参加者は45~65歳の認知機能に障害のない38名で,偽薬群13名(グラフの赤),スボレキサント10mg群13名(青), 20mg群12名(緑)に無作為に割り付けました.20:00から36時間,2時間ごとに腰椎留置カテーテルで6 mlの脳脊髄液を採取しました.そして参加者は21:00に偽薬またはスボレキサントを内服してもらいます.免疫沈降法と液体クロマトグラフィー質量分析法により,アミロイドβ,タウ,リン酸化タウを測定すると,リン酸化タウ(スレオニン181)と非リン酸化タウ(スレオニン181)の比は,偽薬と比較して,スボレキサント20mg群で10~15%減少しました.その他のタウリン酸化(セリン202およびスレオニン217)はスボレキサントによって減少しませんでした.一方,スボレキサント20 mgは偽薬と比較して,内服5時間後からのアミロイドβを10~20%減少させました.

以上より,通常の内服量であるスボレキサント20 mg は,脳内におけるタウリン酸化とアミロイドβの濃度を短時間で低下させることが示されました.ただしスレオニン181のリン酸化が抑制され,セリン202とスレオニン217が抑制されないのかはDiscussionでも議論されていますがよく分かっていないようで,追試もしくは機序の解明が必要なようです.いずれにしても日常診療で使用されている睡眠薬で,副作用(傾眠,頭痛,疲労)も許容範囲,今後アルツハイマー病予防薬としてrepositioningされる可能性があります.長期的効果はレカネマブと比較してどうなのだろう?ととても注目されます.
Lucey BP, et al. Suvorexant acutely decreases tau phosphorylation and Aβ in the human CNS. Ann Neurol. 2023 Mar 10.