。もしかしたら私はゲイかもしれない」などと考える余裕はない。LGBTQを支援するなら爆撃をやめるべきだ」。さらにジョーク内での一節ですが「Free Palestine」とSNL内ではっきり発言したことには驚きました。SNLの創始者にして総支配人ローン・マイケルズはユダヤ人であり、放送局の重役にもユダヤ系が多いためこの何気ないジョークは実は勇気ある発言なのです。
しかしエミルは1年で卒業。前述の経緯から見て「クビにされたんじゃない?」という憶測が流れても仕方のない状況です。(前述の通りSNLはユダヤ系の番組なのでパレスチナやガザ侵攻に関する言及は不気味なほど少ないです。ロシアのウクライナ侵攻についてはちゃんと追悼してたのに…)クリスチャンとはいえアラブ系移民のコメディアンがレギュラーメンバーとして加入していたのはジョークやスケッチのバリエーションも広がるしとてもいいことだと思っていたので本当に残念でした。
5.ハイディ・ガードナーが卒業
こちらも衝撃でした。2017年のシーズン43で加入し、2年後にはメインキャストに昇格、現在のSNLではベテランとなったハイディ・ガードナーが8年目にして卒業。ベテランで実力も安定感も爆発力もあるハイディの卒業に最初は驚きましたが、上記の記事によると今年初めにゲスト出演したポッドキャストで「SNL疲れ」を正直に告白していたようです。ハイディの場合、出演者とライターを兼任しているため、ただでさえ忙しいSNLでかなり多忙を極めていたとのこと。個人的には彼女のキャリアと共にSNLにハマった感じだったので感慨深いです。ハイディの持ちネタといえば高慢な元カノ、ヒステリックな母親、白人女性あるある的な「〇〇な女性」シリーズ(例:何もしてないのに忙しそうな女性、年齢を重ねても優雅さを保つ女性、息子がSNSで有名になった女性等)や持ちキャラであるティーン映画評論家ベイリー・ギズマートなど豊富なネタでSNLを大いに盛り上げました。ここでは先述したエミル・ワキムと共に夫婦役を演じた「Earring」を貼っておきます。大学生の息子(演:ポール・メスカル)がイヤリングを着けていたことからパニック状態になる保守的な家族のスケッチです。
また、ハイディといえば「Beavis and Butt-Head 」も最高でした。「討論番組の観客席にビーバス&バットヘッドのそっくりさんがいる」というスケッチで、司会者役のハイディがバットヘッド(演:マイキー・デイ)を見て見事なBreaking Charactor(コント中に思わず吹き出してキャラ崩壊してしまうこと)を決めてしまったシーンはシーズン50で一番話題となりました。(ちなみにビーバス役のライアン・ゴズリングもゲラとして有名でこのスケッチでも盛大にBreaking Charactorしています)
6.シーズン51の新人枠5人が発表!しかし…
シーズン51の直前に発表された4人の卒業。その穴を埋めるように新人が5人発表されました。もちろん喜ばしいことなんですが、かなり大きなサプライズが一つありました。SNLのライターでもあり、幕間で短いコントを披露していたコメディトリオ「Please Don't Destroy」(略称:PDD)の3人のうちの1人、ベン・マーシャルが出演者として参加することが発表されたのです。過去にもコメディトリオThe Lonly IslandがライターとしてSNLに加入し、メンバーの1人のアンディ・サムバーグが出演者としても活躍するということがありました。それと同じような感じなのかな、と思いきや…
なんとメンバーの1人ジョン・ヒギンズ(背の低い方)が番組からの卒業を発表。もう1人のマーティン・ハーリヒー(メガネの方)はライターとして残り、ベンは出演者として出るということでなかば分裂状態に。まあPDDは解散せず活動を続けるようですがSNLでトリオの姿を見ることはなくなるそうです。2025年9月現在もお笑いツアーで3人揃って各地を回っているので不仲とかではないのは一安心です。
実はこの兆候は既にシーズン50の時点であったという指摘もあります。精力的にスケッチビデオを作っていた彼らでしたがシーズン50では極端に少ないということがありました。恐らく次のステップのための準備で忙しかったのでしょう。その点についてホストのスカーレット・ヨハンソンにツッコまれるという自虐ネタもやっていました。「なんでそんなに疲れてるの?今年は動画を2本しか作ってないのに」「3本は作ったと思うよ!」
PDDのスケッチで印象に残っているのはダコタ・ジョンソンと盛大なdisり合戦を展開したスケッチや、ゾーイ・クラヴィッツと逃げた猫を探す(なぜか一瞬ポール・ダノが出てくる)スケッチなど。あの悪名高いティモシー・シャラメのスケッチも彼らによるものです。(ティモシー・シャラメは俳優としては好きだけど一個人としては微妙な感情を抱いてしまうのもこのスケッチのせい…)ここではPDD最大のヒットである「Three Sad Virgins」をご紹介します。モテ男ピート・デヴィッドソンからMVに出てほしいと言われた3人がノコノコ付いていくと「イケてる俺と3人のかわいそうな童貞たち」という使われ方でショックを受けるというスケッチ。しまいにはテイラー・スウィフトまで出てきて3人のかわいそうな童貞たちについて歌う始末。異様に豪華だけど内容はしょうもない!!
色々脱線してしまいましたが、言いたいことは「ベン・マーシャルが出演者になるのはうれしいけどPDDのビデオスケッチ枠がなくなるのは寂しい!」ということです。
7.エゴ・ウォデムが卒業
一度この記事を書き終えて安心しきっていたところに入ってきたニュースです。2018年のシーズン44で参加、7年目のベテランのエゴ・ウォデムが電撃卒業発表です。もうシーズン51の新メンバーも発表されたので卒業発表はないだろうというタイミングでの発表は衝撃でした。
自分がリアルタイムで見てきたSNLでのアフリカ系女性コメディアンといえば破壊力抜群で最高なレスリー・ジョーンズ(2016年版『ゴーストバスターズ』も『海賊になった貴族』最高!)、キュートからクールから下世話までなんでもできたサシェア・ザマタ(『アガサ・オール・アロング』はマジで最高!)、クィアネタや歌モノスケッチ、おばあちゃん役が印象的だったパンキー・ジョンソン(『ボトムス ~最底で最強?な私たち』の先輩レズビアン役もよかった!)などなど思い出深い人が多いですがエゴもまさにその1人。特に口うるさい女性役をやらせたら天下一品で、Weekend Updateでの一人芸も最高ですし、モノマネでいえばディオンヌ・ワーウィックのモノマネをやりすぎた結果、ご本人登場まで至ったりしました。(その後本人公認となったそうです)
本当にたくさんの名スケッチを生み出してきたわけですが、ここでは近年の名作スケッチとして名高い「Lisa from Temecula」を紹介させてください。姉の誕生会にやってきた風変わりな妹リサのステーキが硬すぎてとにかく切れないというだけのスケッチなのですが、あまりにもはちゃめちゃなことが起きるのでホストのペドロ・パスカルが常にBreaking Charactor状態、さらにレストランのボーイに「すみません、他のお客様から苦情が…」と言われたリサが「私が黒人だから?」と返した時の言い方と表情が絶妙すぎて普段は滅多にBreaking Charactorしないボーウェン・ヤンが吹き出してるのが最高です。
ただ、エゴに関しては近年ではドラマや映画などの仕事が多くなり、そちらの方での活躍が期待できるので良い方向の門出だと思います。(先述の通り、番組を卒業したアフリカ系女性キャストたちはみんな活躍しています)SNLで彼女を見れなくなるのは残念ですが、素直に「おめでとう!ありがとう!」と送り出したいです。
ここまでシーズン51直前に発表された人事異動について説明しました。ここからはこれらの発表を受けてSNLファンの1人として感じた雑感です。
①人種多様性が弱まった。

人種という点でいうと現時点(シーズン51直前)でアフリカ系はキーナン・トンプソン、マイケル・チェ、そして新人のカム・パターソンの3人。一方の白人は現行が8人で今回の新人に4人いるので計12人…差が激しすぎません?他の人種でいうとマルチェロ・フェルナンデスは父がキューバ系で母がドミニカ系、ボーウェン・ヤンは中国系、これぐらいです。(エミル・ワキムが卒業してしまったことが本当に悔やまれる…)この多様性の乏しさはかなり気になっています。特に新人枠の5人中4人が白人というのはかなりびっくりしてしまいました。個人的にはもう少しアジア系(例えばアメリカにも多いインド系、日系コメディアン)やアラブ系(もっと言えばムスリムのコメディアン)、中南米のコメディアンなどがもう少し増えてほしいと思います。なぜコメディ番組に人種多様性を求めるかというと、例えばSNLで米中関係の政治スケッチをやりたいと思っても白人キャストでやってしまうとホワイトウォッシュやイエローフェイスになってしまうためでできない、となってしまいます。しかし現在は中国系のボーウェン・ヤンがいるので実現可能なのです。そして中国系当事者だからこそ織り交ぜられるギャグも必ずあるんです。何度も言いますが多様性はコメディのバリエーションを生むんですよ。
②メインの女性キャストが少ない

女性キャストという視点で見るとクロエ・ファインマン、サラ・シャーマンの2人はキャリアを重ねて安定感がありますが、昨年入ったアシュリー・パディラとジェーン・ウィックラインはまだスケッチの登場回数が少ないため実質メインの2人で回すことになりそうです。(ハイディ・ガードナーが忙しすぎて辞めると言ったのも納得…)新人女性のヴェロニカ・スロビコウスカが参加するのでこの辺りの活躍が増えることを期待したいです。しかし男女比12対5というのもかなりひどい数値だと思います。さらに言うとエゴ・ウォデム卒業によってアフリカ系女性のキャストが不在となりました。ちなみにアフリカ系女性のキャストがいないシーズンというのは2012年のシーズン38以来だそうです。まだフレッド・アーミセンやビル・ヘイダーやジェイソン・サダイキスが現役キャストだった頃…!時代が逆行している!これはどう考えてもスケッチの幅が狭まってしまうでしょう。しかし自分が見始めた2018〜2020年あたりは女性キャスト数が多く女性だけのスケッチなんてのもあったんですが…またそういう時代が来ることを願いたいです。
③オープンリーLGBTQのキャストが減ったまま

現在LGBTQであることをオープンにしているのはボーウェン・ヤンのみ。一時期のケイト・マッキノン(レズビアン)、パンキー・ジョンソン(レズビアン)、モリー・カーニー(ノンバイナリー)が所属していた時期が懐かしく感じます。もちろん今現在オープンにしていない人がいるだろうし新人枠にもいるかもしれないということは重々承知していますが、オープンにしてスタンダップコメディを披露しているコメディアンも大勢います。(Netflix「スタンドアウト: LGBTQ+ セレブレーション」など参照)なぜ彼ら(They)を起用しない?という気持ちが湧いてきます。
特にSNLについてはトランスジェンダーをジョークにして反対デモまで巻き起こしたデイヴ・シャペルを普通にホストとして何度も呼んだり、カーテンコールに突然参加させたりと「差別を容認してるんか?」と思わせることがたびたびありました。そんなことはないよ、というアピールのために犬猿の仲と噂されていたボーウェンとデイヴがハグする様子まで見せたりしてファンとしてはかなり複雑な気持ちでした。
SNLは他にも新人枠で加入することが発表された後に過去のアジア系差別やゲイ差別ジョークが発見されて加入直前に解雇となった幻の新人ショーン・ギリスを数年後にホストとして迎えたりしました。例えばクリス・ロックがウィル・スミスにビンタされた後、しばらくするとなんとなく水に流されて普通に大活躍してる様子などを見てもアメリカのコメディ界では「ジョークは水に流す」という暗黙のルールがあるように感じます。まあキツいジョークがウケる土壌なのでいちいちジョークでキャンセルしててもしょうがない、という感覚があるのかもしれません。しかしそうであるならば差別ジョークの対象にされがちなクィアなコメディアンをもっと採用してよ!と思います。
とまあこのように気になるところもありますがSNLは反省するのがよいところでもあります。(例:大統領になる前のドナルド・トランプやああいう風になる前のイーロン・マスクをホストとして呼んだことを後に反省)記念すべきシーズン50ではこれまでのスケッチの中で行われた、人種差別ネタ、女性差別ネタ、ゲイ差別ネタ、障害者差別ネタ、ステレオタイプの助長、ボディシェイミング、セクハラ、子どもや動物を対象とした性的ジョーク、ブラックフェイス、レッドフェイス、イエローフェイス、問題のあるゲストを番組に出演させてしまったこと等を告別式という形で振り返りました。いやしかし反省点多いな!このようなことがもう繰り返されないようぜひ前進してほしいと願います。
In Memoriam #SNL50 pic.twitter.com/8aUmE6nHgy
— Saturday Night Live - SNL (@nbcsnl) 2025年2月17日
最後にここからはシーズン50の個人的に気になったニュースをピックアップしていきたいと思います。昨シーズンはだいたいこんなことがあったという感じで参考にしてもらえれば幸いです。
・デイヴ・シャペルがSNLのモノローグでガザとトランスジェンダーの話はするなという検閲を受けたと証言。
デイヴは先述の通りトランス差別ネタ以降かなり嫌いなのですが、シーズン50でホストを務めた回のモノローグでは再び大統領になったトランプに対して、人道支援者であり親パレスチナだったジミー・カーター大統領のようになれ、と発言した時は「やるじゃん」と思いました。このモノローグをやる前に番組側から検閲があった(真偽は不明)ようですが、彼の芸風である「言ってほしくないことを言ってやろう」という露悪精神が良い方向に動いた例だと感じました。
・政治スケッチでマイク・マイヤーズがイーロン・マスクに扮して大ウケ。
SNLのオープニングは毎回政治スケッチから始まるわけですが、そこで誰が実在の政治家を演じるのかというのが楽しみの一つとなっています。毎回違うこともあれば、ここ最近のトランプ役はメインキャストのジェームズ・オースティン・ジョンソンが固定で演じていたりします。(彼は他のスケッチではチョイ役なことが多く、ほぼトランプ役のために在籍しているようなイメージさえあります。「トランプが大統領である限りはクビにならない」と言われたりも)そんな中イーロン・マスク役を演じたのはSNLレジェンドのマイク・マイヤーズ!『オースティン・パワーズ』を彷彿とさせる憎たらしい演技で最高です。この後もマイク・マイヤーズはたびたび出演。トランプが「カナダを51番目の州として受け入れる」と発言した際はカナダ人コメディアンとして「Canada is Not for Sale」というTシャツを着て登場したりしました。
・『ホワイト・ロータス』のエイミー・ロー・ウッドの外見を揶揄したスケッチに本人が苦言。
こちらは日本語の記事にもなっていますね。『ホワイト・ロータス』のパロディスケッチで出演者エイミー・ロー・ウッドの外見をギャグにしたことに本人が「意地悪で全然面白いとは思わなかった」とコメントしました。(実際に見てもらえばわかりますがこのモノマネは確かにヒドい)このコメントを受けてエイミー役を演じたサラ・シャーマンは平謝りし、エイミーに花を贈ったそうです。このスケッチ自体はSNLの元メンバーであるベック・ベネットやアレックス・モファットが出てたりスカヨハやリゾがチョイ役で出てたりと異様に豪華で楽しいスケッチだったのでなんとも残念です。モノマネはスケッチの基本動作ですがリスペクトとバランス感覚が重要だと改めて感じた騒動でした。
・モーガン・ウォーレンの疾風のような退場
Thank you, Mikey Madison and @MorganWallen! Goodnight! pic.twitter.com/FDlInhhHqb
— Saturday Night Live - SNL (@nbcsnl) 2025年3月30日
番組の最後に演者たちがお互いを讃えあう恒例のカーテンコール。そこで音楽ゲストのモーガン・ウォーレンがホストのマイキー・マディソンとハグした後疾風の如く去る様子が話題になりました。南部出身のカントリーシンガーということでNYのスノッブなリベラル層の番組であるSNLとは相性が悪そうという印象や、この行動の数時間後に地元へ帰る飛行機の写真とともに「神の国に連れて行って!」と投稿したことで「こんなところににはもういたくない」って意味なのか?など様々な憶測が飛び交いました。後に本人曰く「地元のナッシュビルに早く帰りたかった」とのこと。多分本当にそれ以上の深い意味はないと思われますがSNLの歴史の中でも珍しいシーンだったらしくWeekend Updateなどでも散々擦られました。
・スカーレット・ヨハンソンがマイケル・チェに反撃
ニュース番組風の人気コーナーWeekend Update。毎年12月にアンカーのコリン・ジョストとマイケル・チェがお互いに書いた原稿を交換して読み上げるという「ジョークスワップ」という恒例行事があり、大抵の場合は相手が読んだら顰蹙を買うようなジョークを読ませる(例えば白人のコリンが黒人を侮辱するようなジョークを読み上げさせられるなど)というのがお約束となっています。今回のジョークスワップではコリンの妻であるスカーレット・ヨハンソンが特別ゲストでスタジオに来ており、控室でこの生放送を見ているという前提で「コリンがスカヨハの性的なジョークを言う」というスワップをやらされました。内容はここに書くのが憚られるほどひどく下品な内容でした…マイケル・チェはよくレギュラーを続けられるなと思うぐらい下品なジョークや差別的ジョークが得意な人間ですがこれは特にひどかった。
数ヶ月後、シーズン50最後のホストとしてスカーレット・ヨハンソンが登板。この回のWeekend Updateも特別にジョークスワップを行なっていたのですが途中でスカヨハが登場。おそらくコリンが用意した謝罪文(普段のマイケル・チェが絶対に言わないであろう自己憐憫や心からの謝罪や愛などを言うように仕向けた謝罪文)をスカヨハの目の前で読まされるということになりました。まあそれはそれとしてマイケルが準備したコリン用のニュース原稿がひどすぎて印象としてはマイケルに軍配ですが。なんにせよジョークは水に流す、と言う文化はあれどやはり謝罪はした方がいいよね、と思いました。
以上です。ここ最近感じていたことをつらつらと書いてみると想像以上に長大となって「俺、本当はSNLのこと大好きなのかも…」という気持ちになりました。しかしこうして振り返ってみるとやはりどうしても今アメリカが抱えている病状のようなものがSNLにも広がっていると感じてしまいます。例えばトランプによるトランスジェンダーへの弾圧をきっかけにディズニーなどのエンタメ業界にまで広がったDEI施策の見直しの影響や、深夜番組の名物司会者スティーヴン・コルベアがトランプと放送局の癒着疑惑について批判したところ30年続いた番組が打ち切りになったことの影響など、お上からの締め付けが怖くてお笑い番組が萎縮しているような気がしてならないのです。数年前には女性も有色人種もLGBTQも多様で豊かだったSNLがたった数年で今のような形になってしまったんです。それはまるで現在のアメリカの縮図のように見えます。僕が今のSNLに抱く違和感と不安はそのまま「あの憧れていたアメリカの変わっちまった姿」なんです。
しかしそんな中でもトランプ政権やアメリカ政治を徹底的にバカにしたり、共和党も民主党もリベラルも保守も笑いの対象にする反体制精神や反骨精神はまだありますし、積極的なホストやコメディアンたちの努力もあってポリティカルジョークの灯火は潰えてないと感じます。まだまだSNLは終わっちゃいない!と感じる瞬間が何度もあるんです。「シーズン51は大きな変化が起きる」と総支配人のローン・マイケルズが発言していました。彼の意図とは違うかもしれませんがSNLはよりよくなる(It Gets Better)と信じたいです。
ということで『サタデー・ナイト・ライブ』シーズン51は2025年10月4日から開始です!それではニューヨークよりサタデーナイトライブ!
2025/09/14追記:「7.エゴ・ウォデムが卒業」と、それに関連する人種多様性、女性キャスト数に関する文章に加筆修正しました。