実務で使えないと意味がないよね、という声をここ数年でよく耳にするようになりました。
研修を選ぶとき、受講者が翌日から現場で活かせるかどうかが最も重要な判断基準になっているのです。
学んだ知識やスキルが職場に戻ってすぐ試せる、そんな研修でなければ時間もコストも無駄になってしまうでしょう。
私自身、IT企業で研修講師をする中で何度も壁にぶつかってきました。
たとえば、ある企業向けの講義で最新フレームワークの理論を丁寧に解説したところ、受講者から「理屈は分かったけど、明日の開発にどう使えばいいのか分からない」とフィードバックをもらったことがあります。
そのとき痛感したのは、知識を伝えるだけでは不十分だということでした。
では、現場で使える研修とは具体的に何を指すのでしょうか。
それは受講者が講義中に手を動かし、自分のプロジェクトに置き換えて考え、実際に動くものを作り上げる体験ができることです。
座学で理論を学ぶ時間ももちろん必要ですが、それ以上に「これなら自分の業務でも応用できる」と腹落ちする瞬間を設計することが欠かせません。
私たちが運営する講義では、受講者が実務を想定したケーススタディに取り組む時間を多めに確保しています。
たとえばプログラミング講義なら、架空のプロジェクトではなく受講者が実際に抱えている課題を題材にコードを書いてもらうのです。
すると、講義が終わる頃には「明日から試してみます」という前向きな言葉が自然と出てきます。
とはいえ、現場で使えるかどうかは受講者一人ひとりの状況によって異なります。
同じ内容を学んでも、ある人にとっては即戦力になる一方で、別の人には少し難しすぎることもあるでしょう。
だからこそ私たちは事前ヒアリングを丁寧に行い、受講者のスキルレベルや業務内容を把握した上で講義内容をカスタマイズしています。
ある製造業の企業から依頼を受けたときのことです。
その企業ではデータ分析ツールの導入を検討していましたが、社員の多くがITに苦手意識を持っていました。
そこで私たちは、専門用語を極力避け、彼らが普段扱っている製造データを題材にした演習を用意しました。
すると、講義後のアンケートで「自分たちの仕事に直結する内容だったので理解しやすかった」という声が多数寄せられたのです。
実務で使えると実感してもらうためには、講師自身が現場を知っていることも重要です。
私はエンジニアとして働いていた経験があり、その中で何度も挫折を味わいました。
コードが動かず徹夜したこと、納期に追われてメンタルを崩したこと、そういった経験があるからこそ受講者の悩みに寄り添えるのだと思います。
また、講義では一方的に教えるのではなく、受講者との対話を大切にしています。
「ここまでで分からないことはありますか」と問いかけるのはもちろん、「皆さんの職場だったらどう活用できそうですか」と逆に質問を投げかけることもあります。
そうすることで、受講者自身が自分の業務と結びつけて考える習慣が生まれるのです。
さらに、講義後のフォローアップも欠かせません。
学んだ内容を現場で試してみたけれど上手くいかなかった、というケースは少なくありません。
そんなとき、質問できる環境があるかどうかで定着率は大きく変わります。
私たちはオンラインコミュニティを用意し、受講者がいつでも疑問を投げかけられる仕組みを整えています。
受講者が「これは使える」と感じる瞬間は、講義の中で何度も訪れます。
たとえば、エクセルのマクロを組んで業務時間が半分になったとき、データベースを構築して情報共有がスムーズになったとき、そういった小さな成功体験の積み重ねが自信につながるのです。
もちろん、すべての受講者が即座に成果を出せるわけではありません。
それでも、講義を通じて「自分にもできるかもしれない」という可能性を感じてもらえたら、それは大きな一歩だと考えています。
実際、講義後に数ヶ月経ってから「あのとき学んだことが今になって役立っています」と連絡をくれる方もいるのです。
結局のところ、現場で使える研修とは知識を詰め込むことではなく、受講者が自分の仕事に置き換えて考え、試行錯誤しながら実践できる環境を提供することです。
私たちは今後も、受講者一人ひとりが「明日から使えるスキル」を手に入れられるよう、講義の質を高め続けていきます。
あなたが過去に受けた研修で、現場で役立ったものはありますか。
もしあれば、それはどんな内容だったでしょうか。
そして、もしなかったとしたら、どんな研修なら受けてみたいと思いますか。