人に何かを教えるとき、あなたはどんな工夫をしていますか。
これ、意外と自分では気づきにくいことなんですが、「教え方」って実は周りから非常に高く評価されるスキルなんです。
職場で後輩に仕事を引き継ぐとき、家族に新しいスマホの使い方を説明するとき、友人にちょっとした料理のコツを伝えるとき。
こうした場面って、日常のあちこちに転がっていますよね。
誰でも必ず「教える側」に立つ瞬間が来る。
だからこそ、教え方を磨くことは、どんな仕事や立場の人にとっても、じわじわと効いてくる投資になります。
そして面白いことに、教え方が上手いというだけで、職場での信頼感もぐっと変わってきます。
「あの人に聞けば大丈夫」と思われる存在になれるかどうか、実はここにかかっているとも言えます。
そして正直に言うと、私も昔はひどいものでした。
プログラミング講師という仕事を始めた頃、あることに気づかされたんです。
受講者に一生懸命説明しているのに、首をかしげられる。
「もう一度お願いします」と言われる。
「わかりやすかったです」と言ってもらえる日が、なかなか来ない。
そのとき感じた焦りと悔しさは、今でも鮮明に覚えています。
原因を探ると、答えはシンプルでした。
「自分が分かっていることを、相手が分かっていない前提で話せていなかった」ということです。
知識が増えれば増えるほど、その落とし穴にはまりやすくなる。
これは経験を積んだ人ほど、うっかり見落としがちな盲点です。
教えるのが上手い人というのは、実は特別な才能の持ち主ではありません。
観察してみると、ある共通点が見えてきます。
それは「相手の頭の中を想像する癖」を持っているということ。
「この人は今、どこで詰まっているんだろう」「この言葉は伝わるだろうか」と、常に相手視点で考えを巡らせているんです。
一方、教えるのが苦手な人によく見られるのが、自分の知識量や説明の速さで無意識に進めてしまうパターン。
相模原市内で行っている講義の場で、実際に何十人もの受講者と向き合ってきた中でも、このギャップを何度も目の当たりにしてきました。
上手く教えられるかどうかは、結局のところ「どれだけ相手のことを考えられるか」という一点に尽きると感じています。
さて、では具体的に何が変われば「教えるのが上手い人」に近づけるのでしょうか。
まず大事なのが、「例え話」を一つ用意する習慣です。
抽象的な話が続いたとき、ふと身近な具体例に置き換えるだけで、相手の表情がぱっと明るくなる瞬間があります。
「プログラムの条件分岐って、信号機みたいなものですよ」と一言添えると、それまで眉間にしわを寄せていた受講者の顔がほぐれる。
これは講義の現場で何度も実感してきた手ごたえです。
次に意識してほしいのが、「確認の一言」を惜しまないこと。
説明し終わったあと、「ここまで大丈夫ですか?」と聞けるかどうか。
これだけで、相手が感じる安心感はまるで違います。
実は私自身も、この習慣を身につけるまでに、受講者から遠回しな「わかりにくいサイン」を何度も見逃してしまった経験があります。
気まずかった。
本当に。
振り返ると、早く先に進もうとする焦りが、確認の一言をすっ飛ばさせていたんだと思います。
そしてもう一つ、地味だけれど効果的なのが「言葉の選び直し」です。
専門用語が当たり前になってくると、自分でも気づかないうちに相手に伝わらない言葉を使い続けてしまいます。
IT系の講義では特にこれが顕著で、「インスタンス」「デプロイ」「スコープ」といった言葉をさらりと使ってしまいがちです。
とはいえ、難しい言葉をゼロにする必要はありません。
大切なのは「初めて聞く人にはどう聞こえるか」を想像しながら話す、その一手間だけ。
たった一つの言い換えが、相手との距離をぐっと縮めてくれることがあります。
言葉の難易度を相手に合わせて調整できる人は、どんな職場でも頼りにされる存在になっていきます。
これも意識次第で、今日からすぐに実践できることです。
教えることは、実はコミュニケーションの中でも非常に奥が深い行為です。
うまくいったときの喜びは格別で、「先生のおかげで理解できました」と受講者から言ってもらえた瞬間は、何度経験しても心が震えます。
それでも、まだまだ改善できる部分はある。
日々の講義を通じて、私自身もいつも学び直しています。
教えることで、教えられているとよく感じるのはそのためです。
うまく伝わらなかったときこそ、自分の理解が試されているんだと気づくようになってから、失敗が怖くなくなりました。
ストレングスコーチとして多くの人の強みと向き合う中でも、「伝える力」を持っている人は、確実に周囲への影響力が違うと感じています。
あなたの周りにも、「あの人の説明って不思議とわかりやすい」という人がいませんか。
きっとその人は、相手の視点に立つ小さな工夫を、さりげなく積み重ねているはずです。
教え方のうまさは、生まれつきの才能ではなく、意識と練習で確実に磨けるスキルです。
今日から一つだけ、「相手はどこでつまずいているか」を意識して話してみてください。
それだけで、あなたの教え方はきっと変わり始めます。
仕事の評価も、人間関係も、教え方一つでじんわり変わっていく。
そのことを、講師という仕事を続けながら毎日実感しています。