IDCAを提唱した吉田邦広先生の賛同も得て共同研究を開始しました.大学院生の竹腰顕先生と神経免疫に詳しい木村暁夫准教授が中心に,後方視的に検討を進めました.図1の手順で310症例からIdiopathic sporadic ataxia(ISA*)群を67名まで絞り(既知の抗神経抗体は除外しました),疾患対照としてMSA-C群30名と遺伝性運動失調症(HA)群20名,そして健常対照群18名の4群を検討しました.

ラット小脳凍結切片を患者血清により免疫染色するtissue-based immunofluorescence assay(TBA)にてスクリーニングを行いました.自己抗体は細胞表面抗原に対する抗体(neuropil抗体と名付けました)と細胞質抗原に対する抗体が存在します(図2).一般に前者が病的な意義を持つため,neuropil抗体陽性患者の臨床的特徴および神経画像所見を検討しました(*ここでISAという用語を用いたのは査読者の指示に従いました).

結果として,ISA群67名はneuropil抗体陽性例12名,細胞質抗体陽性例18名,抗体陰性例37名に分類されました(クラスター解析をすると図3のような6パターンに分類され,複数の自己抗体が存在する可能性が示唆されました).

ISA群におけるneuropil抗体の陽性率(17.9%; 12/67)は,MSA-C群(3.3%; 1/30),HA群(0%),健常対照群(0%)に比べ,有意に高い値でした.neuropil抗体陽性ISAは,他のISA患者と比較し,錐体路徴候などの他の神経症候を認めない純粋小脳失調を示す頻度が高いことが分かりました(小脳特異的な抗原が示唆されます).画像所見ではISA群に特徴的な所見は認めませんでした.またneuropil抗体陽性患者4名(図4)でステロイドパルス・IVIgによる免疫療法が行われており,2名で小脳失調の改善が認められmRSが改善しました.また細胞質抗体陽性ISA 4名に対しても同様に免疫療法が行われ,2名で改善を認めました.発症から治療開始までの期間1~3年でした.

今後の目標は当然,標的抗原を同定することです.また当科を中心とする多施設による医師主導治験「特発性小脳失調症に対する免疫療法の有効性および安全性を検証するランダム化並行群間試験(代表;吉倉延亮先生)」が進行中です(臨床研究計画実施番号 jRCTs031200250)(http://www.med.gifu-u.ac.jp/neurology/research/idca.html).
最後に一緒に研究をさせていただいた中村勝哉先生,吉田邦広先生(信州大学),山川勇先生,漆谷真先生(滋賀医科大学)に感謝申し上げます.
★CCA/IDCA症例がいらっしゃいましたら,ぜひ自己抗体の測定をご依頼ください.抗体が陽性であった場合には治験への参加をご検討頂き,ともにエビデンスの確立を目指すことができれば有り難く存じます.どうぞ宜しくお願いいたします.
Takekoshi A, Kimura A, Yoshikura N, Yamakawa I, Urushitani M, Nakamura K, Yoshida K, Shimohata T. Clinical Features and Neuroimaging Findings of Neuropil Antibody–Positive Idiopathic Sporadic Ataxia of Unknown Etiology. Cerebellum (2022).
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