何度も転んできた。
小学生の頃からコンピュータに触れ、「これが自分の道だ」と信じて突き進んできた。
ところが社会に出てからというもの、思い描いていた未来とは全く違う現実がのしかかってきて、ある時期、気力も体力も底をついてしまったのです。
朝起きることすら難しい日々が続き、「自分には向いていなかったのかもしれない」と、何度も頭の中でつぶやいた。
画面の前に座るだけで胸が重くなる時期があったことを、正直に言えば今でも鮮明に覚えています。
輝いて見えるゴールを目指していたはずなのに、自分だけ取り残されているような、そんな感覚でした。
あなたはどうでしょう。
夢中になれるものを見つけたはずなのに、途中で「もう無理だ」と感じた経験は、ありませんか。
実は、私自身がまさにそのひとりでした。
IT業界でエンジニアとして働いていた頃、積み重なった負荷に押しつぶされてうつ状態に陥ってしまいました。
当時を振り返ると、とにかく焦っていたんだと思います。
周りのペースに自分を合わせようとするあまり、自分という人間の輪郭が、砂のようにさらさらと崩れていくような感覚だった。
「これ以上は無理だ」と悟った瞬間の静けさは、今でも忘れられません。
誰にも相談できずに、ひたすら自分の内側を掘り続けていた時間でした。
それが、どれほど消耗することだったか。
そこから立ち直るまでの道のりは、決して短くありませんでした。
でも、その時間があったからこそ気づいたことがあります。
それは、「自分のペースで進むこと」が遠回りに見えて、実は一番の近道だということ。
焦って10歩進んで5歩戻るより、ゆっくりでも1歩ずつ確かめながら歩いた方が、最終的には遠くまでたどり着けると、身をもって知りました。
この気づきは、今の仕事のど真ん中に生きています。
それに気づくまでに、ずいぶん時間がかかりましたが。
今は、受講者に向けてプログラミングの講義をする仕事をしています。
神奈川県相模原市で生まれ育ち、ITの世界に関わり続けてきた経験を活かして、IT技術の楽しさを伝える毎日です。
講義の現場では、「難しくてわからない」と顔を曇らせていた方が、何かの瞬間にぱっと目を輝かせる場面があります。
その表情を見るたびに、「あの瞬間のためにやっている」と心の底から思えます。
正直なところ、それ以上の報酬はないとすら感じています。
こういう仕事を天職と呼ぶのだと、今になって腑に落ちています。
かつて挫折を経験したからこそ、受講者のつまずきに寄り添える部分があると感じています。
「わからない」「うまくいかない」という感覚は、恥ずかしいものでも、才能のなさを示すものでもありません。
それはただ、「まだそこに慣れていないだけ」なのです。
とはいえ、頭ではわかっていても焦りは出てくるもの。
だからこそ、一緒に並走してくれる存在がいるかどうかが、大きな分岐点になると思っています。
壁にぶつかる経験は、後から必ず意味を持つのだと、受講者の皆さんに伝えたい気持ちがあります。
さて、もうひとつ大切にしていることがあります。
それは、強みを知ること。
Gallupが提供するストレングスファインダーという世界的な調査ツールを用いて、受講者ひとりひとりの資質を一緒に掘り下げる機会を設けることがあります。
「自分に何ができるのかわからない」という声をよく耳にしますが、実は多くの場合、その人の中にすでに宝が眠っている。
気づいていないだけで、ずっとそこにあったりするのです。
自分自身の強みを言語化できると、歩く速さが変わります。
失敗談をもうひとつ。
講義を始めた当初、「わかりやすく教えること」にばかり意識が向いて、受講者が本当に何を求めているのかを置き去りにしてしまったことがありました。
一生懸命に準備した内容なのに、反応は薄く、終わった後に「あれ、なんか違ったかな」とひとりで反省することが続きました。
そこから少しずつ、「教える」ではなく「一緒に考える」スタンスに変えていったところ、講義の空気が明らかに変わりました。
これも、転んで学んだことのひとつです。
うまくいかなかった経験が、今の講義スタイルの土台になっているというのは、なんとも皮肉で、でもありがたい話です。
コツコツという言葉は、地味に聞こえるかもしれません。
でも、ちりも積もれば山となるという言葉が嘘でないことを、今の自分の立ち位置が証明してくれていると感じています。
特別な才能があったわけではないのです。
ただ、諦めなかった。
それだけです。
講義を続けてきた時間の積み重ねが、いつの間にか自分の背骨になっていました。
あなたが今、何かに行き詰まっているとしたら、少し立ち止まってみてください。
焦って次の一手を打つより、今いる場所を確かめる時間も、必ず力になります。
自分のペースで進むことは、逃げることでも、怠けることでもありません。
それは、長く走り続けるための、大切な作戦なのです。
ふと、そんなことを改めて思う今日この頃です。
どうか焦らず、でも確かに、一歩一歩を刻んでいってほしいと思っています。