蒔田彩珠さんと橋本愛さんのファンなので、
「これは見に行くしかないだろ!」って勇んで劇場に行ったら、
「私ね、あと1週間で死んじゃうの」
恋人の突然の告白からはじまった“ふたりの7日間”は、悲しいけれど、幸福と愛に満ちあふれた、かけがえのない奇跡だった──。(公式サイト:イントロダウションより引用)
えっ、こんな映画だったん?! となって正直焦りました。
映画見始めて冒頭のシーンまで全く気づいてなかった笑。
遊園地でゴーカート乗ったら
「これ…ジェットコースターだよ?」
「?!」
的な。
当然原作は未読。『下妻物語』も篠原哲雄監督の他の作品も未見です。
なんならエンドロールまで原作があるものだとすら知らずに見てきました。
HPの監督からのコメントにネタバレしてはいけない、と書いてありましたので、ネタバレしないように感想を書こうと思います。

あんまり名前を呼びあわないのがいい
登場人物は名前が一応振られてはいるんですけど、名前で呼び合わないのがいいですね。
8割以上、「キミ」とか「あの子」で通してくれるのが好きです。
キミって呼ばれると嬉しいギャルゲー世代だから……
正直に言うとココが一番映画の中でツボにハマりまして。
最期の日まで、一日一日にイベントが詰まってて、それがどんどん終わっていくのがとても惜しい、これはなんだってそうなんですけど、
ことに恋愛物でいうと学生の時にハマった……いや、正確にいうと私は全然やってないんですけど、世代の雰囲気あるじゃないですか。
『Angel Beats!』しかり、『CLANNAD』しかり。
私も短編小説を趣味で書いたりするんですが、なるべく登場人物に名前を付けたくないんですよね。
これについて、私でいえば完全に村上春樹の影響なんですが、
物語を「自分の物語化」するにあたって一番いいアクセントのつけ方だと思います。
『ハピネス』についても、私たちの生活に密接である作品のメインテーマを自分事に落とし込むには、やはり名前がないに越したことはないと見終わった後も思います。
メインテーマについて
作品のメインテーマについては、物語の主題としては「そりゃ感動しますよ!」以外の何物でもありません。
やはり悲しいものは悲しい。ちゃんと私は泣きました。
やっぱり蒔田彩珠はいい
出世作?の『おかえりモネ』も、めっちゃハマった『わたしの一番最悪なともだち』もそうですけど、
自分のアイデンティティに揺れる女の子の役をやらせたら蒔田彩珠さんの右に出る人いないのでは、と思います。
ヒロインにとっては、定められた運命を受け入れるために自身のアイデンティティを急ごしらえで固めていく、それがロリータファッションに身を包むことだと思うんですね。
ロリータでやっていくんだということは、他者の目線よりも自分を優先できる強い意志の表れでもある、と私たちが認識する中で、
でも精神の成熟が追い付いていない(それは彼女がまだどこにでもいる17歳だから)
という揺れを見事に演じてると思います。
料理を上手に作れないことを恥ずかしく思ったり、彼氏の家に泊まりに行きたかったり、聖地巡礼したかったり……高校生としてのヒロインは等身大なんだ、ということが随所で描かれていくのにジーンときますね。
アイコンを演じ切る橋本愛がやっぱ好き
その対極として、たとえ親にぶたれてもロリータを突きとおす(自分を曲げない)、橋本愛さん演じる「姉」の存在感が引き立ちますね。
「芯のある(時として変わった)女」という役を映画にテレビにと演じ続けている橋本愛さんにはジャストミートな配役ですね。
いやいや、これが観たかったのよ、これがね……笑
ただし残念だなと思ったのが、姉の掘り下げが描写不足だったところでしょうか。
公園での姉との出来事が描写されるシーンが2回あって、うち一つは姉が過去について少しだけ語る場面もありますが、消化不良だったかなと感じます。
『ハピネス』は姉がいるからヒロインが際立つわけですけど、かといって姉の描写をやりすぎると話が逸れていくジレンマ抱えてます。
蒔田彩珠・橋本愛、2人の女優について
今更私がいうことではないと思いますけど、この2人は同じ系統ですよね。
『あまちゃん』のユイも、『おかえりモネ』のみーちゃんも
地元から出られなかった主人公の鏡役として、主人公に比べれば自己を叶えられなかった者として物語に出てくるわけですが、
仮に年代が逆だったとしてもユイもみーちゃんも、二人が当てはめられることになったんじゃないかなぁ、と。
実写化すると、キャラクターの設定の深みを感じさせるトリガーとして、今まで演じてきた役がくっついてくるというのは毒にも薬にも、下手したら雑味にもなるかもしれませんが、アタると気持ちいいなと思います。
直近だと、『光る君へ』の藤原隆家を竜星涼が演じていますが、あの(むだに)度胸がいい設定も『ちむどんどん』のにーにーをメタ的に感じることで、
「わかる……」ってなるみたいにね。
そう考えると、比較対象としての確立したアイデンティティを持つ役としては、短い出番ながらも『私をくいとめて』の主人公の親友役もよかったな、と思い出しました。
色々と右へ左へと話がずれましたが、今作のメインテーマは普遍的に選ばれてきた題材ですし、恋愛小説としての文法にもちゃんと則っていますので、
観て損のない良い話だと思います。
お気に入りのシーンとしては、清掃員の人に手紙とチップが渡るところでしょうか。
高校生の主人公たちが気づかいとして他人を慮る社会性を持っているというなんでもない描写ですが、そういう人であっても、という運命の悲劇さを際立たせるものとして、観客である私たちをジーンとさせるよなぁと思います。