私は反自民党・反高市早苗・反(故)安倍晋三ですが、独自のストック&フロー・一貫マクロ計量モデルを用いて、いわゆる「アベノミクス」がなかった場合の過去の反実仮想シミュレーションを実施してみました。アベノミクスは放漫財政と称されますが、財政支出は全く伸びませんでした。
それでも、アベノミクスが無かった場合(いっそう無理な金融引締と財政緊縮を行った場合)の実質GDP損失は12年間で140兆円弱でした。また、消費税が4年早く10%に増税されていればそれだけで40兆円規模のGDP損失が生じたと考えられます。反安倍政治勢力には「少なくとも」これを超える経済回復策を、供給制約・インフレ懸念の中であっても、説得力のある形で打ち出すことを期待します。
■要約
安倍晋三氏は2012 年9 月に自民党総裁となり同年12 月末に首相に就任した。安倍政権が実施した、いわゆる「アベノミクス」は「大胆な金融政策」、「起動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」の「三本の矢」からなる政策である。このような政策は安倍氏らによって総裁選以前から予告されていたため、氏が総裁になった直後から、本格的に政策を実施する前に、為替レートや株価は動き始めていた。
本項では「アベノミクス」が行われ無かった場合の反実仮想シミュレーションを、独自のストック&フロー・一貫マクロ計量モデルを用いて実施した。「大胆な金融政策」がなかった場合の影響については、1.8%の金利高、20%ポイントの名目実効為替レートの円高、2012~14 年度の株式再評価ゼロと想定して計算した。「起動的な財政政策」がなかった場合については、2012年度補正予算ゼロ、2013 年度以降の政府消費および政府投資の5 兆円削減として計算した。「民間投資を喚起する成長戦略」が無かった場合については、2013 年度以降の民間投資を毎年度5 兆円引き下げた。ここまで各シナリオについて、外生変数を一つだけ動かして結果を確認した上で、最後に全ての外生変数を一斉に動かしたシミュレーションを行った。また、消費税増税が実際の2019 年10 月ではなく、前政権時に予定された2015 年10 月に実施された場合のシミュレーションも行った。
金融緩和がなかった場合、金利の高止まりと円高、株式再評価の欠落によって、実質GDP は落ち込むこととなる。これは、純公債残高GDP 比を押し上げる結果となる。財政政策がより緊縮的で、政府消費や政府投資が抑制された場合にも、実質GDP は落ち込む。純公債残高GDP 比の改善は、あったとしてもごくわずかである。成長戦略がなされず民間設備投資が減少した場合にも、実質GDP は落ち込む。この場合には純公債残高対GDP 比の悪化が見られる。
消費税が予定通りに増税されていた場合の影響は、意外と大きい。たった4 年間だけ、消費税率が2%高まるだけの変化であるが、政府消費ないしは政府投資が毎年度5 兆円引き下げられる場合よりも、実質GDP の落ち込みは大きかった。結果的にシミュレーション期間の大部分で、純公債残高対GDP 比はむしろ悪化した。
「アベノミクスの全効果」がなかった場合のシナリオでは、シミュレーション期間(2012 年度から2023 年度までの12 年間)で、実質GDP の累計損失は138.5 兆円に達する。これに、予定通りの消費税増税の悪影響42.4 兆円を加えると、180 兆円を超える累計損失となっていたであろう。純公債残高対GDP 比はむしろ悪化し、ベースラインよりも51.1%ポイントも高くなる。
筆者は政府債務対GDP 比を重要な財政指標とは考えていない。むしろ物価上昇率が物価安定目標に沿っているかが重要と判断している。しかし、多くのエコノミストのように政府債務対GDP 比の引き下げが財政健全性の重要な指標と考えた場合であっても、デフレや超円高からの脱却のための財政・金融政策が適切になされなければ、むしろ政府債務対GDP 比は悪化するということを、本項のシミュレーション結果は示している。