自分のペースでいい。
焦らなくていい。
何かを学ぼうと決意したとき、あなたはどんな気持ちで最初の一歩を踏み出しましたか。
「よし、今度こそ本気でやるぞ」と気合いを入れて、参考書を何冊も揃えて、学習計画表まで作って、それでも三日後には何もしていない。
そんな経験、一度はあるのではないでしょうか。
実は私も、まったく同じ失敗を繰り返してきました。
プログラミングを本格的に学び始めた頃のことです。
毎日2時間は必ずコードを書くと決めて、手帳にびっしりと予定を書き込みました。
最初の一週間は順調でした。
でも、仕事が忙しくなったり、少し体調を崩したりして一日休んでしまうと、もうそこで終わりです。
「昨日できなかったから、今日は3時間やらないといけない」という謎の義務感が生まれて、その重さに耐えられず、結局また白紙に戻る。
これを何度繰り返したかわかりません。
しかも厄介なのは、失敗するたびに「自分には意志が足りないんだ」と自己嫌悪に陥ってしまうことです。
あの頃の私は、できない自分を責めることに随分とエネルギーを使っていたように思います。
もっと早く気づいていれば、あんなに遠回りしなくて済んだのに、と今でもふと思うことがあります。
今思えば、あの頃の自分は「やる気」に頼りすぎていたのだと感じています。
やる気というのは、不思議なもので、気合いを入れれば入れるほど、その反動も大きくなります。
エンジンを全開にして走り出した車が、少しでも段差に乗り上げるとそのままエンストしてしまうようなイメージです。
力が入りすぎていると、ちょっとしたつまずきが致命的になってしまうのです。
そして気づいたときには、また振り出しに戻っている。
その繰り返しに疲れてしまう人を、これまでたくさん見てきました。
では、どうすればよかったのか。
答えはシンプルで、拍子抜けするくらい地味なことでした。
「ちょっとだけやってみようかな」という気持ちで始めることです。
講義の現場で受講者の方々を見ていると、最初から猛烈な勢いで取り組む人ほど、数週間後に姿が見えなくなることが多いと感じています。
逆に、「まあ、なんとなく気になって来てみました」くらいの温度感で参加した人が、気づけば半年後も変わらず学び続けていたりします。
これは偶然ではなく、心理的な負荷の違いが大きく影響しているのだと、長年現場に立ってきた経験からそう確信しています。
あなたの周りにも、そういう人がいませんか。
人間の脳は、「やらなければならない」という強いプレッシャーを感じると、その行動自体を避けようとする回路が働きます。
これはストレスから身を守るための自然な反応で、意志の弱さとはまったく関係ありません。
だから、気合いを入れれば入れるほど、脳はその行動を「しんどいもの」として記憶してしまうのです。
これは私たちが怠け者だからではなく、そういう仕組みになっているということです。
だとすれば、やる気に頼るのをやめて、仕組みを味方につけるほうがずっと賢い選択ではないでしょうか。
一方で、「ちょっとだけ」という軽い入口から始めると、脳への負担が小さくなります。
5分だけ教材を開いてみる、今日は動画を1本だけ観てみる、ノートに一行だけ書いてみる。
そのくらいのハードルで十分です。
むしろ、物足りないくらいがちょうどいい。
やり終えたあとに「あ、もう少しできそう」と思えるくらいの量が、翌日の自分を動かす燃料になります。
そして、その小さな達成感こそが、次の行動を引き出す一番の原動力になるのです。
「できた」という感覚が積み重なると、人は自然と「もっとやってみたい」という方向に動いていきます。
私自身、今でも新しいことを学ぶときはこの感覚を大切にしています。
先日も、新しいツールの使い方を覚えようとして、最初は「とりあえず触ってみるか」という気持ちでパソコンを開きました。
するとどうでしょう、30分後にはすっかり夢中になっていて、気づけば2時間が経っていました。
無理に「集中しよう」と思っていたら、きっとあんなに深く入り込めなかったと思います。
継続するための本当の秘訣は、「意志の強さ」でも「完璧な計画」でもありません。
肩の力を抜いて、ゆるやかに始めること。
それだけです。
もちろん、最初は少し物足りない感覚があるかもしれません。
「こんなんでいいのかな」と不安になることもあるでしょう。
でも、その小さな積み重ねが、3ヶ月後、6ヶ月後に信じられないような景色を見せてくれます。
私がエンジニアとしての道を歩み、講師として多くの人と関わってきた中で、幾度もそれを実感してきました。
急がなくていいです。
完璧じゃなくていいです。
今日、何か学びたいことがあるなら、まずは「ちょっとだけ」から始めてみてください。
その一歩が、きっとあなたの世界を少しずつ変えていきます。
あなたの「ちょっとだけ」を、心から応援しています。