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新型コロナウイルス感染症COVID-19:最新エビデンスの紹介(7月10日)

今回のキーワードは,米国イプシロン株はワクチン接種や過去の感染でも感染防御しにくい,がん患者さんでもmRNAワクチン接種で抗体は陽転するが,抗CD20抗体治療では抗体価は上昇しにくい,ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の抗体はヘパリンと同じ第4血小板因子領域に結合する,long COVIDはEBウイルスの再活性化によりもたらされる(?),IL-6拮抗薬は入院28日間の全死亡率の低下と関連し,ステロイドと併用して使用する,です.

受容体結合ドメインのL452R変異を有する変異株には,「デルタ株」「イプシロン株」「カッパ株」等があります.「デルタ株」は「懸念される変異株(Variant of Concern;VOC)」に位置づけられます.VOCは,感染性や重篤度が増し,ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した変異株のことです.今回,カルフォルニア州で見いだされた「イプシロン株」も変異により,ワクチンや既感染後に生じる中和抗体の効果が減弱ないし消失するVOCであることが次に紹介するScience論文で示されました.なぜ中和抗体が作用しなくなるかも,クリオ電子顕微鏡を用いた検討で解明されました.ウイルスの巧妙な適応力には敵ながら瞠目するばかりです.「デルタ株」「イプシロン株」の脅威を見ぬふりをして,緊急事態宣言下にオリンピックを強行するようなことをしていては,このウイルスを制御することはできないと思います.今からでも人々の生命を守るためにオリンピックを中止し,完全に科学的,論理的な判断に基づく政策に改めるべきと思います.

◆米国イプシロン株はワクチン接種や過去の感染でも感染防御しにくい.
米国カリフォルニアで検出されたイプシロン(ε)株 CAL.20C(B.1.427/B.1.429)は,シグナルペプチドにS13I,N末端ドメインにW152C,受容体結合ドメインにL452Rという変異を持つ新しい変異株である.この変異株に対してmRNAワクチンや既感染が有効であるかの検討を行った.ファイザーおよぶモデルナワクチン接種者や,COVID-19既感染者の血漿の中和作用は,イプシロン株では,野生型偽ウイルスと比較して,2~3.5倍減少した(つまり28~50%しか阻止できなかった).L452R変異は,34種類の受容体結合ドメイン特異的モノクローナル抗体のうち,14種類の中和活性を低下させた.またS13IとW152C変異は,シグナルペプチドの切断部位の移動と新たなジスルフィド結合の形成をもたらした結果,N末端ドメイン特異的モノクローナル抗体10種すべてが中和作用を完全に喪失した.以上より,イプシロン変異株はファイザー,モデルナワクチンを接種した人や,過去にCOVID-19を感染した人のもつ中和抗体を免れて感染防御しにくい可能性が示唆された.
Science. July 01, 2021.(doi.org/10.1126/science.abi7994)

◆がん患者さんでもmRNAワクチン接種で抗体は陽転するが,抗CD-20抗体治療では抗体価は上昇しにくい.
がん患者は,一般集団と比較して,COVID感染による重症度,合併症,死亡率が増悪する.COVIDに対するmRNAワクチンは,一般集団では非常に有効であることが示されているが,がん患者における有効性に関するデータはほとんどない.このため前方視的コホートを用いて,2021年1月から4月まで,米国と欧州のがん患者を対象に,ファイザー及びモデルナワクチンの1回目と2回目の接種後のセロコンバージョン率(抗体の陽転化)と抗スパイクタンパク抗体価を評価した.131名の患者のうち,ほとんど(94%)が2回のワクチン接種を受けて抗体が陽転した.血液悪性腫瘍の患者のセロコンバージョン率と抗体価は,固形腫瘍の患者よりも有意に低かった.ワクチン接種前の6ヵ月間にリツキシマブなどの抗CD20抗体治療の既往歴があった患者では,抗体反応が得られなかった(!).抗体価は,経過観察や内分泌療法群で高く,細胞障害性抗がん剤による化学療法中やモノクローナル抗体群(CD20,CD38,VEGF,RANKLなど)で最も低かった(図1).→ 当科の今週の回診でもかなり議論になったが,神経免疫疾患に対し,抗CD20抗体治療中の患者さんの免疫療法とワクチンのタイミングをどのように行うかはエビデンス不足で,現時点では患者さんとのshared decision makingを要する.今後の早急なエビデンス確立が望まれる.
Cancer Cell. 2021 Jun 18:S1535-6108(21)00330-5.(doi.org/10.1016/j.ccell.2021.06.009)



◆ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症の抗体はヘパリンと同じ第4血小板因子領域に結合する.
ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)は,COVID-19アデノウイルスベクターワクチンのまれな副反応として報告された.VITTは,第4血小板因子(PF4)に対する血小板活性化抗体(VITT抗体)を伴うことから,ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)に似た疾患と言えるが,決定的な違いは,VITT患者ではヘパリンへの曝露なしに血小板減少症や血栓症を来すことである.今回,VITT患者の自己抗体のPF4上の結合部位を明らかにすることを目的とした研究がカナダから報告された.VITT患者5名およびHIT患者10名の血清を用いて,PF4への結合を比較している.アラニンスキャニング変異誘発法を用いて,VITT抗体のPF4への結合が起こる部位を8アミノ酸に限定した.そしてそのすべてがPF4上のヘパリン結合部位内に位置し,その結合はヘパリンによって阻害されることが示された(つまり,幸いなことにVITTの診断がつかず,ヘパリンで治療しても,増悪は理論的に生じない).またVITT抗体はHIT抗体と比較して,PF4およびPF4/ヘパリン複合体に対して強く結合した.以上よりVITT抗体は,HIT抗体のPF4結合部位に近い部位に結合することでヘパリンの効果を模倣する.さらにPF4の4量体がクラスター化して免疫複合体を形成し,抗体のFcγRIIa(Fc受容体のひとつで,IgGに対する低親和性受容体である)依存性の血小板活性化を引き起こすことが示された(図2).
Nature. July 7, 2021.(doi.org/10.1038/s41586-021-03744-4)



◆long COVIDはEBウイルスの再活性化によりもたらされる?
日本人は,ヘルペスウイルスの一種であるEBウイルスに乳幼児期までに感染し,成人の90%以上が抗体を有する.EBウイルスは一度感染すると,リンパ球に潜伏する.潜伏したウイルスは通常は身体に影響を及ぼさないものの,免疫力の低下などで再活性化し,発熱やリンパ節腫脹などを来す.今回,long COVIDの病態において,EBウイルス再活性化が関与する可能性について検討した研究が米国から報告された.まず無作為に調査したCOVID-19患者185名におけるlong COVIDの有病率と,EBウイルスの再活性化に関連があるかが調べられた.Long COVIDの有病率は30.3%(56/185名)で,その中には,当初無症候性感染者であったが,後にlong COVIDとなった4名も含まれていた.次にEBV早期抗原(EA-D)IgGまたはEBVウイルスカプシド抗原(VCA)IgMの陽性率を検討し,long COVID患者では66.7%(20/30),対照群は10%(2/20)でEBV再活性化を認めた(p<0.001).EBV再活性化を認めたlong COVID症例は,頻度の高い順に疲労,不眠,頭痛,筋痛,混迷,筋力低下,皮疹(図3)を呈した.またCOVID-19の陽性反応が出てから21~90日後の第2グループ18名でも,同様のEBウイルスの再活性化所見が認められ,COVID-19感染後早期,もしくは同時に再活性化が起こる可能性が示された.以上より,long COVIDはSARS-CoV-2ウイルスの直接的な感染ではなく,COVID-19によって誘発されたEBVの再活性化の結果である可能性が示唆された.→ 興味深いが,long COVIDには自己抗体や自律神経障害も関与することが報告されており,単一の病態ではない可能性がある.少なくとも多数例での検証が必要であろう.
Pathogens. 2021 Jun 17;10(6):763.(doi.org/10.3390/pathogens10060763)



◆IL-6拮抗薬は,メタ解析で入院28日間の全死亡率の低下と関連した.
トシリズマブやサリルマブなどのIL-6拮抗薬は当初から期待が大きかったものの,COVID-19で入院した患者に対する有効性を評価した臨床試験では,有益,無効,有害などさまざまな報告がなされた.このため28 日間の全死亡およびその他のアウトカムについて検討したメタ解析が報告された.期間は2020年10月~2021年1月に報告された報告を対象とした.見いだされた72試験のうち,試験選択基準を満たした27件(37.5%)の無作為化比較試験の前方視的メタ解析では,1万930人の患者が対象となり,そのうち2565人が28日までに死亡した.IL-6拮抗薬を使用された患者は,通常治療または偽薬を使用された患者と比較して,28日目の全死亡率が低かった(要約オッズ比,0.86)(図4).また要約オッズ比は,副腎皮質ステロイドを併用した場合0.78,副腎皮質ステロイドを併用しなかった場合1.09であった.28日目までに二次感染が発生したのは,IL-6拮抗薬を使用した患者の21.9%に対し,通常の治療または偽薬を使用した患者の17.6%であった(オッズ比0.99).以上より,IL-6拮抗薬は,通常の治療や偽薬と比較して,COVID-19 で入院した患者の28日間の全死亡率の低下と関連していた.→ よってトシリズマブはステロイドを併用するという使用法が推奨される.
JAMA. July 6, 2021.(doi.org/10.1001/jama.2021.11330)




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