あなたは今、自分の経験を誰かの未来に活かせる立場にいるかもしれません。
IT業界で積み上げてきたスキルや知識は、実はあなただけのものではないのです。
それをどう渡すか、誰に届けるかによって、まったく違う景色が広がってきます。
私自身、エンジニアとして働いていた時期に深く行き詰まり、燃え尽きてしまった経験があります。
当時は「自分にはもう何もできない」と感じていましたし、IT業界から離れることを本気で考えていました。
体が鉛のように重く、パソコンの画面を見るだけで気分が沈んでいたあの頃を、今でも鮮明に思い出せます。
それでも、時間をかけて少しずつ前を向けるようになったとき、今度は全く別の方向に目が向き始めました。
でも、そんな挫折の時期を経て辿り着いたのが、IT技術を教えるという仕事でした。
最初は本当に自信がありませんでした。
「自分が誰かを教えられるほどの実力があるのか」と、何度も自問しました。
講義の準備をしながら、受講者の顔を思い浮かべてドキドキしていたことを今でも覚えています。
資料を作るたびに「これで伝わるだろうか」と不安が押し寄せてきて、夜中まで何度も作り直した記憶もあります。
ところが、実際に受講者と向き合い始めると、その不安はすっと消えていきました。
「なるほど!そういうことか!」と目を輝かせる瞬間を目の当たりにしたとき、私は確信しました。
これが自分のいるべき場所だ、と。
ITを教えることの面白さは、教えながら自分も成長し続けられることにあります。
受講者からの「なぜ?」という問いかけは、ときに私が当たり前だと思っていた前提を根底から揺さぶってきます。
「え、そんな視点があったのか」と驚かされることは珍しくありません。
一方通行ではなく、双方向のやりとりの中でお互いが変わっていく。
そのプロセスが、講義という場の醍醐味だと私は思っています。
とはいえ、最初からうまくできるわけではありません。
うまく説明できなかった日は、帰り道にひとりで反省を繰り返す。
それでも次の講義に向けて準備を重ねることで、少しずつ手応えが生まれてきました。
実際に教える立場になってから気づいたことがあります。
技術そのものより、技術に向き合う「姿勢」を伝えることのほうが、受講者の人生に長く影響を与えるということです。
プログラミングの文法を覚えることは、ある意味では後からでも追いつけます。
でも「わからなくても諦めない」「失敗してもまた試す」という態度は、誰かと一緒に悩んだ経験を通じてしか根付かないものだと感じています。
さて、思い返してみると、私自身がエンジニアとして行き詰まったときに救われたのも、そういう「姿勢」を持った先輩の言葉でした。
だからこそ、私は毎回の講義を「技術の解説」ではなく「考え方を一緒につくる時間」として捉えるようにしています。
受講者が帰り際に「今日は楽しかった」と言ってくれたとき、それが何より嬉しい言葉です。
あなたにも、今まで培ってきたIT経験があるはずです。
それが最先端の技術でなくてもいい。
むしろ、一度つまずいたことがある人のほうが、初学者の迷いに寄り添えることが多いと私は実感しています。
「あのとき自分もここでハマったな」という記憶は、教える場で驚くほど力を発揮します。
失敗した経験は、決して無駄ではありません。
それが誰かの道しるべになる日が来るのです。
自分の過去をそんなふうに捉え直してみると、少し違った景色が見えてくるのではないでしょうか。
次世代を育てるという言葉は、少し大げさに聞こえるかもしれません。
でも、目の前の一人に真剣に向き合うことの積み重ねが、やがて大きな流れを生み出していくのだと思います。
神奈川という地域でIT教育に携わりながら、私が感じてきたのはまさにそのことでした。
全国のどこかで、あなたの経験を待っている人がいる。
そう考えると、少しだけ前に踏み出してみたくなりませんか。
最初の一歩は、思っているよりずっと小さくて構わないのです。
実のところ、「教えてみようかな」という軽い気持ちで始まった人が、気づいたら講師として活躍しているケースを私はいくつも見てきました。
ITを教える仕事は、知識を売る仕事ではありません。
人と一緒に考え、一緒に喜ぶ仕事です。
私がこの道を選んで本当によかったと感じるのは、受講者が「できた!」と声を上げた瞬間や、数か月後に「あの講義がきっかけで転職できました」と連絡をくれたときです。
そういった瞬間が積み重なるたびに、この仕事を続ける理由がまたひとつ増えていきます。
達成感とか充実感とか、そういう言葉では収まりきらない何かが、確かにそこにある気がします。
あなたの経験は、誰かの背中を押す力になれます。
一歩踏み出すのが怖いなら、まずは小さな形で誰かに何かを教えてみてください。
勉強会でも、社内の共有でも、友人への説明でも構いません。
そこで感じるやりがいが本物だと思えたなら、IT技術を教える道は、あなたにとって天職になりうるものかもしれません。
今のあなたの経験が、誰かの人生を変えるきっかけになる。
その可能性は、思っているよりずっと近くにあります。