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非定型パーキンソニズムの臨床試験update@MDS20181(香港)

パーキンソン病・運動障害疾患コングレス(MDS2018)」にて,最新の臨床試験に関するプレナリーセッションがあった.自身が関心をもつ非定型パーキンソニズム(進行性核上性麻痺PSPと多系統萎縮症MSA)に対する臨床試験についてまとめたい.要約すると,PSPに対してはラサギリン,バルプロ酸コエンザイムQ10を用いた臨床試験が行われたが,いずれも失敗している.PSPにおけるトピックスは,ヒト化抗タウ抗体による臨床試験の開始であり,本学会のランチョンセミナーのひとつが,Biogen社により「PSP」というタイトルで開催されたのは新しい時代の訪れを感じさせた(写真はパンフレット;ハミングバードがいる!).臨床試験の成功のためには,いかに正確な診断を行うか,いかに脱落率を上げずに治療を継続するかが重要になるものと思われた.一方,MSAでは自家間葉系幹細胞を用いた細胞療法や,αシヌクレインを標的とする臨床試験が開始されている.MSAでも正確な診断を行うために,2020年を目標に臨床診断基準の改訂が進められている.


以下,具体的な臨床試験の内容について示す.

1.進行性核上性麻痺に対する臨床試験
【PROSPERA試験】J Neurol 2016
MAO-B阻害薬のラサギリン1mgの効果を確認するための第3相RCT.44症例をエントリー.開始12ヶ月後のPSPRSを主要評価項目としたが効果を証明できず.ドロップアウト率が41%と高率であった.

バルプロ酸】Clin Neurol Neurosurg 2016
バルプロ酸1500mgの効果を確認するための第2相RCT.主要評価項目は12ヶ月後および24ヶ月後のPSPRS.12ヵ月後では若干増悪傾向を認めたが有意差なし.24ヶ月後ではその傾向も消失した.57%の脱落率.

コエンザイムQ10】Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2016
コエンザイムQ10 2400 mgの効果を確認するための多施設第2相RCT.主要評価項目は12ヶ月後のPSPRS.62症例.有効性を認めず.脱落率41%.

【ABBV 8E12(ヒト化抗タウ抗体)】
多施設第1相RCT.抗体とプラセボの比較で,主要評価項目は安全性・忍容性.30症例.結果は安全性に問題はなし.髄液/血漿比は0.2~0.4%と髄液移行は低いことが分かった.図のグラフは血漿中の濃度変化を示す(J Prev Alz Dis 2017;4:236-41).


【現在進行中の臨床試験
①ABBV 8E12
ヒト化抗タウ抗体ABBV 8E12(Abbie社)を用いた第2相RCT.330症例.主要評価項目は開始52週後のPSPRSと安全性.

②Passport試験:ヒト化抗タウ抗体BIIB092(Biogen社)を用いた第2相RCT.396 症例.主要評価項目は開始52週後のPSPRSと安全性.

③その他:リバスチグミンの効果を確認する第3相RCTや,Salsalate(NSAIDs),TPI-287-4RT(微小管安定化薬)の効果を確認する第1相RCTが行われている.ユニークな研究として,在宅ケアや緩和ケアの有効性を検討する臨床試験も行われている.

2.多系統萎縮症に対する臨床試験
【MSA-Fluoxetine試験】Exp Neurol 2012
選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRIフルオキセチン40mgの効果を確認する多施設第2相RCT.
主要評価項目は開始3ヶ月後のUMSARSパート1+2スコア.81症例.有効性を証明できず.ただしUMSAQoLの感情に関するサブスコアはフルオキセチン群で良好の傾向.

【AZD3241 PETMSA trial】Clin Auton Res 2018
脳透過型ミエロペルオキシダーゼ阻害剤AZD3241の効果を確認する多施設第2相RCT.対照と300 mgないし600 mgを比較.比較主要評価項目は安全性・忍容性とPETによるミクログリア活性化の抑制.59症例.ミクログリア活性化は抑制されず,UMSARSも改善しなかった.

【自家間葉系幹細胞髄注療法】
投稿中
単一施設のオープンラベルの第1/2相試験.脂肪由来間葉系幹細胞を1 × 10-7個,5 × 10-7個,1 × 10-8個髄注する.主要評価項目は12ヶ月後の安全性・忍容性.24症例.安全性については重大な副作用はなかったが,一過性の発熱と,馬尾神経根の肥厚が見られ,その一部で腰痛・下肢痛を呈した.

【PROMESA trial】
αシヌクレイン凝集阻害剤(oligomer modulator)であるEZCGの効果を確認する多施設第3相RCT.主要評価項目は12ヶ月後のUMSARSパート2.92症例.改善なし.しかしMRIサブスタディーにおいて脳萎縮に抑制効果を認めた.

【AFF009試験】
αシヌクレイン能動免疫療法に関する臨床試験で,PD01Aが能動免疫をもたらすことを確認した.

3.感想
以上のようにこれからの神経変性疾患の治療は,神経免疫学の知識が非常に重要になってくるだろう.またこれらの臨床試験は,タウやαシヌクレインといった単一の分子を標的にする治療がどこまで通用するのかを明らかにすることになる.脳虚血やアルツハイマー病においては興奮性アミノ酸毒性やアミロイドβのような単一の分子を標的にする治療では限界があることを示されたが,これらとは異なり,PSPやMSAが本当に単一の分子の異常により引き起こされる疾患なのかが明らかになるものと思われる.



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