【前臨床試験の信頼度を上げる】
・治療を目指す脳卒中の病型(脳梗塞であれば塞栓症,血栓症,小血管病)に合致した動物モデルを選択する.
・複数の動物モデルで,薬剤の効果を確認する.
・一過性虚血モデルと永久虚血モデルの両者で,薬剤の効果を確認する.
・オスとメスで,薬剤の効果・副作用を確認する(女性のみ副作用が出現し,臨床試験中止になった薬剤が複数ある).投与数をそのままにすると,オスメス各群Nが半分になり検出力が落ちるが,統計は2 way-ANOVAを用いて全例を組み込む.
・複数の研究室で,薬剤の効果を確認する.
・培養細胞の低酸素・低糖刺激(OGD)は,細胞の種類により反応が異なるため,脳梗塞の病態を直接反映するものではないことを認識する.
・実験の再現性の向上のため,STAIR(stroke treatment academic roundtable),RIGOR,CAMARADESといった勧告に則った研究を行なう.実験デザイン,手技,解析についての透明性を向上する(下記文献を参照).
・サンプルサイズ推定,ランダム化,盲検化,予め定めたinclusion/exclusion criteriaを記載する.
・単に「統計学的に有意である」を超えた強力な効果を示す治療を見出す.
・出版バイアスを認識する(良い結果のみ論文になり,効果が強調されやすい.効果がないという論文は,脳虚血実験において全体のわずか2%).
【動物実験と臨床試験のあいだのgapを埋めるためのヒト試料の利用】
・Rodent are not little men!(げっ歯類は小さな人ではない.進化の過程では7500万年も前に分かれている)
・げっ歯類とヒトでは,代謝,サイズ,心拍出量,白質体積,神経発達,寿命,高次認知機能,免疫システムなどさまざまな違いがある.
・さらにヒトには高次の皮質機能があること,共存症(高血圧,糖尿病,高脂血症,加齢,認知障害,喫煙,アルコール)があること,治療開始までの遅れがあることも異なる.
・衝撃的な例として,脳出血3日目に病変に集まる細胞の種類が,ヒトとげっ歯類では異なっていることも示された.
・このため,ヒトの試料で,薬剤の効果を確認すべき.ヒトとげっ歯類の両方の試料をもちいて研究をすすめる.
・マウスは細胞特異的ノックアウト,光遺伝学,キメラ,欠失などヒトで検討できないことができる.
・ヒトの研究で見出した知見をさらに動物モデルで検証(機能解析,治療効果確認)する(Reverse translation, From bed to bench side).
・げっ歯類の検討で見出した標的分子が,実際にヒトの脳で発現するか?薬剤がヒト細胞でも目的とするpathwayに効果を及ぼすか?を確認する.
・最終的にはげっ歯類ではなくヒトにおいて,薬剤の用量,薬理動態,治療可能時間を検討することを認識する.
・ヒト試料としては,末梢血,尿,便,iPS由来神経細胞・アストロサイト・ミクログリア,髄液,神経画像(分子MRI,機能画像,PETを含む),病理標本,凍結脳がある.
【参考文献】
Landis SC et al. A call for transparent reporting to optimize the predictive value of preclinical research. Nature. 2012 Oct 11;490(7419):187-91.
Maric-Bilkan C, et al. Report of the National Heart, Lung, and Blood Institute Working Group on Sex Differences Research in Cardiovascular Disease. Hypertension. 2016 May;67(5):802-7.