以下の内容はhttps://pkcdelta.hatenablog.com/entry/2022/12/04/063021より取得しました。


新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(12月4日)

今回のキーワードは,もっとも高頻度のCOVID-19急性期神経合併症は認知機能障害である,SARS-CoV-2感染は短期間にアルツハイマー病類似の神経炎症パターンを再現する,歯肉のバイオフィルムと口蓋扁桃およびアデノイドがSARS-CoV-2ウイルスリバーバーである,COVID-19後に発症するけいれん発作・てんかんはインフルエンザと比べ非入院患者や小児で多い,脳障害バイオマーカーの増加と炎症性サイトカインの関連は,他のウイルス感染患者でも発生する,です.

現在,第8波の只中です.本邦ではオミクロン変異株BF.5が主流になりつつあるようですが,若年者でも命に関わる重篤な神経合併症を来たします.当科でも劇症脳炎患者の治療中です.感染予防とワクチン接種の励行をぜひお願いしたいと思います.

さて第41回日本認知症学会学術集会(東京)にて,「COVID-19は認知症の新たな危険因子か?」というシンポジウムを開催しました.オミクロン変異株での長期的なデータはこれからですが,少なくともこれまでのデータでは答えはYESです.認知症をきたすウイルスはSARS-CoV-2が初めてではなく,HIVHSV,EBV等が挙げられますが,COVID-19は感染者が多数であり,将来への影響が大きな問題です.学会で私は病態機序について提示しました.ウイルスが嗅覚伝導路を介して眼窩前頭皮質などに感染し萎縮をもたらすことや,ウイルスの持続感染説が有力で,ウイルスが何らかの組織・臓器(リザーバー)に潜む可能性があること,ウイルス感染がアルツハイマー病理を加速する可能性があることなどについて解説しました.下記をご参照いただければと思います.

日本認知症学会学術集会スライド

毎日新聞(有料記事)

◆もっとも高頻度のCOVID-19急性期神経合併症は認知機能障害である.
COVID-19第1波流行時(2021年7月31日まで)に欧州神経学会が作成した登録データを使用し,1523人の患者の神経合併症と転帰を検討した国際研究が報告された.欧州23カ国と非欧州7カ国において,入院,外来,救急外来を受診したCOVID-19患者に関するデータを収集した.神経合併症は1213人(79.6%)で認められ,978名(64.2%)が基礎疾患として1つ以上の全身/神経系の慢性疾患を有していた.急性/亜急性神経合併症の主なものは,認知機能障害(29.5%)が最も多く,ついで脳卒中(25.7%),睡眠覚醒障害(16.4%),自律神経障害(14.7%),末梢神経障害(9.5%),運動異常症(9.3%),運動失調症(8.8%)および痙攣発作(8.3%)であった.これらの合併症は,年齢,全身および神経系基礎疾患,感染の重症度・非神経症状,転帰等に差があり特徴が異なる.
Eur J Neurol. Oct 31, 2022(doi.org/10.1111/ene.15617)

SARS-CoV-2感染は短期間にアルツハイマー病類似の神経炎症パターンを再現する.
SARS-CoV-2感染は,アルツハイマー病(AD)の発症や重症化を促進する可能性が指摘されている.英国からSARS-CoV-2感染者,AD,SARS-CoV-2感染AD患者剖検例における前頭葉皮質Brodmann 第9野(BA9)と海馬の転写産物および病理学的特徴を比較した研究が報告された.転写産物をvolcano plotを用いて解析すると3群は概ね同じ傾向を示し,ADとSARS-CoV-2感染ADを比較すると,BA9および海馬の双方で顕著に類似していた.具体的には神経炎症,TREM1(炎症反応に関与),細胞老化などの経路が活性化し,逆に神経伝達物質の放出にかかわるSNARE活性化の低下を認めた.また病理学的にはウイルスは血管内皮に局在し,ミクログリアは血管周囲に存在し,SARS-CoV-2感染AD患者では有意なミクログリア結節性病変の増加が認められた(結節性病変はHSVHIVなどのウイルス感染症等で見られる所見;図1).またHIF-1αはADの有無にかかわらず,SARS-CoV-2感染により著しく発現が上昇した.以上より,SARS-CoV-2感染とADにおいて,転写および細胞レベルで同様の神経炎症プロファイルを認めた.つまりSARS-CoV-2感染が短期間に,転写および細胞レベルでAD類似の神経炎症パターンを再現し,ADの病態を促進する可能性が示唆された.
bioRxiv [Preprint]. 2022 Nov 23:2022.11.23.517706.(doi.org/10.1101/2022.11.23.517706)



歯肉のバイオフィルムSARS-CoV-2ウイルスリバーバーである.
SARS-CoV-2ウイルスのリザーバーを検索したブラジルからの研究.ICU入室患者から採取した歯肉上および歯肉下のバイオフィルム(微生物が固相表面に形成した集合体)中のSARS-CoV-2 RNAの存在について検討した.COVID-19陽性者52名のうち26名(50%)がPCR陽性であった.ICU患者は,歯周病状態や全身的なウイルス量に関係なく,歯肉縁上および歯肉縁下のバイオフィルムSARS-CoV-2 RNA保有していた.
J Periodontol. 2022 Oct;93(10):1476-1485.(doi.org/10.1002/JPER.21-0623)

口蓋扁桃およびアデノイドSARS-CoV-2ウイルスリバーバーである.
同じくブラジルからの研究.2020年10月から2021年9月の間にアデノ扁桃摘出術を受けた48名の小児を調査した.SARS-CoV-2ゲノム検出率は,扁桃腺で20%,アデノイドで16.27%,鼻腔サイトブラシで10.41%,鼻腔洗浄液で6.25%であった.免疫染色では,陽性扁桃16検体中15検体において,上皮とリンパ区画の両方でSARS-CoV-2核タンパクの存在が確認された.フローサイトメトリーでは,CD123+樹状細胞が最も頻繁に感染する細胞タイプ(10.57%)であった.以上より扁桃腺とアデノイドは無症候性小児におけるSARS-CoV-2の重要な感染部位であることが示唆された.リンパ組織がSARS-CoV-2のリザーバーとなり,感染伝播に関わる可能性がある.しかしリンパ組織が持続感染をどれくらいの期間,維持できるのかは不明である.
Braz J Otorhinolaryngol. 2022;88:9.(doi.org/10.1016/j.bjorl.2022.10.016)

◆COVID-19後に発症するけいれん発作・てんかんはインフルエンザと比べ非入院患者や小児で多い.
英国からCOVID-19感染後6カ月間の痙攣発作やてんかんとの関連について検討した研究が報告された.8100万人の電子健康記録ネットワークを用いて,COVID-19感染者とインフルエンザ感染者をマッチングさせている.それぞれ15万2754人の患者からなる2つのコホートが得られた.COVID-19群はインフルエンザ群と比較して,痙攣発作やてんかんのリスクが上昇していた(図2左).COVID-19の6カ月以内の痙攣発作の発生率は0.81%(インフルエンザとの比較でハザード比:HR 1.55)であった.てんかんの発症率は0.30%(同1.87)であった.COVID-1後のてんかん発症率は,インフルエンザ群に比べて,入院歴がない人,16歳以下で高かった.ピークとなるHRの時期は,年齢や入院の有無によって異なっていた(16歳以下で感染後50日,17歳以上で21日.非入院で41日,入院で9日:図2右).以上より,COVID-19罹患後6カ月間の新規痙攣発作およびてんかんの発生率は,全体としては高頻度ではないが,インフルエンザ群より高かった.この差は入院していない人でより顕著であり,感染が軽症でもてんかんや痙攣発作のリスクがあることを認識する必要がある.16歳未満,とくに小児は危険性が特に高い.現在,第8波で小児の感染が問題になっているが,小児の感染予防を積極的に進める根拠の一つとなる研究である.
Neurology. 2022 Nov 16:10.1212/WNL.0000000000201595.(doi.org/10.1212/WNL.0000000000201595)



◆脳障害バイオマーカーの増加と炎症性サイトカインの関連は,他のウイルス感染患者でも発生する.
COVID-19感染後に観察された脳障害がCOVID-19に特有のものか,他のウイルス感染症でも生じるものかは不明である.英国からCOVID-19入院患者175名とインフルエンザ入院患者45名を対象に,脳障害の血清マーカーであるニューロフィラメント軽鎖(NfL),グリア線維酸性蛋白(GFAP),総タウと,自己抗体生産,サイトカインプロファイルの動態,およびそれらの関連を検討した研究が報告された.急性期のCOVID-19患者の検討では,重症度に依存してNfLとGFAPは上昇し,4カ月後の追跡調査でも脳障害が持続して認められた.これらのバイオマーカーは,炎症性サイトカインの上昇や自己抗体の存在と関連していた.回復期(入院から80日以上)では持続的なサイトカイン反応が認められ,様々な抗原に対するIgM反応が優位にみられた.自己抗体としては,肺サーファクタント蛋白A(SFTPA1)に対するIgG反応が,脳損傷マーカーとは無関係に,中・重症患者で高値となり,抗ミネリン関連糖タンパク(MAG)やLGI1,GLRA1等に対する自己抗体も認められた(図3).また亜急性期のインフルエンザ患者では,SARS-CoV-2感染と同様の免疫反応が検出され,血清の脳障害バイオマーカーも同様であった.以上より,脳障害バイオマーカーの増加と炎症性サイトカインプロファイルとの関連は,COVID-19に特有のものではなく,重症インフルエンザ患者でも同様に発生することが示された.
Brain. 2022 Nov 21;145(11):4097-4107.(doi.org/10.1093/brain/awac321)







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