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テトラサイクリン系抗生剤の神経保護のメカニズム

テトラサイクリン系抗生剤には神経保護作用があることが,主に動物モデルレベルで知られてきた.モデルとなる疾患としては,脳虚血(全脳および局所虚血),脊髄損傷,網膜神経細胞死,パーキンソン病ハンチントン病,ALS,多発性硬化症といった類である.テトラサイクリン系抗生剤のなかでよく論文に取り上げられているのはミノサイクリンであり,その神経保護のメカニズムとして,①ミトコンドリアからのチトクロームCの放出の抑制(つまりその下流のcaspase3活性化などのアポトーシス・カスケードがブロックされる),②ミクログリアの活性化の抑制,が指摘されている.
今回,カナダより同じテトラサイクリン系抗生剤のchlortetracycline(CTC)およびdemeclocycline(DMC)の作用機序に関する研究が報告された.いずれも聞き慣れない抗生剤だが,調べてみるとDMCには抗ADH作用があって,SIADHの治療に使われることもあるらしい.さて実験系は①小脳granule neuron(CGN)の初代培養を用い,培地にグルタミン酸を持続的に加える興奮性毒性の系と,②マウスに対して1時間の中大脳動脈閉塞を行うsuture model(再灌流モデル)を用いている.培養細胞の系ではCTC,DMCグルタミン酸により引き起こされる細胞死を有意に抑制することを示し,suture modelではCTC,DMC 投与(虚血前+虚血後)により脳梗塞サイズが縮小し,麻痺も改善することを示している.機序の検討としてはCGNを用いてパッチクランプを行い,whole cell recordingにてCTC,DMCがNMDA投与による膜電位低下を抑制すること,さらにNMDA投与に伴うCaの細胞内流入を抑制していることを示した(方法として螢光カルシウム指示薬fura-2を使用).以上を踏まえ,カルシウムで活性化される細胞内プロテアーゼであるカルパインに対するCTC,DMCの効果を調べたところ,カルパイン阻害剤として知られるALLN,calpastと同等以上のカルパイン抑制効果をin vitroおよびin vivoの実験で認めた(これは基質の切断についてWestern blotで調べている).一方,ミノサイクリンにはカルパイン抑制効果は認めなかった.以上より,CTC,DMCは細胞内へのカルシウム流入,およびそれに引き続くカルパイン活性化を抑制することで神経保護作用を持つということになる.同じテトラサイクリン系でも作用機序が異なることを突き止めたという意味でなかなか面白い論文である.
ただしこの論文では,一般的に使われる興奮性毒性の実験系である海馬ニューロンをなぜか用いてなかったり(この系では数分のNMDA曝露で細胞死が起こる),脳梗塞サイズの測定に通常用いない方法を用いたり,methodに関しては不思議な点が残る.さらにsuture modelの系で抗生剤を虚血前から使用していることから,実際に臨床応用できるかどうかは何と言えない(つまり,細胞内カルシウム濃度上昇は虚血後,非常に早い時間に起こるイベントなので,梗塞後のみの投与で効く補償はない).この論文に限らず,脳虚血の実験ではよく見られることだが,臨床応用できるのかどうかを念頭においた基礎研究,すなわちbench to bedsideを目指したtranslational researchを行うことが重要なのだと思う.

JBC published on line (August 9, 2005)



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