日本型ポピュリスト・モーメント? ポピュリスト諸政党と2024年および2025年の選挙
翻訳:朴勝俊(関西学院大学)
2025/8/18
■ はじめに(抄)
「日本人ファースト」というスローガンは、長きにわたっていかなる政治スローガンをもってしても成しとげられなかったほどに、2025年の日本の政治の夏を強く特徴づけた。極右政党「参政党」(公式英語名称「Do-it-yourself Party」)は、ドナルド・トランプを彷彿とさせるこのスローガンで、2025年7月20日の参議院選挙前の数週間で急上昇した。今年5月まで支持率は1~2%にとどまっていた同党は、5月中旬以降、世論調査の支持率が急上昇し、最大最高のレベルにまで達した。実際、参議院選挙の比例代表では、自由民主党(LDP)と国民民主党(DPFP)に次ぐ第3位の得票数を獲得した。最大野党である立憲民主党(CDPJ)とその党首である野田佳彦にとっては、これは大きな失望だった。それ以来、劇的な右傾化を懸念する人々と、その声を「過剰反応だ」と一蹴する人々との間で激しい議論が繰り広げられている。朝日新聞の電話世論調査によると、日本国民の過半数は参政党の台頭を肯定的に評価しており、48% が「日本人ファースト」というスローガンに問題はないと考えている。つい最近まで日本は「ポピュリズムの誘惑」にほとんど影響を受けていないとされていた(Lind 2018; Buruma 2018)。しかし近年の選挙結果は「ポピュリズム・モーメント(populistischen Moment)」の到来を暗示している(Mouffe 2018)。〔※ 「モーメント」は当面は「台頭」「激動」などと解釈してほしい〕
日本の現在の政治的モーメントにおける、ポピュリスト的論理の影響力を分析するために、本稿は、日本の政治におけるより深いところの変化を明らかにし、批判的ポピュリズム研究(De Cleen, Glynos & Mondon 2018)の考え方に基づいて、参政党の成功を説明することを目的としている。そのさい、成功したポピュリズムは多くの場合、既存政治の不安定化の兆候であるとされるが、そこから必ずしも特定の形のポピュリズムの表現が生まれるとは限らないことが強調される(Mouffe 2008; 2018)。したがって、より広範な政治活動の動向や、さまざまなポピュリズムの表現形態のあいだの関係、それに既存政党の行動を、より詳細に分析することが重要である。本稿の分析は、調査対象となった政党の一次資料と、2025年2月に関西地方で実施された左派ポピュリスト政党「れいわ新選組」に関するフィールド調査に基づいている。上記の2政党に加え、新自由主義的ポピュリスト政党「日本維新の会(JRP)」や、中道政党「国民民主党(DPFP)」、右派政党「日本維新の会」も対象としている。
この章は、次のように構成されている。まず、ポピュリズムの定義と、その背後にある批判的ポピュリズム研究の分析的アプローチを説明する。続いて、分析の参照枠として、安倍時代後の政治的モーメントを説明し、その後、個々のポピュリズム政党の紹介と分析を行う。分析の結果、参政党の成功は、好ましい状況的要因や、日本のメディアにおける特定の「ポピュリズムの誇大宣伝(Populism-Hype)」、そして保守的な勢力における極右政治の正常化戦略が相まって生じたものと解釈できる。
[1] https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/shugiin50/index.html