トランプが大統領に主任して以来、世界がきなくさくなってきている。
グリーンランドやパナマをアメリカの領土にする、メキシコ湾をアメリカ湾へと呼称変更する、呼称変更に応じなかったAP通信にたいして取材拒否、USAIDの解体、その他政府機関の人員大幅削減、パリ協定の再離脱、なによりロシア・ウクライナ戦争にたいする対応
かつてのトランプ政権でも大言壮語を言ってはいたものの、そこまで大きな変化は起きなかったと記憶している。しかし今期のトランプ政権は就任一か月そこらでこれまでのアメリカ像を根底から否定してみせるようなことばかり行っている。
USAIDの解体にしても世界のトップを走る国の責務としてこれまでは途上国支援、国際開発を行ってきたけれどそれもリセットした。
アメリカはリベラルデモクラシーを代表する国で西側諸国と連帯して権威主義国家との利害調整を行い、緊張関係を維持してきたがそれもリセットし、直近の報道だけ見るとウクライナよりもロシア側についているようにすら見える。
こうしたトランプ政権の動きを見ていると、アメリカ発の多様性やDEIといったリベラルの理念も終わりに向かう気がしてならない。温暖化や脱炭素化の議論もサステンドすることは目に見えている。LGBTの議論も後退することになるはずだ。アメリカ(リベラル)の理念がここ十年ほど日本含む世界中を覆っていたけれどそのようなトレンドは終わりつつある。
今後はアメリカの理念で世界が動くのではなく、ゼレンスキーがそうだったように各国はアメリカの顔色を伺うことを余儀なくされるようになる。
なんとも不穏な時代に突入したことを感じざるを得ない。
トランプ就任による世界情勢の変化とリベラルの失墜もそうだが、日本国内でも問題は山積みで埼玉で道路に穴があいたようなインフラの問題はこれからますます顕在化してくる。インフラ整備に予算を回したいところだが、トランプの振る舞いは日米同盟が事実上機能しないことを証明したと言ってさしつかえないことから防衛費も増額せざるを得ず、その原資となる歳入を支える現役世代はすでにして余裕がない。少子化によりこれからもっと厳しくなることも目に見えており、アメリカにも頼れなくなった今、政府関係者は本当に頭を抱えているのではないだろうか。
こうした国内情勢とアメリカの変化を見るに日本国内でもリベラル勢力は失墜していくことになるのではないか。これまでの日本のリベラルはアメリカのリベラルをなぞってきた。metooをはじめとした女性の人権、キャンセルカルチャーなどアメリカの威を借る形で言論を展開してきたところがあるが、その大本たるアメリカがこの結末である。ヨーロッパでも右に旋回しはじめてきた節があり、リベラルが手本とする社会は論文の中だけということにすらなりかねない。
その状態でリベラルの理念が日本国内でこのまま機能するかと言えばかなり疑わしいところがある。
世界は変わった。ものの一か月で、である。
しかしなるべくしてなった、とも言える。教条主義的なところがあったリベラルはwokeとして揶揄され市民の支持を得ることが難しくなってきていたのはここ数年ずっとそうだった。逆にバックラッシュが起きてアンチリベラルが台頭してきた。そうしたリベラルへの反発は冷笑主義として棚上げされてきたわけだが、ついに棚から転がり落ちてきてもはや手がつけられなくなった。
気候変動や同性愛といった自分の外へ目を向けることはなくなり、スマホに目を落とすように社会を見る。人々は近視眼的になった。
昨日、僕が住む町は暑かった。しかし今日は雪が降っている。こんな気温差はかつてなかった。しかしだからなんだ、と言うのが今のアメリカであり今後の日本であるように思う。
それが良いことなのか悪いことなのかはわからないが、リベラルユートピアの理想は一旦その役割を終えたのではないか。ここ一ヶ月のトランプ政権の動向を見るとそう思えてならない。
もっともトランプがそうしたというよりはピーター・ティールが望んだ通りになったと見たほうが正確な気がしている。副大統領のヴァンスは上院議員になる際、ピーター・ティールの支援を受けて当選したという経緯がある。ピーター・ティールはテクノリバタリアニズムを標榜しており、民主主義は衆愚政治だと言ってテクノロジーによって新自由主義を実現しようとしている人物である。リベラルにたいして保守回帰的な思想(見捨てられた白人)を持つのがヴァンスであるが、ピーター・ティールはそもそも民主主義は駄目だと言う人物であり、リベラルデモクラシーへの懐疑という点で両者は共通している。
ヴァンスに関しては古い保守主義者のイメージがあるが、ピーター・ティールの思想は大変危険なものであり、軽々と賛同しかねるところがある。テクノリバタリアニズムのみならず加速主義、新反動主義、クリプトアナキズムあたりもそうだが社会をぶっ壊してリセットするみたいな思想を真面目に考えている狂人がアメリカにはそこそこいる。
実際、リベラルの高邁さや民主主義の遅々として進まない手続きに疑問を感じる人は多いはずだ。しかしそれを否定して出てきたのがトランプであり、そのトランプがゼレンスキーにしかけたのがポケモンカードゲームだというのだから笑い話にもなりはしないだろう。