最近はあまり作ってないんですが、ここ数年で発表した短歌がいくつかあるので、散逸しないようにまとめておきます。
2024年
『ねむらない樹 vol.11 』
春休み
珍しく午前に起きて噛み切ったベーグルが恐竜に似るまで
腰や腰以外の部所をかばいつつ駅前で聴く吹奏楽部
いつまでも覚えられない祝日がいつの間にかなくなっていた
それ以外名前を知らないかのように桜の木だと何度でも言う
お通しの茄子が美味しい居酒屋は浄土みたいな提灯だらけ
クーポンはあしたの24時まででコブサラダのコブって何だっけ
春休みみたいな名前の由来をお湯がわいたら訊ねてみよう
『短歌研究 2024年 5+6月号』
伸びていく
誰も見ていないときにはゆっくりと落ちる椿の花 繰り返す
駅前で俯いている男性が摂取していた液体と串
蛇のように水のホースが跳ねまわる夏にあなたがぐんぐん伸びる
人間が食べやすいよう長くした小麦を麺という──着丼
腰を下ろして中身を出してなんだっけ、ああそうだ、流すんだ全てを
『胎動短歌 Collective vol.5』
なめらかさ
曲がり角の向こうに蝉がいてそれが死んでいたという記憶がある
あのひともあのひとも疎遠になって 夜中に耳をなでまわす癖
向こう側にたどりついたらどうでもいい写真を撮って送るよ、道とか
少しだけ涼しい それに それだから わかってないって言われるんだろう
有料の展望台から見えるものすべてを点と線に変えても
ワックスをつける ワックスをとる 細かい砂にまみれていたい
一度溶けて凍った氷特有のなめらかさを覚えたまま生きる
どの歌も嫌いでどの歌も良くてバッグに入るだけ詰め込んだ
2025年
『短歌研究 2025年 5+6月号』
UNKNOWN
人生はスゴロクみたいなものだって思っていたらこうなりました
すり減っていくだけだからとりあえず注文をしなくては だめだ
戻るならどの瞬間に冬にまだ普通に生活できてた頃に
コンビニができてつぶれてそのあともいろいろあってもうわからない
犬などが近寄ってこない こんな日は月が欠けてるんだろう 眠い
大昔の子どもが空き地に集まって遊んだのは嘘かもしれないね
コンビニができてつぶれて もうわからない