本稿では、実際の日本の経済データをもちいた実証的なストック&フロー・一貫モデル(SFC)の制作を試み、データセットの作成から、モデルの構築、そして政策シミュレーションの試運転に至るまで、その経過と到達点を記録した。デンマークのデータを用いたByrialsen et al. (2020)のSFCモデルを参考に、同様の構造のモデルの日本版を試作したところ、「国民経済計算(GDP統計)」から得られる計数でデータセットのほとんどが作成でき、PC用の取扱容易なソフトウェア(EViews)でモデルが構築できた。今回のものは、金融資産種別を6種類に増やし、金融部門を日本銀行とその他金融機関の2部門に分割し、財政・金融政策によるマネーの増減を見ることができるようになった。
政府消費や政府投資の増加、あるいはベーシックインカムの給付を、増税ではなく国債発行で行う場合には、筆者はこれまで「政府の負債は民間の債権」、「政府が赤字を増やすと世の中のおカネが増加する」などと説明してきた。その説明は依然として概して妥当であるが、厳密にはマネーの変化はそれとは若干違ってくる。
政府の金融純負債が増加する一方で、政府以外の部門(非金融法人、日銀、その他の金融機関、家計、海外)の金融純資産が増加することは間違いがない。しかし、それが財貨用役の代金の支払いと、利子配当の受け払いの変化によって、金融純資産が通貨保有主体(非金融法人と家計)のものになるか、それ以外(日銀、その他の金融機関、海外)の手に渡るかが変わってくる。また、通貨保有主体が金融純資産の増分を、現金・預金で保有するか、それ以外の金融資産で保有するかどうかによっても、マネーストックの金額は変わってくる。
これらについて、実際に定量的な数値をもって、洞察することを可能としてくれるのが、このストック&フロー・一貫マクロ計量モデルである。
ここでは、データセットの作成からモデルの構築までを説明したうえで、消費税増税(1%ポイント)、政府消費増加(10兆円)、政府投資増加(10兆円)、実質金利の引き上げ(1%ポイント)、円安(名目実行為替レート10%下落)、ベーシックインカム(1人月額1万円、総額15兆円)のシミュレーション結果を解説したレポート(変数表、方程式体系を含めて89ページ)を閲覧可能とした。
PDFファイルのダウンロードはこちら↓