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祈祷師  周縁的な存在としての


祈祷師、あるいは民間陰陽師というのは、いっぱんの宗教職能者にくらべ、ある種どくとくな立ち位置にある/あったと思われます。

いま仮に、私たちのふつうの生活、社会共同体のなかで、言葉であらわすことができ、誰でも共有しやすい宗教的言説を、さしあたって倫理(cf.『仏陀の第一レメディ  戒』)に含めるとすると、その言説の役割というのは、人間どうしや社会の秩序、コスモス、いってみれば世界をあかるい光で照らしつづけること、そして、この世界をささえ、保ちつつけることにあります。

ちなみに「ダルマ(法)」という語は、仏陀の教えを意味することがありますが、現代インド語では宗教(religion)の意味で使うことがおおいです。いずれも「ささえる、たもつ」という動詞から派生しています。

さて、そのような個人から社会までひろくひっくるめて秩序、土台をささえ、たもとうとする宗教的言説やいとなみの周縁でうごいている人々がいます。いま、そこに住むひとたちを「祈祷師」と呼ぶことにしましょう。

祈祷師の立ち位置というのは、あかるい日の光のかげる夕暮れから夜の世界、日常のことばの外側、夢、無意識との境界にあります。ひるまの世界とよるの異界との境界に立つ彼/彼女らは、中心とか秩序をゆらしつづけているようにみえるので、はなはだあやしい存在として映ることでしょう。

むかし私がヴァーラーナシーに滞在中、師事していたタントラのグルジー(導師)、ボーラーナート・ミシュラ・マハーラージ・ジー(Bolanāth Miśra Mahārāj jī)も、そのような立ち位置のそんざいでした(以下グルジー)。

グルジーとその息子五人のうち、ひとりを除いてみな「ターントリカ」と呼ばれる祈祷師で、お寺で活動をしていました。お寺とはいえ、けんらん豪華な建てものではなく、何柱かの神様を祀った質素な祭壇とグルジーが座る座椅子があるくらいでした。グルジーカーストのへだてというのがまったくなく、毎日多くの人々が相談に来ていて、信仰と信頼の厚さをうかがわせました。

しかし、そういうグルジーを危険人物とみなしておそれる現地の人ともかなり会いました。

私は、とある近所の人から、グルジーが毒を作って誰かに飲ませようとしているからお前も気を付けろ、なんて忠告を受けたことがあります。じつは、お寺の窓から奥の部屋の棚がみえるのですが、そこにアーユルヴェーダインド伝承医学)の薬瓶がびっしりとならんでいるのです。それを通りかかった人が覗いて、ターントリカ➡正規の司祭とは異なるあやしい呪術師➡毒、という連想から、そのように誤解し吹聴していたというのがオチなのでした。

世界中で長年、曲解に曲解をされ続けている語、「タントラ」は、神や女神と人[の体]が直接交流しうる回路をつくり、ついには神々の世界へと到達をめざす世界であり、どうじに人間側のきわどい願望を現実化しようとする信仰でもあります。このきわどい願望を扱うことが、清浄さをたっとぶヒンドゥー教徒からは距離をおかれているようにもみえました。あの人たちは危険にちがいない、と。

その他、「アーヴェーシャナ(我が国の「阿毘捨法」にちかいもの)」という降神法を密室でおこなうとか、通常のお祭りに使わない供物をつかうとか、ヴェーダとは異なる祭儀をするとかは、ピュアを自称する信仰からはなかなか受け入れがたいでしょうし、誤解や排除のイメージがつくられ易いのは容易に想像ができます。

さて、まいにちグルジーは普通の生活者の、よくある相談(結婚したいとか病気とか)をうけてまじめに応えておられてました。しかし、ときには人間の非日常的な願望を扱うこともあり、そうなると相談者もちょっと変わってくるんですね。その都市いちばんの会社の社長とか政府の要人とか。


ターントリカは、人間の生命や身体がしぜんに分泌してしまう、非正規なもの、不浄なもの、不純なもの、あるいは周縁的なものと接触している存在とも呼べます。

そのようなインドのターントリカだけでなく、総じて祈祷師というのはよく批判や揶揄のまとになります。我が国の時代劇にでてくる山伏はだいたい悪役ですしね。彼/彼女らは、正規の宗教者にもみえないし、きっと人を誑かすあやしい存在だろう、と。しかし、祈祷師とはそもそもが周縁的な存在なのであって、逆説的にそこにこそほんらいの意義が存在する、と私は思います。

ただし、その意義も、ダルマと両輪でうごかないと、祈祷師はどの社会にも居場所はないでしょうね。

本日もお読みいただきありがとうございました。




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