この研究で特に注目されるのは,PSPの病態進行にオリゴデンドロサイトが関与している可能性が示唆された点です.オリゴデンドロサイトの重要性は2022年にも指摘されていました.図の上段はC4A(マゼンタ),リン酸化タウ(AT8,緑),およびOLIG2(オリゴデンドロサイトのマーカー,茶色)の三重免疫染色です.対照群(a)ではリン酸化タウとC4Aはほとんど染まりませんが,PSP群(b)ではOLIG2陽性のcoiled body(PSPで認めるオリゴデンドロサイトにおけるタウ蓄積:緑および茶色)においてC4Aの共局在が示されています.一方,アストロサイト(tufted astrocyte)や神経細胞(神経原線維変化)ではC4Aは陰性でした.またC4A陽性軸索数(c)は,PSP群で有意に多く,C4A陽性軸索の長さ(d)は,PSP群で有意に短いことも分かりました.C4Aα鎖の免疫ブロット(e)ではPSP群で有意に発現レベルが高いこと,さらに末梢血全血におけるC4A mRNA発現(f)もPSP群で有意に高いことが分かり,診断マーカーとして使用できる可能性も出てきました.

以上より,PSPは単なるタウタンパクの異常に起因する神経変性疾患ではなく,免疫系・補体系が病態の進行に深く関与することが示唆されました.PSPやその他のタウオパチーにおいて,C4Aやオリゴデンドロサイトが治療標的として検討されることになると思います.
Farrell K, et al. Genetic, transcriptomic, histological, and biochemical analysis of progressive supranuclear palsy implicates glial activation and novel risk genes. Nat Commun. 2024 Sep 9;15(1):7880. doi: 10.1038/s41467-024-52025-x.