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揺らぐアミロイド仮説?―剖検脳にみるアミロイドβ除去の限界―

Acta Neuropathologica誌にインパクトのある論文が掲載されています.アミロイドβ抗体であるガンテネルマブの効果を複数の剖検脳で直接検討した報告であり,ワシントン大学を中心とするグループによって行われました.この研究は,常染色体顕性遺伝性アルツハイマー病(DIAD)を対象とした臨床試験「DIAN-TU-001」によるものです.

本研究では,DIAN-TU試験に参加した患者のうち,ガンテネルマブを投与された4例,ソラネズマブを投与された4例,偽薬投与または未治療の2例の計10例の剖検脳と,対照として観察研究(治験非参加)に登録されたDIAD患者10例の脳を検討としました.具体的にはアミロイドβ(Aβ)沈着,タウ病理,ミクログリアおよびアストロサイトの活性化について,脳の10領域にわたって定量的免疫組織化学解析を行っています.

まず注目すべき結果として,ガンテネルマブの累積投与量と脳内のAβ沈着量の間に有意な負の相関を認めました(図1).すなわち,ガンテネルマブの投与量が多い患者ほど,Aβの沈着量は減少することが示されました.Aβの完全な除去には至らなかったものの,ほぼすべての領域で沈着量の減少が確認されました.以上よりAβ除去効果は用量依存的であることが初めて病理学的に実証されたことになります.つまりDIAN-TU試験は,臨床的には「認知機能低下の抑制」という主要評価項目を達成できず,治験としては失敗と結論づけられましたが,ガンテネルマブがAβを効果的に除去するという生物学的作用については,病理学的に裏付けられたと言えます.一方,ソラネズマブ投与群では,Aβ沈着量は対照群との間に有意差はなく無効でした.

つぎにAβ除去がタウ病理や神経炎症に与える影響について検討がなされました.しかしその効果はほとんどありませんでした.論文のSupplementary Figure 3では,リン酸化タウを標識するPHF1抗体を用いて評価したタウ病理の面積率は,ガンテネルマブ群と対照群の間に有意差がなかったことが示されています(図2).同様にミクログリアやアストロサイトの活性化指標(IBA1抗体,GFAP抗体)についても有意差は認めませんでした.すなわち,Aβの除去では,認知機能障害とより密接に関係する下流の病理変化―タウの蓄積や神経炎症―を改善するには不十分である可能性が示唆されます.

以上の結果は,アミロイド仮説に対する根本的な問いを提起します.すなわち「Aβを除去するだけでは,アルツハイマー病の進行を止めることはできないのではないか?」という疑問です.あるいは「より早期に,かつより強力な治療レジメで介入しなければ,病態の進行を止めることはできない」という可能性もあるかもしれません.いずれにせよ,抗アミロイドβ療法が真に「疾患修飾的」と認められるためには,Aβの除去がタウ病理や神経炎症といった下流の病態を抑制することを明確に証明する必要があると思います.

Chen CD, et al. Immunohistochemical evaluation of a trial of gantenerumab or solanezumab in dominantly inherited Alzheimer disease. Acta Neuropathol. 2025;149:57. https://doi.org/10.1007/s00401-025-02890-7




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