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tPAによる血栓溶解療法の合併症-脳出血―を阻止するVEGF抑制療法

 脳梗塞に対する血栓溶解薬「組織型プラスミノゲン・アクチベーター(tPA)」は世界初の根本的脳梗塞治療薬である.血管を閉塞する血栓の構成成分フィブリンを分解し,血栓を溶かし,血液の流れを再開させることができる.しかし,日本では発症から3時間までしかtPAによる血栓溶解療法は行うことはできず,脳梗塞患者全体の5%未満の人しかこの治療を受けることができない状況にある.

 もし3時間を超えた脳梗塞患者さんにtPAによる治療が行われると,症状の改善がないばかりか,一部の患者さんではむしろ予後が悪くなることもある.これは,血管の閉塞が一定時間を超えてしまうと血管を構成する細胞(内皮細胞や周皮細胞),そして血管を構成する蛋白質(細胞外マトリックス)にも障害が生じ,その結果,血管が破綻し,出血が生じるためである.もし脳出血を予防することができれば,3時間という短い治療可能時間を延長させ,さらにtPAによる血栓溶解療法の恩恵を受けることのできる患者さんを飛躍的に増やせる可能性がある.

 今回,tPA治療後の血管の障害を引き起こす悪玉蛋白の一つが,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)であること,そしてこのVEGFを阻害することは,tPA治療後の脳出血を抑制し,治療可能時間を延長する可能性があることが報告された.

 方法としてはラットを用い,自家血血栓により中大脳動脈を閉塞するモデルが使用された.このモデルの利点は,実際にヒト脳梗塞に類似しており,ヒトの脳梗塞の病態を検討するのに適していると考えられることだ.事実,血栓による血管閉塞後,1時間ないし4時間後にt-PAを静脈注射すると,1時間投与では梗塞の縮小や麻痺の改善を認めるのに対し,4時間群では出血を合併し,むしろ予後が著しく悪化する.

 この動物モデルにおいて,血管閉塞前には脳におけるVEGFの発現を認めないが,tPA 4時間後投与群では,血管内皮細胞や周皮細胞,星状細胞にVEGFが高度に発現することがわかった.VEGFはその受容体を活性化し,さらにVEGFカスケードの下流に存在するマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)の活性化を促し,血管を構成する蛋白質(細胞外マトリックス)を分解すること分かった.

 そしてVEGFを分子標的とした治療として,増加するVEGFを除去できる抗VEGF中和抗体を静脈注射した.虚血後のVEGF増加,MMP9活性化,細胞外マトリックスの分解はいずれも抑制され,脳出血も減少し,予後も改善した.VEGF受容体リン酸化阻害剤の腹腔内注射でも,抗体と比べると効果はマイルドであったが,同様の効果がみとめられた.

 以上より,治療可能時間を越えたtPA治療で合併しうる脳出血に対し,VEGF抑制療法は有効である可能性が示唆された.ヒトの脳梗塞治療に応用するためには,さらに多数例なる検討が必要であるが,脳梗塞に対する血管保護療法という新しいアプローチの可能性を示す論文である.

 J Cereb Blood Flow Metab. 2011 Feb 9. [Epub ahead of print]

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新潟大学脳研究所神経内科 脳循環代謝チーム



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