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アルツハイマー病は単一の疾患ではなく,多様な要因が重なった「症候群」として捉えるべき

Nature Reviews Neurology誌のPerspective欄で,アルツハイマー病(AD)が単一の疾患なのか,それとも複数の病態が重なった「症候群」なのか,テルアビブ大学とUCSFの2名の先生が議論しています.

まずADの定義の曖昧さが指摘されています.従来,ADはアミロイドβ(Aβ)による老人斑とタウによる神経原線維変化が脳内に形成され,進行性の認知機能低下を引き起こす病気」とされてきました.しかし,この定義には複数の問題があります.例えば,①Aβやタウの蓄積があるにもかかわらず認知症を発症しない人が存在すること(resilienceと呼びます),②レビー小体型認知症(DLB)やLATE-NC(limbic predominant age-related TDP43 encephalopathy-neuropathological change)など,他の神経変性疾患でも同様の病理変化が見られること,③ADの神経病理学的変化が必ずしも認知機能の低下と直結するわけではないこと,④Aβの除去が神経変性の進行を止めないこと,です.

以上のような理由から,著者らはADを単一の疾患ではなく,多様な要因が重なった「症候群」として捉えるべきだと主張しています.症候群であると考える根拠としては,まずADの臨床像や病理学的特徴は発症形式によって大きく異なることを挙げています(表).例えば,遺伝性(常染色体顕性)AD(ADAD)では発症年齢が50歳未満と早く,アミロイドβ沈着がより広範囲に及びますが,孤発性晩発型AD(LOAD)は65歳以上で発症し,進行は緩やかで,病理的多様性がより顕著です.また孤発性早発型AD(EOAD)は,病理学的にはADADに似ているものの,タウの蓄積パターンや神経変性の速度が異なることが分かっています.これらの違いは,ADが単一の疾患ではなく,複数の異なる病態が収束したものであることを示唆しています.



またADの発症には多くの遺伝的・環境的要因が関与していることが示されています.ApoE遺伝子のような遺伝因子だけでなく,難聴,高コレステロール血症,高血圧,糖尿病,運動不足,睡眠障害,社会的孤立などの環境因子がADのリスクを高めることが明らかになっています.近年,日本を含めた高所得国ではADの発症率が低下しているという報告もあり,これらのリスク因子への介入がAD発症予防に有効である可能性が示唆されています.

さらに治療の観点からも,ADを単一の病気とみなすことの限界が指摘されています.Aβを標的とした抗体療法(レカネマブ,アデュカヌマブなど)は,Aβの除去には成功しているものの,認知機能の低下を食い止める効果は限定的です.これはAβがADの主因ではなく,より複雑な病態の一部に過ぎない可能性を示唆しています.実際,タウの蓄積や神経炎症,血管障害など,他の病理的要因の影響も無視できません.このため,今後の治療戦略としては,単一の病理に焦点を当てるのではなく,多角的なアプローチを採ることが求められると思います.

著者らは今後の研究では,単に病理学的特徴に基づく分類をするのではなく,個々の患者の遺伝的・環境的背景を考慮した個別化医療の導入が必要であると述べています.さらに,認知症の発症を防ぐためには,Aβの除去だけでなく,生活習慣の改善や多面的な介入を組み合わせることが重要であると指摘してています.私もこの考えの方が科学的だと思いました.抗体療法に関心が集まっていますが,難聴や高コレステロール血症,社会的孤立などの「認知症予防の14因子」に地道に取り組んでいくほうが案外,効果が大きいのではないかと私は思っています.

Korczyn AD, Grinberg LT. Is Alzheimer disease a disease? Nat Rev Neurol. 2024;20:245-251. (doi.org/10.1038/s41582-024-00940-4



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