抗IgLON5抗体関連疾患という自己免疫性神経疾患が報告されている(Lancet Neurol. 2014 Jun;13(6):575-86).IgLON5は神経細胞接着分子のひとつである.本疾患は症候として,閉塞性睡眠時無呼吸を伴う進行性non-REM・REMパラソムニア,運動障害(四肢の失調,舞踏運動,歩行不安定性),眼球運動障害を呈し,生命予後は不良(8例中6例が免疫抑制療法にもかかわらず1年以内に死亡)であった.2名の病理で,脳幹・視床に過剰リン酸化されたタウの沈着を認めた.抗IgLON5抗体は298名の対照では1名にのみ認められ,その1名はPSPであった.タウオパチーを考える上で興味を惹かれたという経緯があった.
このため私達はこの抗体のアッセイ系を確立し検討を進めたところ,何と大脳皮質基底核症候群(CBS)のなかに抗体陽性例を見出した.4年の経過で進行する歩行障害を主訴とした85歳女性で,神経学的には四肢筋強剛,左半身の失行,左下肢ジストニア,皮質性感覚障害を呈し,画像検査では右半球優位の脳萎縮と血流低下を認めた.Armstrong基準のprobable CBDに該当した.大量免疫グロブリン療法を3クール施行したところ,臨床症候と画像所見の改善を認めた.背景病理はCBDだろうと考えられたCBSのなかに,治療可能例が存在することを示した意味で,インパクトの大きい症例と考えられた.
Fuseya K, Kimura A, Yoshikura N, Yamada M, Hayashi Y, Shimohata T. Corticobasal Syndrome in a Patient with Anti-IgLON5 Antibodies. Mov Disord Clin Pract 2020 in press.

図A-DはHEK293細胞にGFP-IgLon5融合蛋白(C)を一過性発現させるcell-based assay系.患者血清でのみ陽性に染色され(B),共局在する(D).凍結ラット小脳切片を用いた免疫染色では既報と同様の染色パターンを示す(E).頭部MRIでは右半球優位の脳萎縮を呈する(F, G).
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また抗IgLON5抗体の測定についてもお問い合わせを頂いております.
どのような症例の測定をお引き受けするかについては以下のように考えております.
(1) 抗IgLON5抗体関連疾患を疑う症例
(2) CBSに抗IgLON5抗体関連疾患(Lancet Neurol. 2014;13:575-86)の特徴(※)を合併する症例
(3) CBSであるものの急性・亜急性の進行を呈したり,症状の程度が変動(fluctuate)する症例
(4) 自験例のように下肢の症状が強い症例
(5) その他
※ 閉塞性睡眠時無呼吸を伴う進行性non-REM・REMパラソムニア,運動障害(四肢の失調,舞踏運動,歩行不安定性),眼球運動障害,生命予後不良.
下畑までご連絡をいただければ幸いです.