◆オミクロン株と迎える冬.
JAMA誌に「Winter of Omicron」という論評が掲載された.3点ほど印象に残った.1つ目は「完全なワクチン接種状態」の定義を変更するかどうかの議論が米国で始まっている点である.現在,米国CDCは,mRNAワクチンの場合,2回接種してから2週間後を「完全なワクチン接種」としているが,多くの大学やスポーツ団体,そしてニューメキシコ州で,ブースター接種まで行って「完全なワクチン接種」と定義を変更したところが増えている.オミクロン株によるブレイクスルー感染が増えてくると,日本でも同様の議論がなされるものと思われる.
2つ目は米国では今後数週間,3つの呼吸器系ウイルスの脅威にさらされる可能性がある点である.それはデルタ株,オミクロン株,そして季節性インフルエンザである.インフルエンザの流行が例年になく少なかった昨年と異なり,今年は流行する可能性が高い.すでにいくつかの大学キャンパスで,インフルエンザA(H3N2)の発生が報告され,CDCのサーベイランスでもすでに2000件以上の呼吸器系サンプルからインフルエンザ陽性反応を検出している. COVID-19とインフルエンザの両者に対するワクチン接種を推進する強力な取り組みが必要である.
3つ目はオミクロン株の出現は,今後,さらなる変異株が出現する可能性を示唆し,そのための対策が必要と述べている点である.阻止できるかどうかは,新たな変異株に対する効果的なサーベイランスと,世界中が平等にワクチンにアクセスできるかどうかに掛かっている.発展途上国におけるワクチン供給や接種を強化する取り組みは,世界全体にとっても役に立つことを認識する必要がある.
JAMA. Dec 22, 2021. (doi.org/10.1001/jama.2021.24315)
◆レムデシビルは進行リスクが高い外来患者の入院・死亡を抑制する.
レムデシビルは,中等度から重度のCOVID-19入院患者の転帰を改善するが,症状があり進行リスクが高い外来患者にレムデシビルを使用することで,入院を防ぐことができるかどうかは不明である.米国から,危険因子(60歳以上,肥満,併存症)を1つ以上有する外来COVID-19患者を対象に,発症後7日以内のレムデシビルの効果を検証するランダム化比較試験(PINETREE試験)が報告された.参加者はレムデシビルの静注群279名(1日目に200mg,2日目と3日目に100mg),または偽薬群283名に割り付けられた.主要評価項目は28 日目までの COVID-19 関連の入院,またはあらゆる原因による死亡の複合エンドポイントとした.この複合エンドポイントの発生は,レムデシビル群で2名(0.7%),偽薬群で15名(5.3%)であった(ハザード比,0.13,P=0.008)(図1).有害事象はレムデシビル群で42.3%,偽薬群で46.3%の患者に発生した.以上より進行リスクが高い非入院患者において,レムデシビルの3日間の使用は許容できる安全性を示し,入院または死亡のリスクを偽薬と比較して87%低下させる.ただしワクチン接種歴のある患者が除外されているため,ブレイクスルー感染に対するレムデシビルの有用性について不明であることや,外来での3日間の静脈注射は現実的に困難であることという問題がある.後者に関しては効果的な経口薬の登場が待たれる.
New Engl J Med. Dec 22, 2021.(doi.org/10.1056/NEJMoa2116846)

◆経口薬モルヌピラビルは,危険因子のある成人患者の入院または死亡のリスクを減少させる.
厚労省が承認するニュースが報道されている米国メルクの経口低分子抗ウイルスプロドラッグ,モルヌピラビルの効果について報告がなされた.第3相ランダム化比較試験で,対象は軽度から中等度のCOVID-19患者で,重症化の危険因子を少なくとも1つ持つ,非入院のワクチン未接種成人とした.発症5日以内にモルヌピラビルの使用を開始した場合の有効性と安全性を評価した.具体的な主要評価項目は,有効性に関して29日目の入院または死亡の発生率,安全性に関して有害事象の発生率を検討した.参加者はモルヌピラビル群716名(800mgを1日2回,5日間)と偽薬群717名に割り付けられた.29日目までのあらゆる原因による入院または死亡のリスクは,モルヌピラビル群(385人中28人[7.3%])が偽薬群(377人中53人[14.1%])と比較し低かった(差 -6.8%,P=0.001)(図2).29日目までの死亡例は,モルヌピラビル群で1名,偽薬群で9名であった.有害事象はモルヌピラビル群では216/710名(30.4%),偽薬群では231/701名(33.0%)であった.以上より,モルヌピラビルによる早期治療は,危険因子のあるワクチン未接種の成人患者の入院または死亡のリスクを減少させる.
New Engl J Med. Dec 16, 2021.(doi.org/10.1056/NEJMoa2116044)

最新の病期ごとの治療薬について,分かりやすい図が掲載されていたのでご紹介したい(図3).
New Engl J Med. Dec 22, 2021.(doi.org/10.1056/NEJMe2118579)

◆脳静脈洞血栓症のリスクは,アストラゼネカワクチン接種後の若年層で高い.
欧州からの報告で,ワクチン接種後の血小板減少症を伴う脳静脈洞血栓症(CVST)の年齢層別危険度を調べた研究が報告された.25カ国の成人2280万人が対象となった.初回接種後28日以内の血小板減少を伴うCVSTの絶対リスクは,アストラゼネカ,ジョンソン&ジョンソン,ファイザー,そしてモデルナの初回接種量100万回当たりそれぞれ4.4,0.7,0.0,0.0であった(推定バックグラウンド率は0.1)(図4).アストラゼネカワクチンでは,絶対危険度は18~24歳の年齢層で最も高く(3.7),70歳以上では最も低くなった(0.2).
Neurology. Dec 17, 2021.(doi.org/10.1212/WNL.0000000000013148)

◆COVID-19感染後の精子の質は妊娠に最適でない可能性がある.
ベルギーからCOVID-19感染から回復した後の精子の感染性と受胎能力への影響を調べる研究が報告された.対象はCOVID-19感染が確認されたベルギー人男性120名.結論として,SARS-CoV-2ウイルスRNAは,感染後間もない時期,およびそれ以降でも精液中に検出されなかった.しかしCOVID-19感染直後(1か月未満)に検査した男性の60%,感染から1~2か月後の男性の37%,感染から2か月以上後の男性の28%において,精子の平均進行性運動量(mean progress motility)が減少していた.また平均精子数も,感染直後(1か月未満)に検査した男性の37%,1~2か月後の29%, 2か月以上後の6%で減少していた.以上より,感染後1週間以上経過した精液(平均53日)によりCOVID-19に感染することはない.しかし妊娠を希望するカップルに対し,COVID-19感染後の精子の質は最適でない可能性があることを伝える必要がある.また一部の男性に永続的な障害が生じるかの追跡調査が必要である.
Fertil Steril. Dec 20, 2021.(doi.org/10.1016/j.fertnstert.2021.10.022)