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なぜALSで眼球運動は保たれるのか?変性にレジリエンスをもつ神経細胞に学ぶ治療のヒント

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さてALSにおけるCharcotの陰性4徴候のひとつに,眼球運動障害が生じにくいという点があります.これは多くの医学生も知っている基本的な知識であり,私もALSでは,病状がかなり進行するまで眼球運動が保たれると教えています.しかし,なぜこのような現象が生じるのかと問われると説明ができませんでした.ところが最近,Brain誌のオピニオン欄にミラノ大学等から報告された一本の論文に,その謎を考える大きな示唆を与えられ,思わずハッとさせられました.

それは神経ごとに「抵抗性(内因性レジリエンス)」があるという仮説です.まず図1では,運動ニューロンの抵抗性が,細胞体の大きさ,軸索の長さ,分岐の多さ,活動頻度などの構造的・機能的特徴と関連している可能性を示しています.急速易疲労性運動ニューロン(ジャンプや短距離走など短時間・高出力の動作に関与する)は,太くて長い軸索を持ち,広範な筋肉群に分岐しており,エネルギー需要が高く,小胞体(ER)ストレスへの感受性も高いため,ALSにおいて最も早期に変性します.これに対し緩徐運動ニューロン(姿勢保持や長距離走など持続的運動に関与する)や動眼神経は,軸索が細く短く,分岐も少ないため,エネルギー負荷が低く,より高いレジリエンスを示します.つまり,神経ごとの構造的・機能的な違いが選択的な神経変性に反映されるという仮説です.



図2Aでは3種類の運動ニューロンについて,各種分子の発現レベルとERストレスの程度が示されており,ALSに対して強いか弱いかが一目でわかります.



それ以降は過去の論文報告のまとめで,図2Bでは,動眼神経で高発現しているSYT13(Synaptotagmin 13)遺伝子を急速易疲労性運動ニューロンに導入することで,神経細胞の変性を防げることがマウスモデルで示されたことを表しています.図2Cは抵抗性のある動眼神経ニューロンにMMP(matrix metalloprotease)を加えてもなお抵抗性を示すことを表しています.また図2Dでは,培養運動ニューロンに対する興奮性毒性に対し,CYPIN(別名GDA)を培地に添加することで部分的に保護できることを示しています.さらに,図2Eでは培養運動ニューロンにおいてSYT13が片方のコピーしかないと,タンパク凝集やシナプス消失などALSに類似した表現型が再現されることを表しています.



ALSの病態にはグリア細胞や免疫細胞など複数の細胞種が関与しますが,そうは言っても神経細胞固有の性質が変性に大きく影響するという考えです.今後,単一細胞レベルや空間トランスクリプトーム解析などの技術を駆使して,各タイプごとの髄運動ニューロンの分子特性がさらに解明することが期待されます.そしてレジリエンスを持つ神経細胞の分子特性が解明されれば,その特徴をレジリエンスの弱い神経細胞に導入するという新しい治療につながると考えられます.

Corti S, Hedlund E. Intrinsic neuronal resilience as a tool for therapeutic discovery. Brain. 2025;148(4):1058–1061. https://doi.org/10.1093/brain/awaf010




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