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新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(1月23日):性急な5類への引き下げはすべきではない

今回のキーワードは,二価ワクチンは接種後70日までの入院率および死亡率を顕著に低下させる,マウスモデルにおける脳へのウイルス血行感染はワクチン接種で抑制できる,上気道からSARS-CoV-2ウイルスのクリアランスが遅い場合にbrain fogが生じる,PCR陰性になってもウイルスはかなり長期に肺の特定の細胞で持続感染している,軽症感染後の後遺症のうち1年以内に消失するものとしないものがある,long COVIDの6つの病態機序と小児long COVIDの特徴,COVID-19認知症の機序として海馬歯状回の神経細胞の新生・成熟障害が示唆される,COVID-19頭痛の3タイプとその病態・意義,です.

政府はCOVID-19の感染症法上の位置付けを2類相当から5類へ変更し,また屋内でのマスク着用原則の廃止も検討しています.全面緩和を急ぐ背景には,防衛費や子ども予算の増額を控える中,100兆円超をつぎ込んだコロナ対策費に歯止めをかけ,財政負担を軽減したい狙いがあると報道されています.しかし5類への変更で「就業制限✕,入院勧告✕,診療・入院医療機関の指定✕,医療費の公費負担✕,」となり,当然,感染伝播が増え,ワクチン接種者も減ります.すでに全面緩和に踏み切った英国では,人口の4〜6%ぐらいが感染し,常時感染者がいる状況,いわゆるエンデミック期(常在化)に入ったと言われています(下記参考資料参照).そうすると以下の事態が生じると予想されます.

1)高齢者や基礎疾患を持つ患者,一部の若年者の重症化・死亡のさらなる増加
2)再感染者の増加 → 初回感染より予後や後遺症が悪化
3)後遺症をもつ患者の増加(認知症などの後遺症はほとんど無視されている)
4)救急医療の常時逼迫 → 通常医療困難,超過死亡の増加
5)医療者のバーンアウト・離職 → さらなる医療の破綻

政府方針の通り全面緩和すれば「感染が高いレベルで持続し,国民の健康に大きな影響が及ぶ」ことを認識する必要があります.下記に説明するように,ウイルスの持続感染とワクチンの有効性を示すエビデンスがさらに蓄積されています.性急に5類に引き下げるのではなく,可能なものから徐々に緩和を進めるべきと思います.とくにマスク着用原則の廃止など急ぐ必要はないと思います.
参考資料:BuzzFeed 「緩和しても流行は終わらない」イギリスの教訓から探る、日本の選択肢(2023年1月20日)

◆二価ワクチンは接種後70日までの入院率および死亡率を顕著に低下させる.
二価ワクチンによるブースター接種が推奨されているが,入院や死亡の抑制効果に関するエビデンスが求められる.イスラエルから後方視的コホート研究が報告された.対象は65 歳以上とした(過去3ヶ月以内にワクチン接種ないし感染した人,および最初の2回のワクチンを完了していない人は除外).対象62万2701人のうち8万5314人(14%)が70日間の研究期間中に二価ワクチンの接種を受けた.COVID-19に伴う入院は接種者で6人,非接種者で297人に発生し,調整後ハザード比(HR)0.19であった(図1).COVID-19に伴う死亡は,接種者で1人,非接種者で73人に発生し,調整後HRは0.14 であった.二価ワクチンのブースター接種は,接種後70日までのCOVID-19に伴う入院率および死亡率を低下させた.→ 「変異株は弱毒化したし,ワクチンは有料だから・・・」などと油断しないほうが安全.
Lancet preprint. Jan 3, 2023 (http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.4314067)



◆マウスモデルにおける脳へのウイルス血行感染はワクチン接種で抑制できる.
スペインからの研究.ヒトACE2受容体を導入したマウスを用いた感染モデルにて,ウイルスの脳内における感染と複製を時間・空間的に検討した.脳の腹側領域(前脳基底部,視床下部扁桃体)に最初に感染し,感染4日目にウイルスの複製が検出された.嗅球は6日後に感染が確認された.有窓性血管による血液脳関門を豊富に認める視床下部において複製レベルが最も早く,高度であることから,血行性感染が主要の侵入経路と推測された.ウイルスの複製は主に神経細胞で起こり,著しい神経細胞死を誘発した.また病理学的にグリア細胞活性化,血管障害を認めた.スパイク蛋白を発現する改良型ワクシニアウイルスアンカラベクターMVA-CoV2-S)を1回または2回事前に接種すると,脳のすべての領域におけるウイルス複製とそれに伴う病理変化が抑制された(図2).MVA-CoV2-Sワクチンは脳保護のための有望と考えられた.
Nat Neurosci. 2023 Jan 9.(doi.org/10.1038/s41593-022-01242-y)



◆上気道からSARS-CoV-2ウイルスのクリアランスが遅い場合にbrain fogが生じる.
米国ジョン・ホプキンス大学からのプレプリント論文.入院していない軽症73名を検討した.COVID-19急性症状発症から90日以上経過した時点でのbrain fogおよび筋痛は,年齢,性別,肥満,およびワクチン接種状況を調整すると,COVID-19急性期症状発症から28日以内のウイルスRNAリアランスと負の相関を示した(brain fog:絶対リスク減少率0.46,筋痛0.28)(図3).以上より,COVID-19急性発症から90日以上経過した時点で,少なくとも2つのling COVID症状が,上気道からSARS-CoV-2ウイルスRNAのクリアランスまでの時間と関連していることが示された.
medRxiv. Jan 19, 2023.(doi.org/10.1101/2023.01.18.23284742)



PCR陰性になってもウイルスはかなり長期に肺の特定の細胞で持続感染している.
イタリアから,鼻咽頭ぬぐい液や肺胞洗浄液で連続11〜300日(平均105.5日)PCR陰性ながら病状が進行した連続27症例の剖検を解析した(3例は9カ月以上,PCR陰性).23/27例(81%)で間質性肺炎が認められ,13例(47%)で広範な線維化を認めた.ウイルス学的寛解が見られたものの,肺病理はCOVID-19急性期患者に見られたものと同様であった.スパイクおよびヌクレオキャプシド蛋白の検索では,気管支軟骨細胞および気管支腺上皮細胞への感染が高頻度(70%)に認められた.また,少数の患者(19%)では,血管周皮細胞や内皮細胞でも陽性であった.組織溶解液の定量的RT-PCRにより,ウイルスRNAの存在が確認された.以上より,SARS-CoV-2感染は標準的なPCR陰性検査で示唆されるよりもかなり長く持続し,肺の特定の細胞に感染している可能性が示唆された.
J Pathol. Jan 18, 2023(doi.org/10.1002/path.6035)

◆軽症感染後の後遺症のうち1年以内に消失するものとしないものがある.
軽症患者における1年後の後遺症(long COVID)を後方視的に検討した研究がイスラエルから報告された.2020年3月から2021年10月の間にPCR検査を行った191万3234人を対象とした.リスクは感染後初期(30~180日)および後期(180~360日)で検討した.X持続した:嗅覚障害・味覚障害(ハザード比 早期4.59,後期2.96),認知障害(1.85,1.69),呼吸困難(1.79,1.30),筋力低下(1.78,1.30),動悸(1.49,1.16)(図4) .男性と女性の差はごくわずかであった.小児では,早期に少数の後遺症のリスクが上昇したが,後期にはベースラインに戻っていた.以上の所見はウイルス株が変わっても一貫していた.ワクチン接種を受けていた感染者は,呼吸困難のリスクが低下したが,他の後遺症は同程度であった.以上より,軽症感染後に認める後遺症のうち脱毛,胸痛,咳,筋痛,呼吸器障害は1年以内に消失する一方,嗅覚障害・味覚障害認知障害は持続することが示された.
BMJ 2023;380:e072529(Jan 11, 2023)



◆long COVIDの6つの病態機序と小児long COVIDの特徴
精力的な研究とSNSでの発信を続けている米国スクリプス研究所のEric J Topol教授らによる総説が発表された.
【病態機序】
病態は以下のものが考えられ,重複して発症をもたらす可能性がある.①組織内にSARS-CoV-2ウイルスが残存すること(持続感染),②EBウイルスやHHV-6ウイルスなどの再活性化を伴うまたは伴わない免疫調節異常,③腸内細菌叢への影響,④自己免疫,分子模倣による免疫系のプライミング,⑤内皮機能障害を伴う微小血管血栓,⑥脳幹および/または迷走神経における機能障害シグナル(図5).



【小児のlong COVID】
あらゆる年齢の小児に影響を与える.15-19 歳のlong COVID患者では,疲労,頭痛,めまい,呼吸困難,胸痛,味覚障害,食欲減退,集中力低下,精神疲労,身体疲労睡眠障害が,同年齢と比べて 2~36 倍も高い.成人と同様に,子供も疲労,認知機能障害を呈する.まれではあるが,肺塞栓症,心筋炎・心筋症,静脈血栓塞栓症,腎不全,1 型糖尿病のリスクが増加する.COVID-19に感染していた女性から生まれた乳幼児は,出産後 1 年以内に神経発達遅延の診断を受ける可能性が高い.中等度から重度のlong COVID青年は,筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と一致した特徴を持つ.long COVIDを経験した小児では,成人と同様の脳の代謝低下が認められる.感染した小児は,数週間後にセロコンバージョンするにもかかわらず,PCR陽性になる確率が成人よりかなり低く,最大で90%の症例が見逃されている.
Nat Rev Microbiol. 2023 Jan 13:1–14.(doi.org/10.1038/s41579-022-00846-2)

◆COVID-19認知症の機序として海馬歯状回の神経細胞の新生・成熟障害が示唆される.
COVID-19に伴う認知症の機序を検討した米国ワシントン大学からの報告.SARS-CoV-2ウイルス感染ハムスターでは,血液脳関門の透過性が亢進するにもかかわらず,ウイルスの脳内侵入を認めなかった.感染ハムスター,およびCOVID-19で死亡したヒト患者は,コントロールと比較して,特に海馬と延髄でミクログリアの活性化とIL-1βとIL-6の発現を認めた.ハムスターとヒトの両方の海馬歯状回では,神経芽細胞と未熟な神経細胞が減少していた.以上より,COVID-19に伴う神経・精神症状は持続的な炎症,血液脳関門の破綻,ミクログリアの活性化が原因となり,神経伝達の変化,神経新生や神経細胞の障害がもたらされるものと考えられた.とくに認知症は海馬の障害により説明できる可能性がある.
Brain. 2022 Dec 19;145(12):4193-4201.(doi.org/10.1093/brain/awac270)

◆COVID-19頭痛の3タイプとその病態・意義
Headache誌による過去2年間の研究の総括.まず感染の治癒後に出現し持続する頭痛として "post-COVID headache"が存在することが明らかになった.治療が難しく,新たな課題となっている.この頭痛には3つのタイプが存在する:①もともと片頭痛歴があり,感染後に突然頭痛が悪化・持続するタイプ,②感染急性期から今までになかった頭痛が出現するタイプ,③急性期後に遅延症状として今までになかった頭痛が出現する.①に関しては,片頭痛患者におけるSARS-CoV-2ウイルス感染は慢性化の要因と推測される.②③は主に片頭痛潜在的に持つ人々に,感染が頭痛を誘発できる可能性を示唆する.機序に関して,ウイルスが三叉神経血管系に影響を及ぼし,持続する頭痛を引き起こす可能性がある.また頭痛はCOVID-19では生存を高めるための宿主の反応である可能性が指摘されている.これは48の研究(4万3169人の患者を含む)のメタ解析が根拠となっている.つまり頭痛のあるCOVID-19患者の生存率は,頭痛のない患者に比べて有意に高かったのだ.この驚くべき結果は,頭痛の背後に生態の保護機構が存在する可能性を示唆する.
Headache. Jan 12, 2023(doi.org/10.1111/head.14464)





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