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病原性が低いと思われていたヒトペギウイルスは自己免疫性脳炎やパーキンソン病と関連する!

ヒトペギウイルス(HPgV)は,フラビウイルス科に属する一本鎖RNAウイルスです.血液・性的接触・母子間などで感染しますが,多くの感染者は無症状のまま経過します.血中で持続的に存在することがありますが,これまで「病原性が低いウイルス」と考えられてきました.しかし近年,先日のHBV脳炎でご紹介したように次世代シーケンス(mNGS)が診断目的に導入され,一部の症例で中枢神経系や免疫応答に影響を及ぼしうることが報告されはじめています.病態としては,ウイルスそのものの直接的な神経感染に加えて,免疫反応を介した病態への関与も注目されています.最近,HPgVの関連した神経疾患について興味深い論文が2つ報告されています.

まず,ジョンズホプキンス大学のTagaらは,既往歴のない21歳男性が頭痛と発熱に続いて認知・行動異常を呈し,最終的にオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群を呈しました.脳脊髄液検査,自己免疫性脳炎の各種抗体,腫瘍検索では原因を特定できませんでした.このためmNGSを行ったところ,HPgV配列が検出され,続いて標的RT-PCRでもその存在を確認しました.頭部MRIでは橋,延髄,中脳および脊髄にT2高信号病変が認められ,いわゆる脳幹・脊髄を中心とする脳脊髄炎の像を呈しました(図1).延髄(A),橋および歯状核(B),中脳(C)の高信号域, DWI(D)およびADC(E)での脳梁における細胞障害性病変を示唆する信号異常,頸髄にわたる長大な病変(F, G),頭部から馬尾まで及ぶ広範な髄膜増強効果(H-J)を認めます.治療として免疫グロブリン大量静注療法を行ったところ,オプソクローヌス・ミオクローヌスは速やかに消失し,1年後には後遺症なく回復しました.著者らは,HPgVが直接神経細胞を障害したというよりも,免疫反応を介して中枢神経障害を引き起こした可能性を考えています.

一方,ノースウェスタン大学Hansonらは,HPgVがパーキンソン病(PD)の病態に関与する可能性を議論しています.10例のPD患者脳組織のうち5例からHPgV遺伝子が検出され,一方,対照14例では全例陰性でした.興味深いことに,免疫染色ではオリゴデンドロサイト内にHPgV由来タンパクが認められ,中枢神経内感染が示唆されました(図2).さらにHPgV陽性のPD患者では,神経原線維変化のBraakステージがより進行しており,グルタミン酸放出に関与するComplexin-2が増加していました.

また,血液レベルでは,HPgV陽性PD患者でIGF-1の上昇とpS65-Ubの低下が認められました.IGF-1の上昇は,進行する神経変性に対する代償的な神経保護反応と考えられます.一方,pS65-Ubの低下は,障害を受けたミトコンドリアを選択的に除去する仕組み(ミトファジー)が十分に働いていない状態を示唆します.さらに免疫シグナル解析では,HPgVは炎症を単純に促進あるいは抑制するのではなく,免疫応答全体の振れ幅を小さくする方向に働くことが示唆されました.このため,PD患者同士を比較すると,IL-4もMMP-9も相対的に低下してみえる点が今回の重要な所見です(図3).加えて注目されるのは,この免疫応答の変化が,パーキンソン病の代表的な遺伝的リスクであるLRRK2変異の有無によって異なる方向性を示すことです.LRRK2は免疫応答の「反応の強さ」を調整する遺伝子であり,その変異があると免疫系は刺激に対して過敏になります.そのため,免疫の振れ幅を小さくしようとするHPgVの作用が,変異の有無によって異なる方向に現れると考えられます.非常に複雑です.いずれにせよ,「ウイルス感染」と「遺伝的素因」が相互に作用して神経変性の進行に影響しうる可能性が示された点に,本研究の新規性と臨床的意義があります.

1)Taga A, et al. Bridging the Gap: Opsoclonus-Myoclonus Syndrome — Human Pegivirus Encephalomyelitis Diagnosed Through Metagenomic Next-Generation Sequencing. Neurology. 2025;105(6):e214091. doi.org/10.1212/WNL.0000000000214091

2)Hanson BA, et al. Human pegivirus alters brain and blood immune and transcriptomic profiles of patients with Parkinson’s disease. JCI Insight. 2025;10(13):e189988. doi.org/10.1172/jci.insight.189988

 




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