第44回日本認知症学会学術集会(大会長:池内健先生,新潟)において,「新しい認知症危険因子としてのウイルス感染症」をテーマとしたシンポジウムを企画させていただきました.これまで本学会で十分に議論されてこなかったホットトピックスであったこともあり,会場には立ち見が出るほど多くの先生方にお集まりいただき,入室をあきらめる先生が出るほどの盛況となりました.
セッションは,中嶋秀人先生(日本大学)による総論から始まり,森泰子先生(岐阜大学)の水痘・帯状疱疹ウイルス,横山和正先生(東静脳神経センター)の単純ヘルペスウイルス,私からのSARS-CoV-2(新型コロナウイルス),そして黒田隆之先生(東京科学大学)のEBウイルスと,各演者よりウイルス感染症と認知症の関連について多角的な議論が展開されました.改めて,認知症予防を考えるうえで極めて重要な視点であると実感いたしました.要点は以下のとおりです.
◆神経向性ウイルス感染が認知症や神経変性疾患の危険因子となることを示す疫学研究が,近年複数報告されている.
◆神経炎症のメカニズムとして,NFκBやcGAS–STINGシグナルなどの関与が明らかになりつつある.
◆アルツハイマー病の病因タンパクであるアミロイドβやタウは,ウイルス感染に対する宿主防御反応として作用している可能性が指摘されている.
◆病態に関連する機序として,病因タンパクの凝集(おそらくこれはウイルスに対する防御反応),神経炎症,血液脳関門破綻,他ウイルスの再活性化など複数の経路が考えられる.
◆帯状疱疹ウイルスに対するワクチン接種が認知症予防に有効であるという質の高いエビデンスが2つ報告された.また,新型コロナワクチンについても,罹患後症状を予防するとのメタ解析が示されている.
◆認知症予防の観点から,感染予防およびワクチン接種について市民への啓発を進めていくことが今後一層重要となる.
最後に,本シンポジウムを大いに盛り上げてくださった演者の先生方に改めて深く御礼申し上げます.また,会場で熱心にご参加いただき,活発なご質問とご意見をお寄せくださった多くの先生方に心より感謝申し上げます.

