進行性核上性麻痺(PSP)は,中脳や大脳皮質にタウが蓄積し,運動障害や認知機能障害を引き起こすタウオパチーの代表的疾患です.これまで,神経炎症とタウの脳内伝播が病態進行に関与すると考えられてきましたが,その直接的証拠は限られていました.今回紹介する2つの研究は,TSPO PET画像と死後脳との対応づけ,およびタウのシナプス伝播機構の可視化というアプローチで,PSPの病態理解を大きく進めるものです.
1つ目の研究(Wijesingheら,Brain 2025)は,生前にTSPO PET(¹¹C-PK11195)を受けたPSP患者8名の死後脳を用いて,PETシグナルの細胞学的起源を追究しています.TSPOは近年,神経炎症の指標としてPETで広く使用されていますが,実際にどの細胞に由来するのかは議論の余地がありました.この研究では,TSPOは血管および血管外に存在するものの,病的増加に関してはミクログリアに由来することを示しています.つまりミクログリアマーカー(IBA1)とTSPOの共局在が顕著であり,アストロサイト(GFAP)との共局在はわずかでした(図1左).さらに,生前のTSPO PETシグナルは,死後のCD68陽性の貪食型ミクログリアの量と有意に相関していました(図1右).以上より,PSPにおけるTSPO PETシグナルは主にミクログリア由来の神経炎症を反映していることが明らかとなり,TSPO PETがタウオパチーにおける信頼できるバイオマーカーとなり得ることが示されました.

2つ目の研究(McGeachanら,Nature Neuroscience 2025)は,PSPにおけるタウのシナプス伝播と,それに伴うシナプス消失のメカニズムに迫ったものです.PSP患者の死後脳の中脳黒質および前頭葉を用いたアレイ・トモグラフィー(超薄切片を連続的に撮影し,それらを立体的に再構成する顕微鏡技術)により,リン酸化タウ(AT8)やオリゴマー性タウ(T22)が,シナプス前・後終末の両方に蓄積する様子が可視化されました(図2).特に,前終末にタウを含むシナプス対では,後終末にもタウが存在する割合が,前終末に含まない場合と比べ86倍高く(図2iの0.33%と28.4%の比),タウがシナプスを介して伝播していることが示されました.さらに,アストロサイトがタウを含むシナプスを貪食している様子が電子顕微鏡でも確認され,ミクログリアよりもアストロサイトがシナプス消失に寄与していることが示されました.また,PSP脳抽出物を生体ヒト脳スライスに添加すると,オリゴマー性タウがシナプス後終末に取り込まれ,アストロサイトが活性化し,シナプスを貪食する現象が再現されました.つまりタウオパチーに対するタウ抗体療法が「シナプス内タウ」に焦点を当てるべきであることが示唆されます.加えて,著者らはプロテオーム解析を行い,シナプス内でclusterinが増加しており,オリゴマー性タウと10nm以内の距離で共局在していることを示し,clusterinがタウのシナプス伝播を媒介している可能性を指摘しています(治療標的になるかもしれないということです).

これら2つの研究は,一方はPSPではミクログリアによる神経炎症が生じていることを示し,もう一方はタウの伝播とアストロサイトによるシナプス喪失を来すことを示しました.ミクログリアとアストロサイトも病態に関わっているということです.またいずれの研究にも共通する点として,明確な仮説を持ち,それを示すために古典的な病理学的手法と最新技術(PETやプロテオーム解析)を併用していることが挙げられます.非常に参考になると思いました.
Wijesinghe SS, et al. Post-mortem validation of in vivo TSPO PET as a microglial biomarker. Brain. 2025;148(6):1904–1910. doi.org/10.1093/brain/awaf078
McGeachan RI, et al. Evidence for trans-synaptic propagation of oligomeric tau in human progressive supranuclear palsy. Nature Neuroscience. 2025. doi.org/10.1038/s41593-025-01992-5